これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

野原正光版『ウルトラマン』

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惰性で入店したま×だらけの本棚を眺めていたら、幻の若木書房から発行された漫画『ウルトラマン』の単行本を発見。見慣れない画と知らない漫画家の名前に興奮したのが運の尽き、あとは御会計するだけ。(惰性買い) 『ウルトラマン』のコミカライズと云えば、楳図かずお先生が「週刊少年マガジン」誌上で、一峰大二先生が「ぼくら」誌上で放映時に合わせた連載が有名です。野原正光、何者だ。さて、中身ですが、第1話と第2話が続編、第3話が短編の全3話で構成された1冊で、ウルトラマンに留まらずウルトラセブンも登場。むしろ、セブンに見所が集中している。第一話「四大怪獣との決戦」、冒頭の一文「人類のあけぼのから二百万年……戦争、公害、その他の出来ごとを………じっとみつめる者がいた それは…… バルタン星人である。」実に魅惑的な幕開けだ。銀河系征服の前線基地として、恵まれた環境を持つ地球に目を付けたバルタンは首領の"魔王"の命令で地球侵略を実行。多種の怪獣を地球へ送り込み、大災害を齎したが、救済に出現したウルトラマンの攻防により失敗。危機を乗り越えた地球へ、バルタンは卵型のカプセルを送り込んだ。流れ星と勘違いしてカプセルの落下地点に出向いたケンジと父は、カプセルからキーラ、ガマクジラゴモラが出現するのを目の当たりにした。バルタンの命令で人間の誘拐に上陸したと明言したキーラがケンジ達に接近する中、突如ウルトラセブンが現れた。一瞬にして3匹の怪獣を倒したセブンの前に、4つ目のカプセルからギロン星の怪獣・スカンクドンが出現。(スカンクドン→本作のオリジナル怪獣) 超高圧ガスレーザーで威嚇するスカンクドンは、セブンに向かって"おならガス"発射の準備態勢を整えた。セブン危うし!おならガスが命中してガス中毒になって倒れ込むセブンの前に突如ウルトラマンが現れ、スカンクドンにスペシウム光線を発射。恐れを抱いた地球外へ逃走する。バルタンが月から怪獣を地球へ送り込み、何か目論んでいるとケンジへ注意を告げたウルトラマンはセブンを抱えて去った。第二話「かいじゅう月にせいぞろい」、時は月に人類のロケット基地が設置された1989年。ケンジは、友人のジュンと共に月基地隊員の兄に会う為に月基地へ到着。アメリカの調査基地から出発した兄が乗車するムーンカーがK地点で消息不明になった。異変発生によりムーンカーの捜索に向かった月基地隊員とケンジ、ジュン、犬のパルは、K地点で怪獣と思われる巨大な足跡を目撃。足跡を追って捜索続行を図るが、不意に飛び出したパルを追いかけてケンジとジュンは洞窟に迷い込む。洞窟の中は、嘗て存在していた恐竜が飛び交う太古の地球宛らの空間が広がっていた。奇妙にも生存する恐竜の中には怪獣の姿もある。パルの鳴き声に気付いたゴーロン星人がケンジ達に襲い掛かろうとした瞬間、ゼットンがゴーロン星人を退治。しかし、ゼットンはケンジ達を人質として捕獲する為に邪魔者のゴーロン星人を退治したのであった。ゼットンの重力遮断ビームによって、身体の自由を奪われたケンジ達はバルタン星人の怪獣基地に辿り着く。怪獣基地の中では、ウルトラマンウルトラセブンに倒された怪獣達の破片を回収し、青白い謎のエネルギーの力で怪獣達を再生する作業が秘密裏に行われてた。バルタンは再生した怪獣達を再び地球に送り込み攻撃を目論んでいたのだ。アメリカの月基地を破壊して挑発を続けるバルタンは、ケンジ達を監禁部屋へ閉じ込めた。監禁部屋には、K地点で消息不明になっていたムーンカーとケンジの兄が拘禁されていた。ケンジの兄は、バルタンが怪獣の再生に必要としている青いエネルギーがバルタンの命だと推定。青いエネルギーを発動する装置を破壊すべく、監禁部屋を脱出した3人は青いエネルギーの発動装置破壊に成功するが、異変を察知したバルタンがケンジ達目掛けて怪獣軍団を一斉に解放する。行き止まりに衝突してもはや逃走の余地無し…と思われたその時、ウルトラマンが現れた。次々に怪獣を叩きのめすウルトラマンの背後に隙を見て迫る怪獣。絶体絶命のウルトラマンの元へ、眩い閃光に包まれたウルトラセブンが登場。激戦の末、スペシウム光線とワイドショットにより全滅する怪獣軍。エネルギー室破壊で生じた爆発によってバルタンに基地は全崩壊。バルタンは負けを認め、魔王の元へ退散したのであった。第三話「かいじゅうせいX」、少年宇宙警備隊のイサム、ユリ子、アキラ、ゴローは本部の命令により銀河系の0ポイントに存在する「X星」に集結した謎の円盤の調査へ出動した。ロケット1号にはアキラとゴローのペア、2号にはイサムとユリ子のペアが搭乗。無事に発射した1号機だったが、怪円盤が接近する。あわや衝突寸前、ウルトラセブンが出現。怪円盤の正体は宇宙竜ナースであった。ナースの攻撃に悪戦苦闘するセブン。一方、コントロールセンターでは1号機の連絡が途絶えていた。不安な状況下で、2号機がX星目掛けて発射された。引力圏を突破して間もなく1号機を発見したイサムは、ドッキングしてアキラとゴローの無事を確認。しかし、不自然な様子のアキラとゴローはゴドラ星人とザラブ星人が化けた偽物であった。捕獲されたイサムとユリ子は、ゴドラ星人とザラブ星人の誘導によってX星に着陸。生き物が存在しない荒れ果てた星、X星。「地球の子供が好物である怪獣の餌」にすると明言されたイサム達は、突如1匹の怪獣に連れ去られてしまう。ゴドラ星人の死角に着くと、黙って消え去った。その怪獣は、子供の味方であるピグモンだ。安心も束の間、ユリ子がアントラーの砂地獄に飲み込まれてしまった。途方に暮れるイサムの元に、人間の匂いに誘われたキーラが接近。キーラが迫る崖下には、イサム達を助けたピグモンが裏切り者として墓場に葬られていた。危うく崖下に落下寸前なイサムのピンチを救ったのは、高原竜ヒドラ。しかし、ヒドラはキーラの攻撃により息を引き取った。ピグモンヒドラの死を胸に、不吉な音が響く洞窟へと前進するイサムは、大量の怪獣達、そして囚われのウルトラセブンを目撃する。怪獣達の主管であるバルタン星人は、地球を守るセブンを拘束して無防備な地球へ製造した鉄のサイボーグ怪獣を送り込み、地球侵略を目論んでいた。イサムが入った洞窟は、バルタン始め宇宙人達の地球侵略を目的とした秘密基地だったのだ。密かに計画を盗聴していたイサムは、宇宙人に発見された。一方、別れたユリ子、アキラ、ゴローも同じ基地内に収容されていた。逃走するイサムと追跡する宇宙人達の騒ぎを聞いたユリ子達は、収容所を破壊。偶然イサムと遭遇し、全員で怪獣に立ち向かうが、力及ばず怪獣が一同に接近する。と、その時、ウルトラマンが現れた。次々に怪獣を打倒する中、少年宇宙警備隊も応戦。光線銃でキーラに立ち向かい、ピグモンヒドラの敵討ちに成功した。ウルトラマンからのエネルギーを受けて復活したセブンは、ウルトラマンと共に激闘を繰り広げる。サイボーグ怪獣が全滅し、円盤で逃亡を図るバルタンと宇宙人だったが、追跡したウルトラマンとセブンのW光線技によって円盤は全壊。平和が戻った宇宙を後に、ウルトラマンとセブンはM87星雲(!)へと去って行った。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200324011244j:plain↑ みんな大好き「スカンクドンの超高圧ガスレーザー(オナラ)でやられる3秒前のセブン」。なんか色々エッチ。


全作共通しているのは、怪獣軍によるパニック、そして主役が子供。あとはウルトラマンウルトラセブンの登場、敵対ボスはバルタン、舞台は宇宙、時代背景は近未来。地球侵略。光線ポーズが曖昧で雑。 遂一挙げると、ストーリーラインが非常に酷似しています。全体的に自由性が極めて高く、怪獣や宇宙人の名がオリジナルから脱線した表現だったり、登場人物の呼び間違えも多く、スカンクをイメージした「スカンクドン」と名の付いたオリジナル怪獣も登場している。スカンクドンが登場する第1話は、コメディ要素に富む描写が目立っており、地球に出現したキーラ、ゴモラガマクジラが、誰がセブンと戦うのに相応しいか野球拳で勝負したり、スカンクドンのおならガスでセブンがガス中毒になったりと衝撃の迷場面の連続である。スカンクドンのおならガスの正式名称は「超高圧ガスレーザー」です。絶対にコッチで呼んだ方がカッコイイ。 個人的には、おならガスで気絶してるセブンを抱えて飛び去る姿勢のウルトラマンが、実に壮大で情けない絵面が愉快で堪らない。どんだけ強いのだ、スカンクドン。それともセブンが屁に弱かったのか。 オリジナル怪獣と云う特殊な存在だからであろうか、セブンに重傷を負わせたからだろうか、"最後のカプセル"から出現した最終兵器だからだろうか、スカンクドンの存在は特別輝いて見えた。デザインに関しても聖獣の如く高潔な気品すら感じるのだが、やはり武器がおならと云う点でイメージが堕落する。(僕は好き) 第1話は、第2話に続く続編もの。何せ月に人類が到着した20年後を空想した時代設定ですから、月に人類に基地があって、知恵があれば子供でも地球と月を行き来可能なファンタジーを徹底的に描いています。月を調査する子供達と共に犬を描いたのは、宇宙へ行った犬ライカを象徴していたのかも知れません。レーザ銃や光線銃の使用はまだしも、子供だけでロケット操縦は流石にビビる。子供は可能性や将来性の象徴でもあるので、それだけ宇宙開発が目覚しい時期だったのでしょう。月が怪獣達の地球侵略計画の基地だった真相が語られた第2話は、漫画の特性を最大限に生かしたQ、マン、セブン怪獣の軍団襲撃が圧巻の絵面です。ストレートにボコボコ倒される怪獣達が何故か特定不可能な名も無き怪獣(古代怪獣?)なのが非常に残念でならんのだが、マンとセブンが清々しいまでに優勢なのは爽快である。そして最大の落胆は、大魔王様が結局最後特定されなかった点だ。バルタンは終始、自身が「大魔王」と呼ぶ最大権力者に忠誠を尽くしていた。「いつか大魔王が現れる」と云う課題を我々に与えて幕を閉じたと解釈すれば立派なエンディングではあるが真相や如何に。余談だが、幹部としての勲章なのかマント付きのバルタンがカッコイイ。話は一変して、衝撃の少年宇宙警備隊が大活躍する第3話は、前作と比較するとシリアス味の強い一作。と云うのも、子供を庇って死ぬ善良な怪獣が登場しており、少なからずその事態に子供が責任を感じる描写が含まれる。怪獣が人肉(特に子供の)大好きだったり。少年宇宙警備隊の名前は、皆『ウルトラQ』と『ウルトラマン』に登場する人物から肖ってますね。本作に登場する星は架空の星「X星」ですが、全作で月を舞台にしたストーリーラインと同じく、X星は怪獣や宇宙人達の地球侵略計画の作戦基地の設定。月以上に架空の星は未知。X星に大量の流星が落ちたと思ったら、調査の結果、流星ではなく円盤だったと云うミステリーへの変換が魅惑的な冒頭である。やはりヒーローと怪獣の交戦以上に、映像では不可能な混沌に入り組んだ怪獣軍の壮観に魅力が詰まっている様に思えるが、ナースをめちゃくちゃに粉砕するマンが優勝過ぎた全作を通してマンと比較してセブンがだいぶ弱者な気がするが黙って置こう。 マンのトサカから発射されたエメリウム光線モドキの光線がセブンのエネルギーに変換される技は一体。人物画に既視感があるなと思ったら、横山光輝先生風だ。ヒーローの描写は不安定で苦手だったのが透けて見えますが、怪獣には特殊な魅力が詰まっています。(一部除く) 特に、作者はキーラへの愛情が強い様に思うけど、宇宙が舞台だったからかな。此の単行本の初版は、1979年8月25日。仄聞したところでは、単行本化に至る迄タイムラグがあった様で、初出は1970年発刊の児童誌「小学二年生」。第1話「四大怪獣との決戦」は「かいじゅうまんが ウルトラセブン」として4月号(上原光名義)、第2話を描いた「かいじゅう月にせいぞろい」は、新年増刊号掲載。大伴昌司氏シナリオ?原案?だそうですが。第3話は小二の増刊号じゃないかと勝手な憶測だけど、調査中で不明です。(如何せん国会図書館武漢コロナ騒ぎで閉館中でしょ、御手上げだ。) 4月号掲載の第1話は、スカンクドンがセブンに御尻を向ける場面で「5月号に続く」のですが、5月号に掲載されたのは、高須礼二版の「ウルトラセブン」だそう。(スカンクドンが登場するそうですが、残念な事に未読なので不明。) となると、野原正光氏は4月号で降板し、単行本に収録されている第1話の後半は描き下ろしなのか。若干筆致に変化が見受けられる。謎と興味が深まる野原正光氏。細長い楕円形描きがちなのは認めます。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200324011517j:plain↑ 目次、初出と若干異なる。超高圧ガスレーザー(オナラ)で瀕死状態なセブンが僕は愉快で堪らない。(2回目)

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200324011535j:plain↑ 第1話で「ウルトラ7」呼びされる「ウルトラセブン」。終始丁寧に描かれているキーラ。ナース絶対殺すマン。