これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

『怪奇大作戦』飯島敏宏監督×実相寺昭雄監督 特選作上映会&トークイベント

 

残暑御見舞い申し上げます。コミケ終了したら落ち着いて引き籠れるぞ~と期待していたが、そうはいかない。今年の夏は僕の興味を惹くイベントが多い、多過ぎる。てな訳で、重たい体を引き摺って和光大学ポプリホール鶴川で開催された『怪奇大作戦』飯島敏宏監督×実相寺昭雄監督 上映会 第二弾」に御邪魔させて頂きました。内容は、『怪奇大作戦』に於ける飯島監督作の#24「オヤスミナサイ」、#26「ゆきおんな」と、実相寺監督作の#5「死神の子守唄」、#23「呪いの壺」各監督二作品の連続上映。上映後は、小中和哉監督による司会進行で、上映作品の監督で在る飯島敏宏監督、上映作の撮影を担当した稲垣涌三氏、鈴木清氏を迎えたトークショーが開催された。『ウルトラQ』から始まった円谷プロの特撮テレビ番組は、『ウルトラマン』に続き、『ウルトラセブン』と怪獣や宇宙人が登場する"怪獣路線"の空想特撮シリーズがタケダアワー枠に定着し、世の少年少女を熱狂させていた。そんな中で一転して、現代社会に蔓延る科学犯罪から露出する人間の心理に迫り、"怪奇路線"の新機軸を打ち出した意欲作こそ『怪奇大作戦』である。『怪奇大作戦』の最終案だと伝えられている『恐怖人間』(企画タイトル)の企画書の中で、視聴対象を「子供を含む家族全般」としているが、タケダアワーの歴史から見ても、日曜夜7時枠と云えば、子供番組の放映時間。従来の妖怪や怪談話が絡む非科学的な怪奇とは一線を画す、科学的な裏付けを持った怪奇として認識して欲しいと云う意向から、ドラマの設定では、"現代の怪奇シリーズ"と釘打ち、互いに離反する概念を持った「怪奇」と「科学」の中へ、「人間」が介入する事によって生まれる恐怖を「犯罪」として描いたサスペンス色の強い本作は、若干高い年齢層を意識して制作されていたのだろう。それは、年齢層の低い視聴者から集中的な人気が集まった怪獣路線の枠から打開を図る為に必然的な現象だったと思う。さて、上映作品に関して諸々。放映順で上映されました。何より、怪奇を大画面で観れる機会に圧倒的感謝。(今回は「第二弾」と云う事で、昨年に第一弾が開催されたらしい。) ①「死神の子守唄」、根底には強烈な反核反戦へのメッセージが眠る兄妹の闘病記。胎内被曝による重度の白血病である妹・京子を救出したい一心の兄・貞夫が、スペクトルG線の実用の為に、京子と同じくらいの若い女性をターゲットに人体実験を行うが、無論、孰れも失敗が続く。冷凍漬けされた女性の遺体発見が続発する中、スペクトルG線を利用した犯罪だと確信した牧と、歌手の高木京子を追跡していた三沢によって、京子と貞夫が兄妹であり、京子が胎内被爆者である事、貞夫が妹の為に、スペクトルG線実用の為に、人体実験を行っていた事が明かされる。理由有ど殺人は犯罪である。逮捕される貞夫の後に、取り残されたスペクトルG線を三沢に向ける京子だったが…。何とも、一体誰が罪だったのか。歪んだ手段で殺人を犯した貞夫か?胎内被曝とは云え、病気を抱えた京子か?患者を救えない医者か?原爆だ。戦争だ。しかし、原爆を作り出したのは誰だ?戦争を起こしたのは誰だ?皆知らん顔。他人事。牧と貞夫、科学者同士の対談に本作の核心的なテーマが凝縮されていますね。長い尺で主張されている京子の歌う唄は、実は余りドラマでの関係性は薄い。しかし、暗い曲調と、曲の通りに人が死んでいく展開は、恐怖のエッセンスとして効果的です。三沢と京子の関係性も絶妙に描かれてます。三沢にとっては調査対象に過ぎない京子だけど、本当にそれだけかな。墓地をバックに涙を流す京子のワンカットに鳥肌が止まらなかった。そして何より特筆すべきは、西條康彦様のゲスト出演だよね。(真顔) ②「オヤスミナサイ」、不信が生んだ過失と、儚いフィクションに終わった永遠の愛。 主人公は、幸福の絶頂に居るカップル・竜夫とユキ。二人は、高原ヒュッテでキャンドルパティーを開いていた。いや、キャンドルパティーって何だよ。マジでキャンドルパティーって何だよ。(2回目) リア充の遊びが全く解らないよ。 インディアン遊び(←これも何だよ)の弾みで、竜夫を殺害してしまったユキの元に、山で猟に出て道に迷った牧が高原ヒュッテに一泊する事になるのだが、就寝中に突然部屋に入ってきた男に襲われて、乱闘の末、男を殺害してしまう。奇妙にも、その男は竜夫だった。竜夫は、自分が殺害したのだと主張するユキと牧。警察の調査が入ると、竜夫の双子の弟だと名乗る男が現れるのだが…。結局この犯罪の原因は、身内の揉め事と云うか、兄弟の確執と云うか。兄(竜夫)が、ダイオードの研究に成功した事により金銭を強請りに来た弟を断ったら逆上し、殺害してしまったと云う、感情の混乱による非常に浅ましい動機と結末です。牧が竜夫のカラクリを暴いた後に発する、「人間を信じない御前の計算が、御前を捕らえる事になったのは皮肉な結末だったな」、正しく完全犯罪に失敗した竜夫に対する的確な名台詞である。永遠の愛と、竜夫を信じていたユキの純情が汚されて終わる、胸苦しいラストシーン。本作は、本編の撮影が多く、特撮部分は極めて少ないが、だからこそ竜夫が弟(遺体)の髭を剃り、振り返る場面の特撮が生む独特なビジョンが深く印象に残る。 ③「呪いの壺」、妙顕寺大炎上に尽きる。説明不要な作品を象徴する名シーンで有り、わざわざ文字に起こす事でも無いだろうが、やはり息が詰まる程、圧倒されるのである。今回ブルーレイ上映でしたが、それでもまだ「いや、これはミニチュアではなかろう」って感じ。円谷のおやじさんが褒め称えられたと云う御墨付きですから、本物です。ミニチュアだけを映すのでは無く、SRIの三人が門の前に現れる合成を取り入れた事によってリアリティが増大したのでしょうね。本編は京都での撮影です。物語は、古美術商の市井家から壺を買った御得意さんが次々に変死する事件をキッカケに登場した日野を中心に展開されていく。市井家に先祖代々恩義のある日野の父は、自らの名を世に出す事を赦されず、贋作を創り続けなければならない日々を送っている。壺作りは日野が継ぐ筈だったが、肺病を患っている為に、市井家の元で働いていた。作中、日野の台詞からして末期症状と云うか、肺癌か結核?父を利用して贋作で金儲けをする市井家に強く憎悪を抱く日野は、市川商店から購入した御得意さんの壺にリュート物質を塗り、神経線を破壊する殺人事件を続発させる。間も無く迎える「死」を前に、日野は生きる事に希望を抱くよりも、復讐する事に情熱を燃やす事に執着した。それが日野家の為であり、正義だと妄信していたに違いない。日野が殺人に利用したリュート物質は旧日本軍の秘密研究所で開発していた神経線を破壊する物質で、太陽光線で起きる化学反応によってリュート線を放出する。戦争によって進歩する科学。例え不本意で屈辱的だったとしてもバランスを取れていた生活から絶望に陥った日野父の悲痛な叫びが遣る瀬無い。 ④「ゆきおんな」、気象現象が起こした悪戯か?それとも?牧によって雪女のトリックが語られているが、本作は裏付けなんて無いよ、と願いたい。秋子の父が15年前に起きたダイヤ盗難事件の主犯である描写はあるものの、科学犯罪的なドラマ描写は無い異色作。差出人不明の招待状を受けた秋子と一緒に、同行したさおりは、既に差出人の正体を探るべく、SRIのメンバーが変装潜入している那須ロイヤルホテルに到着する。亡くなったと思われていた父が差し出した招待状ではないかと疑う秋子の元に、「父が会いたがってる」と伝えてくる青年や、「父はどこにいるのか」と拳銃を突き付けて脅迫する男が現れた。今迄、独り占めにしていたダイヤを娘の秋子に託すべく、その為に招待状を仕組んだ父は、部屋に掛けた雪女の画の裏に地図を隠し、秋子も地図からダイヤを見つける事に成功するが、後からダイヤを狙う一味が秋子を執拗に追い回し…。雪女の斬新且つ大胆な合成が不気味。目や唇のアップは全貌が不明瞭で、実に奇妙な怪奇シーンとして記憶に刻まれる。ラストのダークな(笑えない)笑いを入れ込む演出は、飯島監督作の特色でもありますね。…上映終了後は、上述の通り、小中和哉監督による司会進行で、ゲストの飯島敏宏監督、稲垣涌三氏、鈴木清氏によるトークイベント。前半、上映作に関して、後半、サプライズゲストの桜井浩子さんを交えて、当時の円谷プロに関して、1時間程。飯島監督は、TBSから出向した本編監督で、稲垣氏と鈴木氏は東宝から円谷プロに出向したカメラマン。やはり、当時東宝から円谷プロに出向した稲垣氏は、「テレビに降ろされた」と云う認識が強かったそうで。そんな偏見があったテレビの印象を打破したのは、試写室で観賞した「鳥を見た」だったと。稲垣氏と鈴木氏は『ウルトラQ』から撮影助手として円谷プロに参加しています。飯島監督作の「オヤスミナサイ」は、殆どが本編。特撮部分は少ない。ロケに使用された八ヶ岳高原ヒュッテは、当時出来たての建物で、現在も変わらない姿で存在しているそうです。「ゆきおんな」は、京都篇2作品の後で、兎に角予算が無かったそうで(笑)、当時オープンのタイミングでタイアップした那須ロイヤルホテルの中で殆ど撮影が行われたとか。だからこそ、SRIの貴重な変装姿が生まれた訳で、偶然の産物と云うのは稀に奇跡を生み出します。中盤で挿入されるロイヤルダンシングチーム(那須ロイヤルホテルに所属してるダンシングチーム)によるダンスシーンが結構長い尺で映し出されるシーンは、監督の意向では無く、ホテル側の宣伝的な都合により挿入されたそうですが、中盤にダンスや歌のシーンを小休憩に入れて、「前半で起こった事象を視聴者が整理する時間」として挿入する場合もあるみたいです。確かに、監督最新作の『ホームカミング』でダンスシーンが有りましたが、そう云った意味合いを持った演出だったのかな。終盤、雪女の合成部分は、レンズを近付けて女優さんの顔を別撮りし、目や唇のパーツはレンズと顔の急接近撮影、飯島監督が「今ならきっとパワハラで訴えられちゃうよ」と、苦笑い。実相寺監督二作の撮影を務めた稲垣氏は、監督からのアングル等の指定はあったものの、監督と撮影の方向性や嗜好が合致した様で、画作りに対する衝突は無く、意のままに表現出来たそうですね。桜井さんは、「恐怖の電話」でゲスト出演しています。俳優だからと云って気取ってる場合では無く、スタッフ全員が協力して作品に取り組んでいたと当時の円谷プロを振り返っていました。今は映像技術も進化して、CGでどうにかなるけれど、当時は何もない、予算がないと云う状況で良いものを創り出そうと云う、若いエネルギーが作品に宿っているから、50年以上経過した今も尚、その熱意を感じ取ってもらえるのではないか、と飯島監督。そんな感じで、あっという間の3時間でした。

 

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↑  開場前、喫茶室にて。「エンターテインメントアーカイブ 怪奇大作戦」大変良かった。未見の御写真いっぱい。

 

因みに、僕のベスト怪奇は「かまいたち」です。もう断トツで好きだな。動機の無い連続殺人。泣いてるノンちゃんが可愛過ぎるんだよオ。(そこかよ)

 

 

 

エンターテインメントアーカイブ 怪奇大作戦 (NEKO MOOK)

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