これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

新『電人アロー』に関して

 

『電人アロー』に関しての続き。「少年」連載当時の最終回、アローは化石人間との闘いを最後に利夫君の元を離れ、夜空に消えていく結末だった。化石人間とは、人間が怪我や病気で死なない丈夫な体を作れないかと研究していた科学者が、人体が石を作れる事を利用して人間の体自体の石化に成功した人体実験の結果である。即ち、人間の部分が残留したサイボーグであり、アローと同等の立場にある存在だ。人類の幸福の為に実行された実験だったが、皮肉にも化石人間は、己の特殊な力を犯罪に利用した。化石人間との激戦により、足を切断する致命的な傷を負いながらも、アロー号を駆使して最後まで戦い抜いたアローは、化石人間を倒した後1ヵ月、利夫君達の前に姿を現さなかった。力を失ったアローは、もはやアローとして戦う事が出来なくなってしまったのだ。そして最後に、アローは寝ている利夫君に向けてこう言葉を残している。「ぼくはかならずアローの力をとりもどしてみせる。かならず…」と。その言葉通り、半世紀の時を経てアローが戻ってきた。画業60周年記念企画として、一峰先生が『電人アロー』の新作を描かれたのだ。(現在進行形) 後付けなされた話なのか、当時から構想していたのか不明だが、孰れにせよ個人的にあの最終回は、的確な結末だったと考えている為に、続編や新作が登場する事に対して、実に複雑な心境だった。単行本として発表された新作の『電人アロー』に対する正式な呼称は何でしょうか。本家を「旧電人アロー」と呼ぶのは絶対嫌ですが、やはり「新電人アロー」?「新アロー」?「電人アロー続編」?。(僕は「新アロー」と呼ばせて頂くぞ。) 電人アローは、「雷さまの電気が人間のエネルギーとして利用出来たらどんなに素晴らしいだろう」と子供の頃に考えた一峰先生の空想が生み出した、自然と科学が融合したヒーローです。様々なヒーロー漫画を手掛けた一峰先生ですが、御自身が子供の頃の空想が具現化されたアローの存在は、特別に違いありません。さて、そんな新たに描かれた『電人アロー』、新作なので(君に呼んで欲しいので)詳細は述べません。(うっかりネタバレしたら御免) しかし、これだけは云わせてくれ。Xファイターの色どうした。(訳:予想外の色設定で動揺が隠せない) 「少年」連載当時の最終回に続く御話で、時間の経過が現実とリンクしています。当時小学4年生だった利夫君は、50歳前半くらいの年齢に。結婚し、二児の父である一方、工学博士としてアローの活躍を見守る。繰り返しますが、利夫君は読者の鏡であり、代役的な存在です。リアルタイムで「少年」読者だった方は、新アローに登場する利夫君と御自身が重なっていませんか。年を重ねた利夫君に反して、アローは全く老けていない。それもその筈である。脳味噌だけが人間の部分であるアローは、血が流れる肉体を持たないサイボーグだ。化石人間との闘いで負傷した右足を修復する際に、アローは新しい技術や素材、蓄電池の搭載等、新改造を重ねてパワーアップした。従来は、電光スピアが主な攻撃法だったアローだが、指先から電流を発したり、電光スピアを応用した技が新たに披露されており、止め処ないアローの可能性と、新作に対する意欲的な姿勢が窺える。落雷を一瞬の内に蓄電し、エネルギーとして活動するアローの存在は、雷をエネルギーに利用出来ると云う証拠である。仮に、枯渇しない安全なエネルギー源である雷が人類の凡ゆるエネルギーに利用された場合、現在地球上に充満する原子力発電の放射能からの危険や地球温暖化を心配する必要性が無くなり、人類平和に繋がる。しかし、一方で現在人類が必要とする原子力を始め、火力水力発電、石油や天然ガスで生み出された全てのエネルギーが不要となる。それは、全世界の経済組織が根底から一変する事を意味している。その影響により職を失い生きる術を無くす人間が多く現れるだろうと、アローの存在が不幸に繋がるのだと主張する男が、殺し屋を引き連れてアローの破壊を目論む。アローの存在に経済を絡めた発想が凄いです。人類の未来や地球環境よりも、目先の金が重要だと云う身勝手な人間の思想を「悪」として描く一峰先生の発想にただただ脱帽。しかし、原子力発電を仕事にしている人間側からしたら、アローは収入源である仕事を奪う「悪」である。正義とは何か。人類平和が正義なのか。人類平和の為に不幸になる個人が居ようが御構い無しなのか。非常に考えさせられる内容だ。アローの体内には、利夫博士が発明した超高性能の蓄電池が備えられていた。その蓄電池をテレビの電波に乗せて全世界で発表して世界各地で製造されれば人類が抱えるエネルギーの悩みは全て消えると、平和を願う利夫博士の意志を抱えてテレビ局へ向かうアローの前に、嘗て戦いの末に行方不明だったXファイターが現れる。1巻では、アローと宿敵のXファイターの再会と戦闘が展開されており、2巻ではXファイターの配下であり、剣士のカッターマン(新キャラ)が登場した。見所①パワーアップしたアローにいさん。何が良いって、嘗て友情を結んだ利夫君が工学博士として成長した末、アローの改造に携わると云う感慨深い胸熱展開よ...!利夫博士の新技術搭載によって新技を身に付けて更に強力となったアローの逞しさは、半世紀と云う時間の間に発展した科学力の象徴であり、利夫博士とアローの深い絆が描出されている。電光スピアを応用してアロー形に描いた新技も利夫博士の改造により生まれた賜物だと思うと益々痺れる。見所②アローとXファイターの再会、そして決着。連載当時、消息不明となっていたXファイターが生きていた衝撃以上に、体の色にビビった。(不二博士のカスタムなのか?) 2巻に登場する不二青年と栗田青年の仲睦まじい姿が映された回想シーンに胸が痛む。決闘は余りに愚昧で拍子抜けしたが、これで終わりだとは思えない。見所③新キャラ、カッターマンの出現。Xファイターが鍛え上げた最強の剣士として2巻に登場。過剰な筋肉や念力(目からビーム)を操る時点で普通の人間では無いが、どうやら改造は行なっておらず、サイボーグでは無い様だ。特筆すべき武器は、日本の昭和基地付近に多く落下した隕石から作り上げた隕石剣。アローの電光スピアをも断ち切る強大な威力を持った武器だ。自然の力は偉大である。電光スピアも雷を利用した自然のエネルギーだが、カッターマンの剣も隕石を利用して創り出された自然の産物。カッターマンが凄いのは、優れた頭脳でアローの電力以外の主動力(絶対的な急所)を見抜き、計画的な攻撃法でアローに致命傷を負わせた点にある。そして、次回作(3巻)に続く伏線を張る役目を担った。一峰先生の絵は、連載当時に比べて柔らかな筆致です。毒が抜けたと申しますか、作風も以前に比べて希望のある印象を受けます。シャープな風貌だったアローも、軟質で品やか。最も変化が窺えたのは、アローの笑顔でしょうか。作中で露骨な笑顔を見せなかったアローが、新アローでは幸福感に満ちた笑顔を振り撒いている。或る種、アローは人体実験の被害者だ。いくら人類の為とは云え、不二青年の人間としての生涯はサイボーグ化した時に閉ざされてしまった。失敗した栗田君と同じ様に、成功と云う栄光の裏でアローなりの苦悩があると思う。しかし、サイボーグである事を誇りを持って、友人である利夫君(利夫博士)と共に悪と戦う新アローの姿と笑顔が、アローの幸福を証明していた。そんな感じで、『電人アロー』は未完の作品です。願わくば「少年」連載当時に応援したかった羨望の気持ちを応援に換えて、現役で漫画家の一峰先生とアロー兄さんの今後の活躍に期待しています。アローにいさんー!がんばえー!

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191210042309j:plain↑ 現在発売されている『新 電人アロー』1、2巻。熱意に満ちたパワフルな表紙。3巻は迫る冬コミで発表されるそうです。(みんなで読もう!)