これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

朝日ソノラマ/『怪獣大画報』青銅大魔人の怒り

 

1966年10月25日に朝日ソノラマが発行した『怪獣大画報』に関して。蒙古の守り神「青銅大魔人」と、鎌倉の守り神「大ムカデ」と「カニ竜」の激戦を描いた「青銅大魔人の怒り」のソノシートです。両面で、約13分。構成と脚本を大伴昌司氏が務め、挿絵は梶田達二氏が手懸けた歴史的事実を交えた神話編。(視点を鎌倉軍の大ムカデとカニ竜にズラせば、間違いなく「怪獣編」と呼称出来るのだが、青銅大魔人は怪獣ではない。大映大魔神を怪獣と呼称する事に対して激しく抵抗を覚える様に、青銅大魔神は蒙古軍の「神」に値するのだ。) 鎌倉時代中期、蒙古(現モンゴル)の軍勢が2度に亘り日本へ来攻した元寇の概要から物語の幕が開く。日本へ出征した蒙古軍は、軍勢14万、軍船900艘、最新兵器を抱えて九州に上陸。しかし、度重なる戦で鍛え抜かれた鎌倉武士達と突然北九州地方を襲った大暴風雨により蒙古軍は大損害を受け、撤退。一方で中国大陸のある港から、青銅で作られた不思議な像を乗せた船が何処ともなく船出して行った。…それから650年が過ぎた伊豆半島に近い沖合の深海で、嘗て日本を襲撃した蒙古軍が最後の手段として作り出した大型戦艦を探し求める若い考古学者の平田とマリは潜航艇に乗り込み、新しく発見された地図を頼りに4ヵ月間調査を続けていた。深度65メートルに差し掛かった瞬間、突如海底地震が起きて潜水艇を襲ったが、崩れた溶岩の中から巨大な船が現れた。650年前、密かに鎌倉を襲撃しようとした謎の軍艦であると確信した平田とマリは、船腹の裂け目から船の内部を覗こうとライトを差し込むと、青銅で作られたと思われる巨大な彫刻を目撃。事実は直ぐ研究のスポンサーである戸田社長に報告された。新たな発見として貴重な文化財である蒙古船の重要性を尊重し、学会へ発表すると提案した平田とマリに対して、猛反対する戸田社長は元々研究を利用し、蒙古船を独り占めして金儲けする魂胆だ。憤慨する平田を尻目に、戸田社長は密かにボートを出して、蒙古船が沈む場所に辿り着いた。しかし、ボートの船員は「此処は昔から怪しい魔物が住むと云われる恐ろしい場所だ。潜ってはいけない。」と怯えて、潜水を拒絶。戸田社長と船員が口論する中、突如ボートが揺れ出し、海の中から轟音と共に青銅の大巨人が出現した。背の高さ40メートル、そして直径2メートルの手の先から巨大な火の玉が飛び出して、船を追跡する。火の玉は戸田社長等が搭乗したボートに命中し、炎上。燃え上がる炎を見る青銅の魔人の目が爛々と輝いてきた。突如出現した青銅大魔人は、650年前に日本を滅ぼす為に蒙古の軍隊によって造られた兵士であり、蒙古の皇帝クビライの守り神である。5000人の兵よりも強力だと記録のある青銅大魔人は、事故で海中へ沈んだ蒙古軍船の中で長い間眠っていたが、蘇りと共に自分に与えられた使命を思い出した。緊急事態発生。熱海に向かって順調に走る特急こだま号の前に、青銅大魔人が現れた。急停車する間もなく、こだまは線路を歩む青銅大魔人に衝突。こだまは木端微塵に砕け堕ちた。青銅大魔人は鎌倉へと進行した。鎌倉は嘗て蒙古軍が狙った、日本の幕府が存在した場所である。間もなく自衛隊によってミサイルやロケット砲で攻撃が一斉に行われたが、青銅で出来た鋼の体を持つ青銅大魔人に鉛玉は一切通用しない。青銅大魔人の手の先から発射される火の玉の方が威力を持っていた。大魔人襲撃の知らせを受けた鎌倉は大混乱となり、裏山に続々と市民が避難した。そして、鎌倉中の僧侶は露座の大仏の前に集合し、大読経を始めた。「こんな御経を読んだって無駄だ。」と懸念する平田とマリの前に、鎌倉の裏山の洞窟で修行する僧が現れた。僧は、昔の言い伝えを語り出した。「鎌倉が滅びる時、大仏が鎌倉を救う」のだと。大勢の僧侶が唱える大読経は、大仏の空洞に響き渡り、大仏の台座にぽっかりと横穴が空いた。裏山の中腹の洞窟に通じていると伝説のある横穴である。一方、裏山では、山が崩れた中からキューンキューンと泣声を轟かせながら大ムカデが出現。大ムカデの住処が大仏の横穴に繋がっていたのだ。御経を聞いて蘇った全長70メートルの大ムカデは、空に飛び上がり、海岸へ向かった。すると、海上でも異変発生。海中から蟹と竜の混血と思われしカニ竜が出現。大飛躍する大ムカデ、海の上を走って接近するカニ竜の両者は青銅大魔人目掛けて交戦開始。大ムカデとカニ竜は鎌倉の守り神なのだろうか。カニ竜が魔人の足をハサミで挟んで動作を封じた。大ムカデは口から黄色い液を吐いて攻撃。すると、魔人の体が溶け出した。大ムカデが吐いた黄色い液は、強硫酸だった。体のバランスを保てなくなった魔人は遂に地響きを立てながら倒れた。大ムカデとカニ竜の勝利である。古都鎌倉は、不思議な伝説怪獣によって平和が守られたのだ。死に際に魔人が囁いた。「魔人は俺一人ではない。まだ、何処かに海の底で………」

 

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カッコイイよなあ、青銅大魔人!(鬼歯萌え) 鎌倉の焼却を目的に備えられた兵力を持つ兵士である反面、皇帝クビライの守護神。兵士さながら鍛錬された鋼の肉体、洗練された荘厳なデザインに使命に全うする不屈の精神。体に付着した苔や錆が、長年海底に眠っていた時間を物語っていますが、梶田氏の力強い筆致によって生み出された闘争心に満ちた迫力の表情が青銅大魔人の強い意志を反映しています。歴史と現代の融合、そして現実と空想の混交が秀逸な一作。正義と使命を抱いた守護神同士の激闘なので、御互い闘志の中に国を命懸けで護衛する精神を宿した神聖な闘争です。嘗て日本で実際に起こった蒙古襲来は事実であるが、聞き手が非体験である以上、実感に乏しい。そこで、実在する鎌倉や大仏等を取り上げて聞き手に迫真性を与えた。第一、青銅大魔人の存在にドラマが在る。冒頭、絵本の構文の中で、2度に亘る日本侵略に失敗した蒙古軍は、「最後の手段」として作り出した青銅大魔人を大型戦艦に乗せて日本へ進撃。恐らく、弘安の役(2度目の日本襲撃)の際に、大暴風雨に襲われて湾内で壊滅した蒙古の軍船とは別に用意された最終兵器として(架空の)大型戦艦と云う解釈を取ったが、実際に弘安の役で蒙古の戦艦は海底に沈没したのは事実なので大伴氏がどっちを想定して構想したのか解らぬ。ただ、ドラマ(音)の方では、弘安の役で撤退した蒙古軍の後に、「不思議な像(青銅大魔人)を乗せた船が船出した」と云う明言しているので、青銅大魔人は、蒙古軍が2度の日本襲撃を経た後に出撃した大型戦艦に乗っていたのだろう。それから時間が飛んで現代に移行したので、幕府(鎌倉)に向かっていた青銅大魔人及び大型戦艦が何故、伊豆半島に近い沖合の海底に沈没してしまったのか原因不明。蒙古軍の兵士として使命を果たせなかった無念を抱きながら、大型戦艦と共に永い眠りに付いていた青銅大魔人は、海底地震の衝撃若しくは考古学者が当てたライトの刺激で覚醒する。蒙古軍から与えられた「鎌倉襲撃」の使命は、青銅大魔人の正義心と重なって一層の力を宿した。興行師らしき金儲けに目がない戸田社長が、海底で発見された蒙古船に文化的価値を見出して悪用を企むが、人間の道徳的な秩序は青銅大魔人にとっては無関心の対象で、ただ戸田社長は「日本人(=敵)」であるから青銅大魔人に退治されたのだろう。日本の撃滅に繋がる行為が、青銅大魔人にとっての正義なのだ。一方、青銅大魔人襲撃の警告を受けて立ち上がったのが、鎌倉中の僧侶達。鎌倉を見守る大仏の前に集合して唱えた大読経は、大仏の胎内に響いた。その反響によって開いた伝説の横穴は、裏山の中腹の洞窟に通じており、裏山に眠っていた鎌倉の守り神である大ムカデが覚醒する。絵本の方では一切描かれなかったが、音の方では大ムカデ覚醒の前に、「鎌倉の裏山で修行中の僧侶」が現れ、考古学者の2人に伝説を伝える。非常に重要な人物であり、鎌倉の守り神の化身若しくは大ムカデの主人だと思われる。大ムカデは御経で覚醒した怪獣ですから、僧侶と親密な関係なのだろう。そしてもう1柱、鎌倉の守護神カニ竜。大ムカデの様に覚醒の要因無しに唐突に海中から姿を現したカニ竜は、青銅大魔人の動きを封じる為に補助的役割を果たす。青銅大魔人は、大ムカデの強硫酸責めの一撃によって退治されたが、好相性なカニ竜との分担による功績だと思う。カニ竜を悪く云う奴は怒るよ。3柱は宿敵の運命だったに違いない。青銅大魔人の出現により、出撃した自衛隊の敗北、近代兵器が太古の兵力に敗北する場面は最も残酷で絶望的な場面ですね。見所となる青銅大魔人、大ムカデ、カニ竜の接戦以上に、本作は3柱が接触する迄の過程が作品の肝。大伴氏の偉大な構成力に脱帽するばかりだが、特に興奮を覚えたのはB面の冒頭で熱海に向かう新幹線こだま号が絡む一幕。新幹線も又、近代を象徴する物体だ。緊急事態により「熱海駅を通過せよ」と指令を受けた運転手が、不安に表情を曇らせている所へ不気味な雄叫びが轟き、線路上に現れた青銅大魔人から逃れられず衝突するパニックが描かれるシーンだが、青銅大魔人の鎌倉接近は、こだま爆破を切欠に痛快なテンポで加速する。緊急事態にせよ、状況が分からず死んでいったこだまの運転手の心情を汲み取ると非常に厳酷だが、B面の冒頭から流れる恐怖心を煽るBGMによって益々不安感を募らせる。大ムカデとカニ竜は鳴き声に留まるが、青銅大魔人は言葉を発する。日本語めっちゃ喋る。大ムカデに弱点を突かれて倒れた青銅大魔人は、日本人に対して警告を残して滅亡した。そもそも悲劇の始まりを辿ると、蒙古軍の沈没船が記されたであろう新たに発見された地図、そして地図を利用して研究しようとした考古学者、金儲けを企む興行師(と思われる)が要因だ。底無しの人間の欲求は時にタブーを犯す引き金となる。欲望を果たした時には、必ず何かしらの犠牲が伴っている事を忘れてはならない。快活な音楽に包まれながら平和な空気が流れるエンディングの深層には、再び海底から訪れるであろう驚異への不安が募る。しかし臆する事はない。偉大なる大ムカデとカニ竜、そして僧侶が今日も鎌倉の街を見守っている事だろう。(…ところで、本編には登場しないのだけど、表紙としおりに描かれた「原爆怪獣大さそり」って何だ。砂漠の魔王らしいが、何故君は闘いに参戦しなかったのだ。表紙だけなら君が一番輝いてるよ。)

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200325113758j:plainf:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200325113848j:plain↑ 1967年朝日ソノラマ発刊『怪獣大図鑑』に収録された「青銅大魔人」と「大ムカデ」のカード。同じく梶田達二氏による挿絵。同じ大魔人でも大映大魔神は15メートルだから、青銅大魔人は倍以上の身長。(でけえ)