これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

【1/24 追記有】『ぽんぽこ物語』に関して

 

国産初のテレビ映画『ぽんぽこ物語』(1957年/KRテレビ※現TBSテレビ)を鑑賞したので感想等。川内康範先生の脚本に惹かれて厳選集のDVDを入手したが、想像を絶する傑作で泣いた。主演の栗原君がタイプ過ぎた。テレビの本放送がNHKより1953年に開始してから、スタジオからの生中継が主流だったドラマ放送。映画の手法で全編フィルム撮影と編集によって製作された国産テレビドラマの放送は、本作が第一号。現在放送されているテレビドラマの形態を生み出した原点であり、国産初の特撮ヒーロー番組『月光仮面』の製作に繋がる重要な作品である。放送からフィルムの所在不明により長年「幻の作品」とされていたが、2018年秋にTBSの関連会社であるTBSビジョン(現TBSスパークル)が自社のライブラリー倉庫整理の際、本編全73話の原盤フィルムを発掘。発掘されたのは、本編フィルム67巻、OPタイトル1巻(第1話)、音ネガ1巻の全69巻。劣化した映像と音声フィルムの修復・デジタルリマスタリングを経て、厳選12話を収録したDVD「TBS Vintage Japan ぽんぽこ物語 ベストセレクション」が今年の2月に発売されたのだ。収録回は、1、6、15、16、17、18、19、20、24、39、50、66話の全12回。(1話10分) 厳選集と云う形で構成されたのは、劣化が激しく修復を断念した本編フィルム11巻の存在が要因の1つだろう。むしろ60年以上眠っていた腐敗が進行しているフィルムの修復作業が如何に困難か、本ソフトのブックレットの中で克明に描かれているので12話"も"綺麗な映像でいつでも鑑賞可能な環境下に居る我々は幸福だと思う。付属のサントラCDは、小鳩くるみ氏こと鷲津名都江氏所蔵の6mmテープよりデジタルマスタリングを行った貴重な音源が全9曲収録されている。収録された本編以外の挿入歌を聞けて世界観が広がって嬉しいのもあるし何より録音現場の声と雰囲気に触れられて嬉しい。主題歌を栗原君が歌ってないとよく理解出来る程にクリアな音。本作がミュージカル作品だった証拠でもある。さて、作品の内容に関して。時は幕末。利口で心の優しいぽん吉、ぽん子の仲良し小狸兄妹は、ぽんぽこ山の神々に認められて人間に生まれ変わるのを許された。離れ離れになる運命を憂い、鶴のおばさんに同じ場所で生まれ変わる様に懇願したが、ぽん吉は魚屋「魚徳」の夫婦に拾われ、ぽん子は北国の白妙城のお姫様「初夢姫」として異なる境遇の中で人間に生まれ変わる。兄のぽん吉に会いたいぽん子は、初夢姫の姿を封印し「町娘ぽん子ちゃん」に扮して八回と精助2人の従者を連れて江戸へ旅立つ。一方、ぽん吉は幕臣の娘を助けた事が縁で幕臣の養子となり、佐幕の密書を託されて白妙城へと旅に出る。しかし、旅中では姫と密書を狙う悪党が行く手を阻む。ぽん吉ぽん子は狸の超能力を駆使しながら悪党に立ち向かっていく……と云うのが、物語の粗筋。時代劇だが、娯楽性を追求したミュージカル仕立ての愉快な喜劇です。時代劇よりもファンタジーの印象が強い。狸が人間に変身すると云うファンタジー。狸だから人間に化ければ良いのに、わざわざ生まれ変わって赤ん坊からスタートする展開がユニーク。ぽん吉の必殺技シーンのエフェクト(第6話)とか、妖狐との化け比べで登場した児雷也の妖術(第50話)等、着ぐるみやピアノ線やスモークも活用されているので特撮に部類される作品だと思うのだが。以下、各話の所感です。

 

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第1話「ぽん子ぽん吉誕生の巻」、ぽん吉演じる栗原眞一君とぽん子演じる小鳩くるみちゃんの小狸兄妹が元気溌剌と主題歌の歌唱シーンから物語が始まる。ぽんぽこ山に住むフクロウの合図で2匹の小狸が人間の赤ちゃんに生まれ変わり、何故か仙台弁?で喋る独特キャラ大爆発の鶴のおばさんに連れられて人間界へと旅立つプロセスが描かれている。小狸も鶴のおばさんも擬人化で表現。(小狸2匹に尻尾が付いてて軽率に萌える。)フクロウや猿等のぽんぽこ山の仲間達は、影絵紙芝居によって人間界とは異なる異世界感が漂う。鶴のおばさんに「一緒の家に生まれ変わりたい」と御願いするぽん吉ぽん子に対して「そんな事したらこれからの御話に都合悪くなるからダメ!」と云うメタ発言が印象深い。第6話「これは不思議の巻」、魚徳の小僧・ぽん吉の好評に嫉妬した同業者の一味がぽん吉を取り囲み虐め始めた。知らせを聞きつけた魚徳夫婦はぽん吉を助けに現場へ向かうが、頭数に圧倒されて窮地に陥る。ぽん吉は狸の本性、即ち超能力を駆使して魚徳夫婦を救う話。魚徳夫婦と同業者の対立と云うシビアな場面をマンボのリズムに合わせてコメディ的に描出している。見所は言わずもがなぽん吉のぽんぽこ術であるが、ぽん吉は超能力を使う事に対して苦悩していた。人間に生まれ変わる時、己の利益の為に狸の本性を現してはならないと云うのが掟であったからだ。狸の本性を現す事は、自らの化け術=超能力を使う事を意味していた。大人数で大人に囲まれて踏み躙られているぽん吉は、無抵抗なまま「鶴のおばさん。おいら、これでもまだ化けちゃあいけないんですか?教えて下さい。」と問う。しかし鶴のおばさんは答えないのだ。ぽん吉は成長していく過程で忍耐の試練を与えられたのだろうか。結局ぽん吉は耐え忍び、魚徳夫婦がピンチに陥った際、遂に迷いなく超能力を発揮している。特筆すべきは、必殺技(超能力)に使用されたエフェクトの合成。ファンタジックなSEの効果も相俟って圧巻のシーンである。最後、術が解けた魚徳夫婦とぽん吉のやり取りは絵物語『太陽仮面』の最終回で麻生が残した「よきことを行うはよし。それを告げざるはさらによし」と云う教訓を彷彿とさせた。第15話「これは奇ッ怪の巻」、初夢姫としてぽん子が登場するがぽん吉が恋しい余りに寝込んでしまう。事態を知らぬ大殿と奥方は心配して医者を呼ぶが原因が分からず、嘗て初夢姫の誕生を予言したと云う白妙山の行者・おんぼろ大師に祈祷を依頼。おんぼろ大師は「姫には前世の約束に連なる兄がいる。江戸に行かせれば病気は治る。」と言葉を残した。本作は初夢姫が病気で寝込むと云う沈痛な空気が充満した中で幕開けとなるが、徹底的に笑いを誘う路線を追求している。往診に訪れた医師はまともに診察せず口を開けばぼやいてばかり。その名も「杉村ぼやき斉」。(笑) 寝込む姫を囲んでコントが炸裂。一方、如何にもインチキ臭い風貌のおんぼろ大師は強烈なキャラクター性と支離滅裂な言動で周囲を振り回すが、意外性を含む熟達した祈祷の腕前で落ち着く構成が見事。第16話「美わしき姫の巻」、おんぼろ大師の祈祷で判明した兄・ぽん吉の存在を認めた大殿は初夢姫の江戸行きを承諾。八回と精助のお供が居るとは云え、不安な余りに家老の六馬心左ヱ門は寝込んでしまう。初夢姫は心左ヱ門を優しい歌声で慰めるのであった。本作で初夢姫が歌う「♪お山のどんぐりちゃん」は、哀愁漂う切ないメロディーに乗せて小狸兄妹の運命を唱えた一曲。身分を問わずに誰にでも優しさを与える純朴で温厚な初夢姫の美しい心が心左ヱ門の看病を通して丁寧に描かれている。第17話「ぽん吉お手柄の巻」、幕巨松木右京之助の娘・みゆきとの出会いでぽん吉の運命が変わる瞬間を描いた一作。浪人達に囲まれて狼藉をされたみゆきの元へ助けに駆け付けたぽん吉は、得意の剣術で果敢に立ち向かう。一点の曇りも無い真っ直ぐな瞳が凛々しく、完璧な殺陣を熟しているぽん吉だが超能力で木の上にテレポーテーションして浪人をあかんべえで挑発する幼稚で愛らしい一面も。終盤に偶然通り掛かってぽん吉のピンチを救った(?)弱井剣之助はぽん吉が剣術を習った弓矢道場の兄弟子。コメディ色の強い立ち振舞いで"弱井"と云う名の通りに剣術の腕は未熟なのかも知れない。第18話「これは強いの巻」、複数の浪人に立ち向かって見ず知らずの娘を救出した勇気あるぽん吉の凄腕と謙虚な姿勢に惚れ込んだみゆきは女中のなぎさを通して出生を調べた。すると、ぽん吉は魚屋の小僧であるが本当は侍の子供だと云うのだ。ぽん吉を養子にと考えた松木右京之助はぽん吉の頭脳と腕を試す為に一策を講じ、素性を隠した姿でぽん吉を襲撃。振り下ろされた刀を見事に躱したぽん吉は「剣は人の道。人を斬るためのものではない。」と言葉を残して潔く立ち去った。松木右京之助はぽん吉の見事な腕前と立派な心構えに感動するのであった。本作で触れられたぽん吉の出自に関する過程は「少女ブック」で連載された宮坂栄一先生のコミカライズ版に詳しい。ぽん吉は、元々弓矢折太郎に拾われたが貧乏の為にやむを得ず捨てたのを魚徳夫婦が救い出している。(訂正<1/24追記>):ぽん吉は拾い子では無く、弓矢折太郎の実子でした。産後の肥立ちが悪く妻が亡くなり、貧乏の為にやむを得ずぽん吉を手放したとの事。御詫びして訂正致します。公開セミナーにて第3話「子守唄の巻」に関して言及なされた小島英人さんの御話で知りました。一度は離れ離れになったぽん吉と弓矢折太郎の縁が「人を斬らぬ」理念の元、剣術の師弟関係として再び結び付く展開に胸が締め付けられる。第19話「姫はぽん子の巻」、大殿は初夢姫の江戸行きに備えてぽん吉を探し出すようにと江戸家老オオトボケへの手紙を八回と精助に託した。身分を隠す為に町娘ぽん子に扮装した初夢姫の姿にショックを受ける心左ヱ門に対して、江戸でぽん吉に出会った末には必ず帰城する事を約束する。旅を目前に恋心を抱く女中みどりへ胸の内を告白する八回と精助のコミカルなミュージカルパートのオチが秀逸。第20話「ぽん子出発の巻」、遂に八回と精助をお供に江戸へ出発したぽん子。八回と精助がみどり争奪をかけて益々ライバル心に燃える様子が伺える。出発して間もなく、初夢姫を狙う黒覆面の忍者軍団が3人の行く手を阻む。ぽん子達危うし!黒覆面の忍者は何者だ!と云う状態で続きが気になる一作だが、しっかり者のぽん子、情けない八回と精助のキャラクター性が明確に描かれている。第24話「鬼にもナミダの巻」、大将・熊の権吉率いる山賊の一味に囚われてしまったぽん子達。危うく山賊に食べられそうになる八回と精助をぽん子が超能力で救出。ぽん子の超能力で戦意喪失した山賊一味に手を上げようとする八回と精助に対してぽん子は「戦う元気をなくしたものはもう敵ではありません」と諭した。ぽん子の慈悲深い心に感動した山賊一味は悪事を詫びて改心を誓ったのであった。悪党の心をも浄化するぽん子の美しい心に感銘を受ける一作。山賊の止まらぬ暴挙を静止する為にぽん子が超能力を駆使する姿が、川内康範先生原作のヒーローが自らの武器を殺生の為ではなく牽制や威嚇の為に活用する点と重なる。あと、坊主にされて想像以上にダメージを受ける熊の権吉の意外な一面が可愛い。第39話「嵐と子守唄の巻」、突如「坂本龍馬の一味」を名乗る不審な集団が大政奉還を画策する坂本龍馬からの密書を狙って幕臣松木右京之助を襲撃。一方、密書を託されたぽん吉は幕臣松木家の養子「源之助」として弱井をお供に白妙城へ向かおうとしていた。旅立つ前にぽん吉が魚徳夫婦の元へ立ち寄り、姿を見せる事をせずに静かに別れを告げる場面に胸が痛む。そして居なくなったぽん吉に想いを馳せる魚徳夫婦、更に弓矢折太郎の回想が切ない。弓矢は皮肉な運命を憎みながらも、知らずと大人の争い事に巻き込まれるぽん吉を守ると決意を固める。改めて、ぽん吉と弓矢折太郎の関係に萌えた一作。関連性が薄い環境下に居るぽん子とぽん吉だが、唯一「お供が頼りない」と云う共通点を発見。(笑) 第50話「ぽん吉大いに化けるの巻」、密書を抱えて白妙城へ向かうぽん吉と弱井の前へ幕吏・堂田角兵衛の手下達が立ち塞がる。密書を弱井へ託したぽん吉は1人で戦うも虚しく堂田に捕らえられてしまった。そこへ突如謎の仮面剣士・鬼面菩薩が登場!捕まったぽん吉の救出に現れたのだ。朗らかに高笑いを見せる鬼面菩薩様。正しく正義の味方、ヒーローの原型である。坂本龍馬の名を利用して幕臣松木右京之助を暗殺した堂田は追って来たみゆきと弱井共々に一同へ銃を向けてあわや皆殺しのピンチに陥るが、ぽん吉のぽんぽこ術が炸裂。スモークを利用して表現した雲上で陽気に笑うぽん吉の笑顔が愛らしい。第66話「七化け合戦の巻」、ぽん吉とぽん子が再会した後の話でサブタイ通りに狸対狐の化け合戦。和尚様の姿を借りた妖狐を相手にぽん吉ぽん子が力を合わせて戦う心躍る展開。先手の妖狐は蛇に変身。対するぽん吉は大蝦蟇、ぽん子は自来也に変身。大蝦蟇は恐らく動作とサイズ的に人が入るタイプの着ぐるみだと思うのだが、ぽん子の変身もカツラからメイクまで本格的。非常に贅沢な演出。ワンシーンの為にここまでするか。順調に変身して優勢に立つぽん吉とぽん子だったが、妖狐の金縛りの為に万事休す。救出に現れた弓矢も囚われの身となってしまい…。(続き下さい。) 相変わらず怖いオジサンに全く動じないぽん子ちゃんの不敵な笑みの絶妙な毒性に癒された。……思うが儘だらだら述べたが、要約すると「ぽん吉と弓矢折太郎の関係性萌え~!」現場からは以上です。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20201107003138j:plain↑ 「少女ブック」1958年2月号掲載、宮坂栄一先生版『ぽんぽこ物語』より。弓矢折太郎先生の回想場面。

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20201104212818p:plain↑ 第50話より。月光仮面より前にいた!ぽん吉のピンチを救う、正義の味方・鬼面菩薩。正体は弓矢折太郎か!?

 

余談:川内康範先生が本作の製作の苦労を言及した記事「『月光仮面』の逆襲」(「中央公論」1959年5月臨時増刊掲載)の中で、先生はテレビ映画を製作するのは撮影スタッフ一同にとって冒険であった事、見事に大赤字であった事、二度とテレビ映画には手を出すまいと自戒した事を告白している。そして『ぽんぽこ物語』を放送したTBSとスポンサーの武田薬品から更に続行しなければ番組に穴が空くという事態を告げられて、再度テレビ映画の原作脚本を引き受けたのだと。衝撃である。川内先生は「二度とテレビ映画には手を出すまい」と断言しているのだ。しかしそれが『月光仮面』の製作に繋がっている。僕は如何に『ぽんぽこ物語』が重要な作品であるか再び思い知らされたのであった。