これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画『大かいじゅう ナメラー』ムロタニツネ象

 

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ナメゴンじゃないよ、ナメラーだよ。

「小学三年生」1966年4月号に掲載された読み切り漫画『大かいじゅう ナメラー』(文・佐伯誠一/絵・ムロタニツネ象)について。グラビアのカラー絵なんて小松崎茂先生が描いたナメゴン」で通用しそうなクオリティである。御察しの通り、ナメゴンに影響されて誕生したであろうナメラーは容姿に限らず、人類と接触するまでのプロセスまで類似しているのだ。弱点は勿論塩。ここまで寄せていると逆に清々しい。 物語の粗筋を御紹介しよう。

遠足の日の朝、新一少年は母から受け取ったゆで卵に付ける塩をポケットに入れて、妹のマリ子と一緒に登校した。2人が学校の近くまで迫った時、突然空から真っ赤な火の玉が飛来。ガガーン!と云う轟音と共に大地震が発生した。驚いた新一とマリ子は前方のビルへ目を向けると、30メートル程の真っ赤に焼けた円盤がビルに突き刺さっているのを目撃。空を見上げると同様の真っ赤な円盤が次々と東京の地へ落下していた。円盤の正体は宇宙から飛来したロケットだった。そしてロケットの中には宇宙人若しくは宇宙人の手先と思われし怪物が搭乗しており、科学者が怪物の名を「ナメラー」と命名した。ナメラーは口から吐き出した火でコンクリートや石を腐蝕させ、体から放出する汁が持つ強い放射能で鉄を溶解しながら東京中を暴れ回った。建物は破壊され、東京タワーは捻じ曲がってしまった。街が混乱する中、新一とマリ子は教師の星野先生と遭遇。星野先生は新一とマリ子の手を引いて駅まで誘導する。しかし、駅は街から逃げて来た人で渋滞していた。と、突然、地震と共に天井に穴が空いた。いつの間にか、駅の壁には円盤が突き刺さっている。パックリと開いた円盤の中からナメラーが出現した。駅内は益々大混乱に陥った。慌てて走り出した瞬間、新一等は恐ろしい悲鳴を耳にした。咄嗟に後ろを振り向くとナメラーが男性を捕食していたのだ。飲み込まれた瞬間を目の当たりにし、どうする事も出来ない3人は夢中で外に飛び出した。遂に自衛隊が出動した。機関銃や大砲をナメラー目掛けて一斉攻撃を試みたが、無念にも手応えが無かった。次に、火炎放射器を向けたが、効果が得られる所か逆上して怒り狂ってしまった。攻撃虚しく、続々と増え行くナメラー。見兼ねた新一は、自らの所有物を手当たり次第にナメラーに投げ付けた。靴、帽子、リュックサック…投げられる物を探そうとポケットに手を入れると、今朝母から受け取った塩が入った袋に触れた。新一は塩を思いっきりナメラーに投げ付けた。すると、ナメラーが悲鳴を挙げて苦しみ出した。そして塩の当たったナメラーの体の一部が溶け出してきたのだ。地球のなめくじと同じ性質であると判明したナメラーは、消防自動車が積んだ海水によって退治されたのであった。

 

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結局ナメラーは何だったのか。無限に空想は膨らむ。しかし「宇宙からきたナメクジ状の怪物」それ以上でもそれ以下でもない。自衛隊の総攻撃に歯が立たずナメラーの数が増加する一方だったので、人類にとって悪質な脅威だった反面、塩で呆気なく溶解する弱々しい相手でもあった。ただ群れで行動する傾向なので侮れない。ナメラーが宇宙から円盤型のロケットに搭乗して飛来したのは理解したが、宇宙の何処出身か?そもそも宇宙人なのか?怪獣なのか?ナメラーの先制攻撃だった上に、都市破壊を実行したので地球侵略者(小松崎茂先生のナメラーの見出しからして「日本侵略者」かも知れない)であると予想はつくのだが、核心に触れる様な描写は皆無だ。ただ、ナメラーの生態や性格に関しての情報は限られなページの中で多数描かれている。保護者向けに記された後書きに「この空想科学小説は、単なる空想ではありません。放射能などによる、動物の突然変異でおこる可能性から考えられたものです。」と、ある。仮に、作者が「放射能でナメクジが突然変異した」姿をナメラーに託したのだとすれば、ナメラーの体から放出された汁が強い放射能を帯びていた特性に意味が生まれる。又、もう1つの特性として「口から火を吐く」が、コンクリートや石を腐蝕させる程の異常な破壊力を持つ事から放射能火炎の可能性が高い。あとは、戦慄の人肉嗜食。火炎放射も放射能たっぷりの汁も十分悍ましいのだが、やはり人食は生理的嫌悪感に苛まれる。人間はナメクジを常食しませんが(もししてる人がいたら御免)、食物連鎖の逆転は凄惨である。爛々とした目で食欲剥き出しなナメラーの目が怖い。結果、塩をナメラーに投げ付けて弱点を捉えた新一少年が称賛の声を浴びて物語の幕が閉じるが、元を辿れば遠足の御弁当の(?)ゆで卵用の味付けとして塩を持たせた新一母の行動が優勝過ぎる。