これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

『黄色い手袋X』に関して

 

憎むな!殺すな!赦しましょう!

 

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未だに『月光仮面』を後回しにしている罰当たりな僕が、此のフレーズを初めて目にして衝撃を受けたのは『黄色い手袋X』だった。正確には、『黄色い手袋X』のソノレコードの中に収録されている主題歌「黄色い手袋のおじさん」の歌詞である。自明の事だが「なんと高徳な理念だろう」と僕は酷く胸を打たれたのだ。川内康範先生が生み出したヒーローは、孰れも仏教精神に基づいた川内先生の思想が反映されている。川内先生は、国産特撮ヒーローを発展させた先駆者の一人です。特撮作品では無いが、本作の主人公「黄色い手袋X(エックス)」も、川内先生の高潔な精神が根付いています。と云う訳で、川内先生と師弟関係の大野景範氏が脚色を手掛けた桑田二郎先生の漫画とソノレコードに関して諸々。漫画は「週刊少年マガジン」誌上にて1966年に連載、ソノレコードは連載当時に発行されたと思われます。(音盤だと他にビクターから発行されてる「紅こうもり編」が存在しますが、高価で手が出せん!) 「黄色い手袋X」の「黄色」は、危険を標す注意信号を意味しており、「手袋」は、友愛と信義の握手を表現している。そして「X」は、黄色い手袋から注意信号を受けた人々へ、何故注意を受けたのか反省させる為の記号として、それぞれに意義がある。戦闘姿勢も独特で、第一に、絶対殺生しない。如何に悪人であろうが、不利な立場に追い込まれ様が、殺害する事を避けて命を尊ぶ。根本的に殺意が無い。此れは上述の通り、黄色い手袋Xの精神に基づいています。第二に、 改心の余地を与える。黄色い手袋Xの出現目的は、悪党の退治では無く救済です。悪事を働く人間に対して警告及び注意を行い善を説く。第三に、手数料を取る。後半では殆ど活用してない設定(笑)ですが、冒頭では脱税犯や密輸犯から取り返した一割を手数料として回収する為に、善人なのか悪人なのか解らない「謎の人物」としての魅力を放つ。しかし、後に手数料の名目で回収していた金品は、貧困者を援助する為だったと発覚する。黄色い手袋Xは、自分の働きに対する手数料では無くて、悪事を働いた人間に対する戒め、即ち罰金を回収したに過ぎない。後は、登場が毎度クソ美しくて最高。姿を現す前に唄声を披露した上で、現れる御約束の登場を始め、スラリとした体形に纏うマントが非常に上品。言葉遣いも綺麗。黄色い手袋Xの武器は、主に万能なステッキが活用されます。教師等が注意を促す際に使用される指示棒がモデルか。グリップ部に付いているボタンの操作等によって、多様な機能を発揮する。他にも酸素ボンベや煙幕装置、小型探知機、空飛ぶ水中翼船アロー号(!)等を駆使して、悪人に善を唱える。毒物を見抜く予知能力と云うか、勘も鋭い。何より、身代わり術の達人です。(フェイント上手) 「嗚呼!手袋死んだ!」と思ってもだいたい生きてる。だいたいトリック。黄色い手袋Xの正体は、結局明かされないまま最終回を迎えますが、確実に週刊誌記者の城大介でしょう。普段は少しマヌケで頼りない物腰柔らかな城記者が、忽ち勇敢な黄色い手袋Xに変身して戦う……とんでもねえギャップ萌えだなおい。本作は、「マカオの鷹編」、「紅こうもり編」、「夜光魔編」、「ナゴンのひみつ編」、大雑把に分類して全4編で構成されている。(大都社の単行本では「全7章」と表記されていますが。) 個人的に「夜光魔編」が御気に入りです。右腕が主を裏切るってシチュエーションに弱いンですね、僕は。生物学者の実験が生んだ悲劇。姿見えぬ犯人の怪奇性。戦争に潜む深刻な影。巧妙な手袋のトリック。 特別に設計したと云う、黄色い手袋X渾身の偵察機の登場に加えて、み仏様もが降臨した神回。…いや、仏回。 陸海空を舞台に壮絶な追走劇が痛快なテンポで展開される贅沢な一編です。さて、次に恐らく漫画連載で人気を博した末に発行されたであろうソノレコードに関して。総天然色レコードによる1面仕様の音盤に、主題歌「黄色い手袋のおじさん」(OP)、「まことの泪は真珠だよ」(ED)の2曲+ドラマ「マカオの鷹」が収録されています。ドラマの冒頭は殆ど漫画第1話の抜粋で、密輸犯の小南主宰の舞踏会に登場する黄色い手袋Xの一連に加えて、強引に密輸団のボスであるマカオの鷹が登場。桑田先生の漫画は、カラーでマカオの鷹との臨場感溢れる戦闘場面が描出されていますが、ドラマの方は何方かと云えば、黄色い手袋Xの自己紹介が第一で、戦闘描写は大幅に省略されてる。黄色い手袋X「マカオの鷹!出てくるのだ!今日こそお前の最後だ!」マカオの鷹「今日は負けた」(即答) …と云う具合に、内容は極めて薄い。(ハッキリ) しかし、此のドラマは内容に対する批評では無くて、喋る黄色い手袋Xを堪能出来る事に意義がある。因みに声優欄のクレジットでは、黄色い手袋Xは「?」表記。「謎の人物」としての配慮が徹底してますね。純真で力強い御声です。一瞬登場した城大介記者が、愛川欽也氏なので同一人物か。それにしても、事件や悪事に対して「悪の花が咲く」と嘆く黄色い手袋Xの品位に満ちた表現、何度聞いても痺れるな。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191220062211j:plain↑ (右)一体何者なのか?善悪何方つかずの表情が見事な黄色い手袋X。(真中)登場ポーズがキマり過ぎている黄色い手袋X。(左上)MJ号、違う、アロー号。(左下)黄色い手袋Xの正体か?城大介記者。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191220062228j:plainf:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191220062248j:plain↑ 主題歌「黄色い手袋のおじさん」は、川内先生の精神が根付いた高潔な歌詞です。憎むな!殺すな!赦しましょう!