これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

『電人アロー』に関して

 

アローにいさんが好き過ぎて胸が苦しくなる事がありませんか?僕はあります。と云う訳で、1964年から1966年の間に月刊誌「少年」で連載されていた一峰大二先生のSFサスペンス漫画『電人アロー』に関して。一峰先生と云えば、特撮作品のコミカライズ作家として名高いですが、本作は一峰先生独自のヒーローであり、オリジナル作品です。漫画の連載と同時にTVアニメの企画が進行しており、矢印のマークが眩しい「アスパラ」(栄養剤)の田辺製薬がスポンサーに決定していたものの、スポンサー降板と同時にアニメの企画が無しとなり、それまでアスパラマークに関係していたデザインを一変させた話は有名でしょう。(僕が所持している単行本は、新デザインに統一されてしまってます。) 東京ムービー制作の対V1号戦を描いたパイロットフィルムが残っていて今でも観る事が可能です。映像の出来はどうあれ、現存している事実だけで尊い。「電人アロー」とは、人間を改造したサイボーグ(半人造人間)である。ロボット研究者の不二博士は、研究が進むに連れて、人間の体を使用する危険な実験、即ち人体を「サイボーグ化」させる実験に手を出した。神の領域を冒す極めて危険な実験でありながら、不二博士の元で助手として務めていた栗田と、不二博士の息子二人が、進んで己の命と体を不二博士の実験に捧げた。不二博士の息子と栗田は幼馴染だ。元々体が弱く、腕白に虐められていた栗田を不二博士の息子がいつも助けていた。二人は幼い頃からずっと親友だった。しかし、不二博士の人体実験により転機が訪れる。不二博士による「人体をサイボーグ化する」実験は成功した。不二博士の息子は、電気のエネルギーで活動する人工細胞を持つ体、腕と足に小型で強力な原子力エンジンを身に付けていながら、頭脳を持っている力強い半人造人間・電人アローとして生まれ変わった。一方、栗田の実験は失敗だった。人体のサイボーグ化には成功したが、アローとは反対に、力の弱い無能なサイボーグへと堕落した。そして、実験の失敗を恥じた不二博士は、自責の念に駆られて、アローに「栗田は死んだ」と告げた後、自殺。自身を貧弱サイボーグにした不二博士への恨み、優れた力を誇るアローへの嫉みを抱えた栗田は、堕落した自分を「Xファイター」と名乗り、サイボーグの力を犯罪に悪用した。犯罪で得た巨万の富で強力なロボットを作り、手下を従え、力の強さを誇る機械を破壊。正義の為に戦う電人アロー、悪事の限りを尽くすXファイター。親友だった筈の二人は、不二博士の実験を機に敵対関係に陥ってしまったのだ。Xファイターが悪事を働く動機の主は、やはりアローに抱く羨望と嫉妬が大きな要因だと思うが、一方でアローの父・不二博士への復讐(憎悪)も少なからず窺える。それ以前に、栗田は少年期に体が弱い事が原因で虐められていたので、仮に根幹がそこだとすると、実に悲劇的で救い様が無い。栗田はイジメの経験から力が強い者を嫌ったが、自分自身は強い力を欲しがっており、それは自分を救ってくれた親友・不二青年への純粋な憧憬なのだろう。憧憬と嫉妬は紙一重だ。事ある毎にオセロの様に引っ繰り返り、時に嫉妬の感情ばかりが肥大して他人を攻撃し、己をも傷め付ける。辛いのはXファイターだけでは無くて、親友を失ったアローも同じだ。少年期、栗田が虐められたら自前の強さで栗田を助けていたアローだったが、Xファイターに変貌してしまった栗田を助ける事は出来なかった。アローはこの先、親友を救えなかった罪を背負って生きて行かなくてはならない筈だ。そう云った人間独特の複雑な感情が善悪共に宿ったサイボーグを始め、アローの高性能な構造、少年との友情、怪獣(恐竜)の登場、巨大ロボットの戦闘、科学的偉業でありながら悲劇とも呼べるサイボーグ同士の交戦等、『電人アロー』の魅力は尽きない。上記の通り、特筆すべきは、アローとXファイターの過去と関係性にある。二人の過去は極めて単純に描かれているものの、愛情と憎嫉は隣り合わせにある事、人間の探求心の裏側には無慈悲な欲望が潜んでいる事、明るい未来を照らす科学の裏側には必ず犠牲が伴っている事、サイボーグ化した体で揺れる人間の感情と、過度な科学発展への警告が主張された重要且つ印象に残るシーンだった。次に、利夫君とアローの友情。二人の出会いは実に運命的である。友人とハイキングに向かう道中、自動車のテスト場へ寄り道して試走車を眺めていた利夫君のリュックが不意に試走車の前のタイヤ下に転がり落ちてしまい、試走車は転倒。自分のせいで運転手を死なせてしまったのだと嘆く利夫君の前に「死んだ筈の運転手さん」が現れて、利夫君のリュックを返してくれた。普通の人間だったら車と共に炎上している筈だが、その運転手こそ半人造人間のアローであった。アローを呼ぶ事が出来る信号銃と、アローの体についての秘密が書かれたアローメモを授かった利夫君は、以後あらゆる危険に直面した際に信号銃でアローを呼ぶパートナーとして活躍する。利夫君は、当時連載元だった月刊誌「少年」読者の代役です。例えるならば『ウルトラマン』に登場するホシノ少年の存在意義と似ている。利夫君のツンデレが堪らん。冒頭での複雑な利夫君の天邪鬼な心境と、それに対して全く動じない所か率先して友達になろうとするアロー兄さんが尊い。アローを信号銃で呼び出す姿を目撃したXファイターの手下は、アローと利夫君が親密な関係であると考え、利夫君等を対するハンター(破壊ロボット)の体内に監禁してアローを無抵抗にさせようと試みた。しかし、ハンターの体内に自動爆破装置が仕込まれている罠だと察知したアローは、容赦なくハンターを攻撃。無事に救出された利夫君達であったが、利夫君は自らが監禁されていたロボットを攻撃した事に対して露骨に嫌悪感を示し、アローを「人命を優先しない出来損ないのロボット」と評した。しかし、後にアローと利夫君が友情を深める(正式に友達として契約を結ぶ)瞬間が描かれている。それは、電気を主な活動源としているアローに対抗すべく電気を吸収するロボット・V1号との激戦の後である。それまでアローに対してツンツンしていた利夫君がまるで嘘の様に変貌しており、利夫君を信頼しているアローは、命と同等に大切にしていると云う「アローメモ」を利夫君に託した。秘密の約束を交わした二人は「友達」になったのだ。そんな友情の印とも云える崇高なアローメモが「海底人」編で、軽率に沖博士の元に手渡っているのが何とも虚しい。何で親父に渡しちまったんだ、利夫よ。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191209043003j:plainf:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191209043044j:plain↑ 新(右)旧(左)アロー号デザイン対比。TVアニメ化企画のスポンサー降板により、1965年6月号「少年」からアスパラマークに関与するデザインの変更に加えて、アロー号のデザインの一新したらしい。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191209043019j:plain↑ (上)友達になったアローと利夫君。(右下)嘗て親友同士だった不二青年(アロー)と、栗田青年(Xファイター)。(左下)マリン博士の海底都市で何故か父と寝ないでアローと一緒に寝る利夫君。二人が幸せそうで何よりです。

 

上記の通り、『電人アロー』は漫画連載と同時にTVアニメ化が進行していたものの、スポンサーの降板によって企画が潰れてしまった一方で、漫画読者の支持により漫画の枠を超えて、ソノシートやプラモデル、ぬりえ等、多岐に渡ってキャラクター商品化が実現している。TVアニメ化の名残を感じ得られる点では、やはりソノシートの存在は感慨深い。萩原哲晶氏の作曲による主題歌「電人アローの歌」と、辻真先氏が脚本を手掛けたオリジナルドラマ「秘密兵器エネルギーガン」が収録された音盤に、ドラマの内容に沿った一峰大二先生の描き下ろし漫画が付いたソノシートブックです。パイロットアニメでアロー役を演じた矢島正明氏がソノシートでもアロー役を好演。一峰先生が作詞なされた「電人アローの歌」の軽快なリズムと勇ましい歌詞のハーモニーは少年合唱団の歌唱も相俟って紛れも無く名曲ですが、特記すべきはオリジナルドラマ。新兵器の銃が主役の話です。『電人アロー』の中でも「銃」は重要なアイテムとして登場しており、特に、利夫君がアローを呼ぶ際に使用している信号銃と、敵の追跡にアローが使用したレーダー銃は中でも主要アイテムだが、孰れも破壊を目的に作られた訳では無い。しかし、今回登場する「エネルギーガン」は金属の破壊を主とする超兵器だ。内容は、「エネルギーガン」と云う驚異的な破壊力を持つ新兵器を秘密兵器研究所から窃盗したX国のスパイと逃亡を食い止めるべく現れたアローとの戦闘が描かれている。核心は、日本の秘密兵器研究所の科学陣が10年懸けて作り上げた新兵器である「エネルギーガン」の存在だが、戦争が関与しているにも関わらず、決して陰湿には終わらない科学兵器を題材にしたドラマと、単純明快なストーリーによって際立つ魂が宿ったアローの明朗な恰好良さが眩しい一作。エネルギーガンとは、金属を破壊する威力が強い架空のン兵器である。一方で、金属を含まない岩やコンクリートには一切効果がないと云う強いのか弱いのかよく解らない仕様であるが、金属で作られたロケット弾や戦車は全てエネルギーガンに太刀打ちできない程強力な兵器だ。一体何の為に開発されたのだ?と、深層を窺うとやはり戦争との繋がりを感じざるを得ない。実際に、本作の終盤でミサイルが大量に保管されているミサイル島なる孤島が登場し、スパイはアローに「抵抗すれば発射室のボタンを押す」と戦争を仄めかしている。最後、金属以外には無力である能力を察したアローは、エネルギーガンとスパイ目掛けて巨大な岩石を投げつけ、「自然は悪人に味方しないと云う訳だよ。ッハハハハハハハ!」との迷言を残して去っていった。(カッコイイ) 電気を動力に変換するアローの必殺技と云えば、電光スピア。体内の電気を放電した際に生じる帯電体を武器として利用する電光スピアは、ソノシートの中でもスパイが乗車するジェット機目掛けて活用されているが、意外にも効果音はアッサリとしており(もっとバチバチしてるのかと思った)落胆した一方で、ジェット機の編隊と共に新アロー号に乗って現れるアローは、一峰先生の挿絵の効果もあって実に壮烈なシーンに仕上がっている。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20191209042929j:plain朝日ソノラマ「電人アロー」ソノシート。A面、B面合わせて約13分。アロー兄さんの構造図が(・∀・)イイ!!