これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

テレビ映画『怪獣マリンコング』

 

和夫、正しい科学の力を見せてやるぞ!

はい。手に入らない歯痒さと少しでも接触したい衝動からコミカライズやシナリオを玩読して気を紛らわせていた念願の『怪獣マリンコング』を鑑賞。『ウルトラQ』放映以前に、怪獣を主役とする初の連続テレビ映画として名高い本作。昨年に放映開始60周年を迎えたのですねえ。マリンコングの本質は「怪獣の姿を模したロボット」だが、物語上ロボットである事は後に発覚する秘密であって怪獣として認知させる前提があるからこそ独自の魅力を秘めた存在。そんなアニバーサリーイヤーにハヤブサさんが資料提供して下さりました。(大変有難う御座居ます…!) 1984年にTG社から限定販売されたVHS、収録話は第一話「謎の怪獣」、第二話「危し!和夫少年」、第十三話「世紀の爆弾」。第一部の冒頭部分と最終回です。第一話だけだと物足りないマリンコングの活躍を第二話まで収録して補填する構成に好感。第十三話のサブタイは合成テロップに准じたが、正式には「世紀の爆発」ですよね。第十三話のシナリオが収録された「すばらしき特撮映像の世界」(朝日ソノラマ)の誌面に「世紀の爆発」と紹介されているし、脚本の内容から考慮しても「爆弾」より「爆発」が適当でしょう。オークション等で出品されているシリアルナンバーを見受けるに200本ぐらい生産されたのだと思っていたら、300超えのナンバーが存在する事を知る。一体どれだけ生産され、どれだけの人が所持しているやら。以下、各話の粗筋と感想。

 

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第一話「謎の怪獣」、太平洋航行中の客船・梅田丸が原因不明の沈没事故に遭遇。生存者の少年の証言から「謎の生物の襲撃による遭難」だと仮定された。真相を解明すべく事件現場付近での調査中、偵察機海上に蠢く謎の怪物を発見。調査委員では怪物を「マリンコング」と命名し、日本上陸が懸念された。何十年も前から生存していたのか、ある種の動物の突然変異なのか、突如太平洋から出現した大怪獣に対して様々な憶測が飛び交う。暫く沈黙が続いたが、マリンコングが再び平塚海岸に出現し釣り人を襲撃する。第二話「危し!和夫少年」、平塚海岸に出現したマリンコングは民家を木端微塵に破壊。急報を受けた中央新聞社の岩田記者はカメラマンの丸さんと共に現場へ急行したが、既にマリンコングの姿は無かった。行方不明となったマリンコングの捜査続行中、和夫達の少年グループが海辺でマリンコングと思われる巨大な足跡を発見。すると、付近の松林の中からマリンコングが出現し、和夫少年に迫った。逃げる和夫少年。そこへ通り掛かった志那服の女率いる一味が和夫少年を救出。一同洞窟へ逃げ込むも容赦なくマリンコングが迫り来る。マリンコング出現の急報を受けた岩田記者と丸さんは再び平塚へ急行するのだが…。第十三話「世紀の爆発」、Z団の本拠地に乗り込んだ和夫少年は偶然マリンコングの機密を目撃し、マリンコングが人造の怪獣である事を確信する。和夫少年によって救出された矢田博士はマリンコングを破壊する秘密電波「X電波」を完成すべくZ団の基地を脱出、電波研究所へと急いだ。一方、Z団は東京の街へマリンコングを召喚した。破壊の限りを尽くすマリンコングの魔の手が電波研究所に迫った瞬間、矢田博士のX電波の送信機が完成。X電波を受けたマリンコングは破壊活動を止め、爆発四散した。成功に歓喜する和夫少年達。しかし、研究所へ侵入したマイトKのダイナマイトによって電波研究所が爆破。和夫少年達は一体…。

先ず、怪獣とロボットが融合したロマンの塊が神秘性に満ちた海から出現すると云う「未知への恐怖と興奮」を見事に体現したマリンコングの圧倒的な存在感と迫力に痺れる。ロボットなのにメカニックでは無い質感が斬新。「まんが王」では笹川ひろし先生、「少年画報」では桜井はじめ先生がコミカライズしたマリンコングは活発で生物的な表情を露出している一方、テレビドラマのマリンコングは非情な目を光らせながら単調且つ無機質な動作で破壊活動を遂行。体に血が流れぬ人造動物だと云う特性を主張した演出が印象に残った。やはり、リンコングは怖い。決して狂暴な顔をした造形ではないのに怖いのは、彼を象徴する丸い目玉が謎に満ちた深海魚を連想させるからなのかも知れない。造形に加えて恐怖心を煽る演出が絶大な効果を発揮している影響もあるだろう。光量の少ない空間で唸り声を轟かせながらマリンコングが急接近してくる不穏なオープニング映像も強烈だが、漆黒の闇に包まれた夜の海から出現するファーストコンタクトが恐怖心を刺激する要因の1つ。リアリティを増幅させた実寸大の手足、マリンコングの全貌が不明瞭な上にシルエットだけが静かに這い寄る恐怖を描いた第一話の最後も印象深い。Z団がマリンコングを遠隔操作する際に発信される特殊電波によって電子機器が乱れる前兆の緊張感も恐怖に繋がる。得体の知れない悪臭や地鳴りの様な鳴き声も悍ましい。ところで、マリンコングの造形が二体存在するのは「宇宙船」(1984年6月号)に掲載された『マリンコングの大逆襲』の写真で認識していたが、第二部製作以前に複数の造形が本編に登場していたのは知らなかった。そして第一部の最終回で爆破されたマリンコングのミニチュアがこれまた怖い。(故意か否や奇妙な首の角度にゾッとした。) ちなみに本作はマリンコングと電波研究所の連続爆発で高揚感を維持したまま終幕する一方、笹川ひろし先生のコミカライズでは電波研究所に接近したマリンコングの爆破に巻き込まれる形で矢田博士が死亡。新章へと展開し、若干ニュアンスが異なる。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20210108010656j:plain↑ 第二話より。(左) 第十三話より、煙を吐き出すマリンコング。違う造形に見えるのだが…うーん。(右)

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20210108010711j:plain↑ 私的トラウマ場面。第一話より、御出座しマリンコング。(左) 第十三話より、爆破1秒前のミニチュア。(右)

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20210108012020j:plain↑ 『怪獣マリンコング』コミカライズ版、連載の初回扉絵。「少年画報」(1960年6月号)掲載、桜井はじめ先生。(右) 「まんが王」(1960年6月号)掲載、笹川ひろし先生。(左)

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20210108013024j:plain↑ 「少年画報」(1960年6月号)掲載。日本中を恐怖のどん底につきおとしたこの怪獣の正体は、生き物か?人造物か!?