これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

【2/29 追記有】『アラーの使者』に関して

 

川内康範先生原作の変身ヒーローとして名高い『アラーの使者』に関して。『アラーの使者』とは、東映とNETテレビが製作し、1960年7月から同年12月迄放映されていた特撮冒険活劇(全26話)の題名と、その劇中に登場する変身ヒーローの呼称である。僕は、平田昭彦様の経歴を擦ってた際に遭遇した『愛の戦士 レインボーマン』が川内康範ヒーローとの初めての出会いだった訳ですが、どうやらレインボーマンのプロトタイプではないかと語られている作品の存在を知って辿り着いたのが本作。しかし、現存フィルムが第1話のみと云う理由から、1話以外のエピソードを観る機会を得る事が絶望的な現状。逆手に取れば、1話だけでも残っていた事が幸福と云えるのだろう。アラーの使者の正体は、正義感の強い私立探偵である鳴海五郎。スタンスとしては「悪を憎み、正義の者に味方する」神出鬼没のヒーローだ。風貌は、白ターバンに白覆面と云う中近東を彷彿とさせるデザイン。純粋で澄んだ目が露出する仕様は、レインボーマンにも通じるスタイル。題名とヒーローの名前に在る「アラー」はイスラム教の神を意味するので、日本語に直訳すると「神の使者」。悪事を働く者の前に現れて制裁を下す正義の使者である。さて、上述の通り現存する第1話「恐怖の紅とかげ」はDVDで気軽に入手出来ます。感想ですが、率直に(ネタバレ)云うと、変身しないのかよでした。1話完結ではなく長編ストーリー型。「恐るべき紅蜥蜴の挑戦!謎の正体を追って、事件は波乱に波乱を呼んで展開していく!」で締め括られているので、鳴海探偵がアラーの使者に変身するのは2話以降です。物語の始まり、ロンドンの国際探偵学会議から日本の名探偵・鳴海五郎が帰国した。鳴海探偵の留守中、東京では山村姓の家が次々に襲われる怪事件が発生、事件現場には必ず紅とかげの印が残されている事から、警視庁では一連の加害者を「紅とかげの一味」と呼び、山村姓の家を警戒していた。警視庁の依頼により、鳴海探偵は探偵仲間である八束根探偵と共に東大の地質学者・山村奈良吉の護衛に就いた。山村は30年前に訪れた中国で宿舎に来ていたチベット人から譲り受けた珍しい古ぼけた絵図を所持していた。と、山村邸の庭先に山村を狙う曲者が現れる。直ぐに外へ飛び出た鳴海、八束根両探偵は曲者を逃してしまった。曲者に倒された張り込みの刑事達の直ぐ傍に紅蜥蜴の印と挑発状が添えられていた。「八束根 鳴海 両探偵に告ぐ 我々の邪魔をするな 満月紋の秘図のありかを見つけたからには必ず奪い取って見せる。我々の行動を阻む者は皆殺しだ 紅蜥蜴」…そんな感じで、第1話は伏線を敷いて謎を散らした序章に過ぎないストーリー。注目すべきは、OP映像で確認出来るアラーの使者の華麗な姿と鳴海探偵の澄んだ目ですかね。両方役者は千葉真一氏。OPで砂漠を駆け巡るアラーの使者は、軽快な身熟しが実に見事で格闘シーンに期待が膨らむし、鳴海探偵の澄んだ目は、アラーの使者の正義に満ちた純粋な瞳に繋がります。

 

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第1話と云うか、此の紅蜥蜴団篇の真髄は、「財宝の在処が示された秘図争奪戦」です。カバヤン王国で反乱を起こした軍務大臣マダラカーンと、財宝を狙う獰猛なシュガール族が、日本へ亡命したカバヤン王国の王位継承者であるココナツ殿下と妹のマミイが持つ秘図を狙って襲撃、鳴海探偵及びアラーの使者が正義の名の下闘うのだ。インドとパキスタンの間に広がる山岳地帯カシミールにあるカバヤン王国で反乱が起こった50年前、財宝の隠し場所を4枚の秘図に書き残して脱出する際、部下の3人(テングリ、カイグリ、パングリ)に分けてカラコルム山脈を越えたが、テングリが財宝を独り占めしようと一隊から脱走。しかし、追っていた反乱軍に殺害された。カイグリは断崖から足を踏み外し死亡。パングリはカバヤン王と王妃と共に逃げ延びたが、砂漠の大嵐に巻き込まれて一行は離れ離れに。そして残り1枚の秘図は、ココナツ殿下と妹のマミイの手元に残った。王族に伝わる財宝の在処を示す秘図が四散してしまった事に悩むココナツ殿下の手元にある秘図を奪おうとココナツ、マミイ兄妹に迫る紅蜥蜴団。紅蜥蜴団の一員であるトンガレンは、シュガール族の一人だ。更に、反乱軍のダラマン(マダラカーンの孫)がココナツ、マミイ兄妹を襲う。アラーの使者の役割としては、仲裁の立場に居ながら、罪も無く襲撃の被害に会うココナツ、マミイ兄妹の護衛、四散した秘図の回収、そして悪事を働く者への制裁である。最終的には、巨大蜥蜴が出現したり、身内の反逆や偽物のアラーの使者の襲撃等の危機を乗り越えて、無事ココナツ、マミイ兄妹の手に渡った財宝は、世の中の不幸な人々の為に赤十字社へ寄付すると云う康範イズム溢れるハッピーエンド。因みに、設定上の架空の国家や人物のネーミングはスポンサーの「カバヤ食品」の社名や主力菓子商品だった「ココナツキャラメル」や「マミービスケット」から取ったそうだ。以上の補足内容は、放映当時に秋田書店の月刊誌「冒険王」で連載(本誌+付録)されていた九里一平版のコミカライズ『アラーの使者』から。九里一平版だと、カバヤン王国の財宝秘図争奪戦を「第一部 恐怖の紅とかげ」と括って、プレトリヤ王国に伝わる三つの秘宝を狙う凶悪犯罪組織「吸血鬼」と、同じくプレトリヤ王国の財宝を狙う謎の怪人「死神博士」、そして正義を貫くアラーの使者が対立するストーリーを「第二部 死神博士」と区別して単行本が刊行されている。第二部は、近々独立を考えていたインドとチベットの国境にあるプレトリヤ王国と云う小さくて平和な国を転覆して「トルフヤン共和国」を建設を目論むマランカンから逃げる為、プレトリヤ王国のアルマン陛下とミミイ王女が日本へ亡命する場面から始まる。自国の宝と命が狙われて日本に亡命する展開、2つの悪組織と対立する物語のベースは、第一部と類似しているが、最後まで謎のヴェールに包まれた骸骨の面を被った死神博士の独特なキャラクター、蝙蝠が纏わりつく「吸血鬼」のイメージから、第一部に増して怪奇性の強い長編ストーリーだ。漫画は、現存する映像だけでは得られない物語の全体像と構成が追跡出来る希有なメディアです。他にも、放映当時に秋田書店の少女向け月刊「ひとみ」誌上で水野英子先生(トキワ荘の紅一点!)が短期連載されていますが、残念ながら公に単行本化されていない上に雑誌は入手困難と云う安定の絶望展開により未読。(性別が異なると、着眼点と描写に差異が生じるだろうから、死ぬ迄には読みたいぞ!) あと、工藤市郎氏が執筆された鈴木出版の漫画単行本が3巻刊行されたそうですが、ネットで検索しても全然出てこないので相当希少なのだろう。同じく鈴木出版だと、絵本(おはなしえほんシリーズ)はたまに市場に出てますが、桁がオカシイ。(爆) 映像は、現存フィルムが1話のみでDVDに収録されているストーリーも第1話のみですが、明らかに1話ではない、アラーの使者の戦闘シーンの一部が世に出た記録が存在します。①1980年代に放送されていたフジテレビのバラエティ番組『欽ドン!良い子悪い子普通の子』の中で最終回(アラーの使者が別れを告げて去っていく場面)が放送された。②1988年5月1日に放映されたTBSのバラエティ番組『テレビ探偵団』の中で13話(第1部最終回)の一部が放映された。僕が知る限りでは以上の2件。①は映像を実際に確認出来て無いので、詳細不明なので略しますが、②は紅蜥蜴篇の最終回の一部、ココナツ殿下とマミイ妃の姿、トンガレンとダラマンの対立辺りの場面かと思いますが、何より変身した鳴海探偵即ちアラーの使者の活躍に震える。俊敏で逞しい中に美しさも光る独特なヒーロー像に加えて、正義の心で勇ましく咆えた「欲深き者共め!このアラーの使者が天に代わって、貴様達を誠忠する時が遂に来たようだ!」と、余りに崇高過ぎる台詞に胸を打たれた。九里一平版で表現している作中の必殺技と云えば、鳴海探偵なら二丁拳銃、アラーの使者は指先から光弾(電気?)を発射する技が定番(アラーの使者が二丁拳銃を駆使するイラストやスチールが現像しているので、変身後も武器として利用している)だったが、映像の劇中だと指先から電気ではなくて煙幕を発射。本作の場合、変身前の鳴海が二丁拳銃を駆使する名探偵(ハンサム)である事から十分にヒーローとして条件を満たしているのだが、やはり異国情緒漂うコスチュームを纏った変身後の威厳と品位は格別であった。そういや先月、ツイッター上で『アラーの使者』第1話のフィルムを東久留米のハードオフが売り出してて僕の中で話題になりましたが、あれどこへ嫁入りするんやろなあ。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200228045856j:plain↑ 「欽ドン!良い子悪い子普通の子」のDVDがあったので駄目元で観ましたが、案の定『アラーの使者』映像は収録されていません。(そりゃそーだ) フツオが可愛かったので許します。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200228052258j:plain九里一平先生のコミカライズ。アラーの使者の必殺技の攻撃力がハンパねえ。(だが死にゃーせん) 漫画の特性を生かした豪快な構図とエフェクトです。時折見せるかあいい笑顔にキュン。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200228053337j:plain↑ 第二部に登場する死神博士の妹分(!?)蓮姫。強い、可愛い、エロいの三拍子で異彩を放つ魅惑の美少女。

 

 

【 2/29:追記 】①「欽ドン!良い子悪い子普通の子」内で放映された『アラーの使者』映像は、往年の邦画の一場面を欽ちゃんが再現するコーナーで「別れを告げたアラーの使者が崖の上に跳び上がって、皆が「あっ」と驚く場面だった」そうです。当時放送を御覧になった、銀色のピエロさんから御教授頂きました。貴重な御証言なので、補足として追記させて頂きます。

②黄色い手袋Xに繋がる設定を発見。(?) 工藤市郎氏のイラストや実写の人工着色は、だいたいアラーの使者の手袋の色を黄色で塗装しています。九里一平先生は異なりますが。