これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画『119番の男』一峰大二

 

やっと… やっと… くるしみからにげだせたぞ

 

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週刊少年マガジン」1962年1月7日号誌上に掲載された一峰大二先生の読み切り漫画『119番の男』に関して。火事と云う身近に存在する恐怖を題材に「美しい感動まんが」と銘打たれているが、罪の意識に苦しむ青年の衝動と解放を描いた一作。主人公は元消防夫長の水田。消防夫長時代、任務中に火への恐怖心から持ち場を離れて部下を見殺しにした罪悪感に支配されている。横を通り過ぎたサイレン音に悶え苦しみながら消防車が行く先の火事場へ向かった水田は、炎が燃え上がる家の中に取り残された娘・さち子の救出を消防夫に懇願する母を認めた。「おれにいかせてくれ」水田は率先して前に出たが、消防夫は断固拒否。その消防夫こそ水田が見殺しにした部下の子息であった。水田を撥ね除けて火事場に急行した消防夫は家中の捜索を行うも、さち子の姿が見当たらなかった為に避難済みと判断。だが、さち子は家に取り残されていた。押し入れでままごと遊びの最中に居眠りをしてしまい、火事に気付いて起き上がったのは消防夫が立ち去った後だった。轟々と唸る猛火の中で救出を求め必死に母を呼ぶさち子の声が聞こえた兄の光二は、さち子がままごと遊びで押し入れを使用する習性を思い出して一目散に炎の中へ飛び込んだ。燃え盛る炎は次第に勢いを増している。兄妹の命が危ない。「おれにいかせてくれっ」止める消防夫を後に水田が光二とさち子を無事に救出。しかし水田は火事場に残ったまま、遂に炎の海に呑まれてしまった。水田は「火事場に残された兄妹を救出した英雄」と美談に仕立てられ、編集部の柱コメントには「前に罪を犯しているとはいえ、水田さんは偉いですね。わたしたちも、他人がこまっているときには助けてあげよう。」と尤もらしい言葉で飾られているが、僕は火事場への突撃を止めに入る消防夫を執拗に殴り付けたり、燃え盛る炎の中で突然歌い出したり、水田が感情的に働いた奇行の数々に恐怖を覚えた。水田が火事場から子供達を救出した善行は事実。だが彼の行いは人命救助を己の罪業から逃避する為の手段として利用した印象。殉職ではなく自裁死。水田が死に際に笑顔で残した言葉こそ真理。編集部の柱コメントから察するに人助けの重要性を唱えた作品だったのかも知れない。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20201111211716j:image↑ 猛火の中でパニックになる兄妹を前に突然「故郷」を歌い出す水田。(この後さち子も歌い出す。)