これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

コダマプレス/『前世紀怪獣大あばれ』~ノア号決死の怪獣狩り

 

コダマプレスより1966年(?)に発売された『前世紀怪獣大あばれ』を入手しました。恐らく第一次怪獣ブームに肖って「コダマ怪獣がいっぱい特集号」と題された全2作のシリーズ物で、コダマプレス/『宇宙怪獣大あばれ』~ノア号!カエル人間撲滅せよ! の前篇。後篇と同じく、宇宙船ノア号を主体に怪獣との遭遇を描いた大伴昌司氏による脚本です。物語は、宇宙の見知らぬ星を訪ねて調査する任務を担う宇宙調査船・ノア号が、指揮者であるノア船長を始め、テルオ少年やアキコ少女等数十人の乗組員と共に3年間の旅を終え、地球の在る太陽系に帰還すべくとある星座群を通過した際、突如として現れた緑色の惑星との遭遇から始まる。無謀にも緑色の惑星に着陸したノア船長一味は、人間が正常に呼吸出来る豊富な酸素に満ちた地球型惑星で在る事を確証したと同時に、2億年前に栄えた古代植物・シダの大木を発見。驚くノア船長一味の前に、突然謎の巨大生物が現れた。宇宙人か?違う。地球上で中生代と呼ばれる時代に出現したディプロドクスである。慌てて身近な洞窟に身を潜め安心したも束の間、次に恐竜界の殺し屋と云われる兇暴なチラノザウルス、今度は空から蝙蝠竜・プテラノドン。そして、新生代に暴れ回ったマンモスが出現。孰れも活動時代が異なる古代生物ばかりだ。ノア号に避難したノア船長一行は、止まぬ古代生物同士の激闘を後に緑色の惑星から離陸。しかし、やがて目の前に存在する古代生物も地球と同じ様にいつかは共倒れして絶滅に陥る事を懸念したノア船長は、余計な事を云いやがるテルオの「緑色の惑星に棲息する古代生物達を地球へ連れて帰って安全な場所で飼育する」案を採用し、丁度船内に備えていた動物の心を自由に操作出来る「リモート・テレパシー・コントローラー」(狂気の沙汰)を使って、ディプロドクス、マンモス、チラノザウルス、プテラノドン4匹の恐竜達を捕獲。ノア号に接続された貨物気球で眠らせながら、地球へ持ち帰ったのであった。宇宙から連れ帰った前世紀怪獣達は、多摩動物園に設営された放飼場「前世紀ランド」の中で、新開発された「電磁波エネルギー・スクリーン」と云う肉眼では見えない鉄の壁の役割を成す檻で飼育保管を兼ねて一般公開され、東京に留まらず日本中で大評判を得た。所が、動物園の活気に便乗して地球の破滅を目論むオリオン星雲の宇宙人(!?)師弟ぽい2人組がスパイとして多摩動物園に潜入し、動物園の自動発電機を爆破させ、停電を誘発。檻の役割を担っていた電磁波スクリーンが破損し、大人しかった前世紀怪獣達が一斉に多摩動物園から脱走する緊急事態発生!覚醒した恐竜達は水に誘われて、小河内ダムを襲撃。チラノザウルスとプテラノドンの決闘にディプロドクスとマンモスが加わり4大巨獣の交戦による大乱闘となった。激動によりダムが崩壊し、東京中が大洪水。恐竜達は都心へ押し流された。マンモスが代々木のオリンピック屋内競技場に衝突したのも束の間、同じく衝突した事によって全滅するNHK放送センター。東京タワーにしがみついたチラノザウルスが鉄骨を食い千切り、東京タワー崩壊。東京湾に流れ着いた4大巨獣達は、小河内ダムで見せた大乱闘の続きと云わんばかり再び水の中で争い始めた。絶体絶命の窮地、テルオが急遽宇宙開発センターから取り寄せたリモート・テレパシー・コントローラーで暴れていた恐竜達をノア号へ誘導する事に成功。一連の騒動ですっかり改心したノア船長一味は、地球へ連れて来た恐竜達を元々棲息していた緑色の惑星「前世紀惑星」へ返還すべく恐竜達を貨物気球に乗せてノア号で宇宙へ飛び立ったのであった。

 

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↑ 表紙、挿絵は前村教綱氏。多摩動物園の「前世紀ランド」では地球に連れて帰っていない筈のトラコドンが伺える。

 

魅惑のSFアイテム、怪獣同士の激闘、地球を狙う異星人の襲来、都市破壊、人間の過失、娯楽性に満ちた大好物要素盛り沢山。破壊舞台は全て実在する場所が採用されてて現実と架空の曖昧な世界観を堪能しました。何が良いって、突然現れた謎のオリオン星雲人だよね。本作では恐竜達が東京破壊を展開させる元凶として重要人物だったり。クレジット表記は「スパイ」。声優は「カネゴンの繭」にゲスト出演している神山卓三氏と松木一夫氏の師弟関係ぽいコンビによる。その実態は挿絵で表現されなかった事も加担して実に不明瞭。地球破滅の野望を抱き、前世紀ランドの大混雑に便乗して自動発電機の爆破を実行する訳だが、何故地球破滅を目論むのか決定的な理由も無ければ、電磁波スクリーン破壊後、脱走した恐竜達に踏み潰されて直ぐ死ぬので、不憫な悪役として印象に残るキーパーソン。後篇で「宇宙怪獣」として登場したカエル人間やラッパ怪獣等の架空生物と異なり、本作に登場した「前世紀惑星」に棲息する生物は孰れも地球上では棲息時期が異なる実在していた古代生物である。興味深いのは、作中でノア船長も指摘していたが、古代植物を含め、孰れも絶妙に活動時期が異なる恐竜達の共存。惑星の名はノア船長が命名したと推測するとして、そもそも地球では無い為、時間の概念が存在しないのか、タイムトリップが混乱した空間なのか、時代が混在している不思議空間なのか。元々、地球上では草食で大人しかったと云われるディプロドクスが、凶暴性を発揮していた点も地球とは条件が異なる惑星で在るからなのか。それにしても「他の惑星から生物を故郷に持ち帰る」のは、ノア号の任務としてはルール違反と云うか、勝手に共倒れを懸念して勝手に拉致する暴挙に出たノア船長一味が諸悪の根源でしょう。しかも、多摩動物園に前世紀ランドを作って見学バスで一般公開するって、結局は珍しい古代生物達を見世物扱いしているし、勿論見るのはタダじゃないだろうし、めっちゃ悪徳興行師の匂いがするンだけど。架空のSFアイテムも本作の魅力の一つとして挙げられる。最初に登場した「リモート・テレパシー・コントローラー」は、<動物の心を自由にコントロール出来る>装置として、前世紀怪獣達を拉致捕獲する際に利用された。ノア号に偶然備えてあったアイテムで、恐らく他の惑星巡回の際に異生物とのコミュニケーションに使われるのだろうか?いや、コントロールだから、見方によれば…いや、普通にただの凶器だな。人間にも効果あるのだろうか。ちょっと使ってみたい。(悪い顔) 次に、多摩動物園の前世紀ランドで恐竜達の檻として役割を果たした「電磁波エネルギー・スクリーン」。名前の通り、電磁波を活用した目に見えないバリケード。保管は勿論の事、透明な為に視界を遮る檻が無くなった事によって、臨場感に溢れた空間で恐竜を観察出来るのだ。50年以上前に発案されたSFアイテムは、今現在類似した装置は存じ無いが、将来科学発展によって実在する日が来るかも知れない。「自由に」とはまだまだ言い切れないが、スマホとかパソコンは不完全だけど、人間を操縦し始めている様な気もするな。物語の興奮が最高潮に達する怪獣達の都心破壊は、前村教綱氏による圧巻の挿絵が相俟って、巧みに構築された鳴り響くサイレンの音、報道機関と思われるヘリのプロペラ音、恐竜達の鳴き声、そして何より荒ぶるリポーター(MVP)の迫真的な現場リポートの贅沢な演出によって撹乱する状況が目に浮かぶ。闘争心に満ちた恐竜の形相と小河内ダム崩壊の一瞬を捉えた豪快な画は、混沌としながらも激しい大洪水と恐竜同士の熾烈な争いが絶妙に融合していて、壮絶な悪夢を見事に描出されている。結局最後は人間の手に負えず、宇宙開発センターから取り寄せたリモートテレパシーコントローラーで恐竜達をノア号へ誘導、前世紀惑星へ返還すべくノア号が宇宙へ飛び立ち幕閉じとなる。最後に「野生の動物は棲んでいた所に返してやるのが一番良い事なんだよ☆」とほざいていたノア船長だが、そもそも理由はどうあれ適当な憶測で他の惑星から平和に暮らしていたであろう生物を強引に拉致ったおめーが全部悪い。