これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画・一峰大二版『ウルトラマン』

 

ウルトラマン』の放映時に合わせて、講談社の月刊少年誌「ぼくら」で1966年8月号~1967年9月号迄連載された一峰大二版『ウルトラマン』に関して諸々。一峰大二先生と云えば、僕は大前提に『電人アロー』がメッチャ好き。しかし、アロー兄さんに関しては又別の機会を設けるとします。(笑) 一峰先生が手懸けた『ウルトラマン』の初出は、前述の様に月刊誌「ぼくら」にて。「週刊少年マガジン」で楳図かずお先生による漫画版『ウルトラマン』が連載されていた時期と重なりますね。「ぼくら」に別冊付録(全9巻)が添付された他、1968年2月20日には秋田書店から「サンデーコミックス」シリーズとして単行本(初版)が発行され、1995年には翔泳社から「完全版」も出ているが、昨年10月19日に秋田書店より未発表の新作や扉絵、一峰先生のインタビューなどが新たに収録されている「最終決定版」と釘打たれ、遂に完結した上下巻が登場しました。(底本と同じ秋田書店で最終本が発行されたとは感慨深い。) テレビでは登場しない検討用脚本や怪獣の登場と、漫画ならではの表現法やアレンジが魅力的な一峰先生の『ウルトラマン』。漫画化するに当たっての参考資料は、写真と台本で、映像は全く触れずに執筆なされたらしく、テレビ放映1ヵ月先の台本から漫画化するエピソードを一峰先生御自身が選出して、必要ならばアレンジを加えて手懸けられたそうで。ウルトラマンのデザインは、一峰先生の美的センスに準じて、質感と表情に工夫が反映された。楳図先生は独特なアレンジで怪獣の悍ましさを強調した不気味な世界観を構築したが、一峰先生は怪獣に対する細工は殆ど伺えず忠実な再現が印象的。物語は台本を基盤に構想するも、漫画化に対する編集部からの細かな特別な注文が無かった為に、一峰先生独自の自由な表現が光る究極の名作が生まれたのだと思う。以下、最終決定版に収録された各話に対する愚見を失礼致します。

 

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↑ 表紙絵は、丸山浩さん。メタリックな質感。趣意は知らんし別に良いが、これ「からあげクン欲しさにローソン行ったのにファミチキが売ってました。」…みたいな誤解を生んでしまわないのだろうか?(←ややこしい例えをするな!)

 

①「怪獣ネロンガの巻」「ぼくら」1966年8月号掲載…#3「科特隊出撃せよ」基盤

未見の怪獣を登場させた方が視聴者が喜ぶだろうと云う一峰先生の御意向で、初登場は敢えて1話では無く3話の脚本が選出された。実質「ぼくら」誌上では初連載と為るので、冒頭では一峰先生独自のウルトラマンと地球人の初接触が描かれている。単眼のオリジナル怪獣「深海人」が海上に突如出現し、苦戦する防衛軍の前にウルトラマンが登場。戦闘の後に、ウルトラマンから巨大な手紙が飛来する衝撃的な展開を見せ、「地球が怪獣に狙われているので一緒に戦いましょう」と、地球人に宣告をする。手紙の中でウルトラマンの一人称が"わたくし"なのは、本作執筆前に同誌上で連載した『ナショナル・キッド』の影響か。表現は多少異なるが、テレビ版と同じくホシノ少年が目立つ印象。テレビ版では井戸に潜入してネロンガを目撃したり、スパイダーショットで反撃したりと活躍を見せるホシノ少年だが、本作ではネロンガとの接触によりネロンガ菌に侵され病院に入院。其処へネロンガが接近し危機に瀕する。テレビ版では登場しない「ネロンガ菌」とホシノ少年が入院する一連は、『ウルトラマン』初期企画案『レッドマン』「恐怖のネロンガ」の脚本に準じた表現の様だ。決め手は、急所の角を折って(テレビ版は右膝、本作は右手チョップ)からのスペシューム光線

②「グリーンモンスの巻」「ぼくら」1966年9月号掲載…#5「ミロガンダの秘密」基盤

冒頭の人間消滅怪事件から、クロロフィルを投与して飼育された野菜が巨大化するテレビ版との相似点に加えて、霧の様な毒花粉を帯びて出現するグリーンモンスの予兆が印象的。植物の脅威を描いた「ミロガンダ」は、オイリス島だけに生息する食虫植物であり、成長すると赤褐色の美しい花を咲かせる。植物学者の山田博士がオイリス島から持ち帰ったミロガンダの花にガンマー線を当てた事により放射能の影響で世代が戻り、幼態成熟を起こすのだが、美しい花が豹変する過程が描写されたテレビ版と異なり、本作にはミロガンダの花は登場せず、元々オイリス島から幼体の食虫植物を持ち帰った設定。であるから、ガンマー線によってネオテニーを起こすテレビ版と、ガンマー線によって突然変異を起こした結果、巨大化する本作とはニュアンスに相違点が伺える。(テレビ版では等身大の幼態から、スーパーガンの光線によって突然変異→巨大化) 決め手のスペシューム光線で炎上したグリーンモンスは、本作ではスペシューム光線をも吸収してエネルギーに変換し、巨大化する性質により一時はウルトラマンが退却する強敵ぶりを発揮。テレビ版には無い人間を捕食するショッキングな表現が脅威を深化させた。ウルトラマンが倒せなかった敵として、3日間グリーンモンスが放置される事態に発展し、窮地に追い込まれたムラマツキャップが、どんな生物も殺す猛毒」を発明(怖い) その後、科特隊が6人登場したり(い、岩本博士か…?)、ムラマツ班のビートルが4機出動する超展開を魅せ、最終的には、再戦に挑むウルトラマンが捨て身戦法でグリーンモンスの餌食となるが、体内に侵入したウルトラマンが内側からグリーンモンスを破壊。まだ生きてる根部分をスペシューム光線で引火させ、無事完結。途中の経緯は異なるものの、スペシューム光線グリーンモンスが炎上する結末に収まった。結局、キャップの「どんな生物も殺す猛毒」の効力は謎である。(笑)

③「怪獣ギャンゴの巻」「ぼくら」1966年10月号掲載…#11「宇宙から来た暴れん坊」基盤

テレビ版では、ただの悪戯好きの悪い大人として描かれた鬼田だったが、本作では人間の脳髄を動物の体に移してキメラを産み出す大実験の為に、6人もの人間を殺害したマッドサイエンティストな極悪犯罪者として登場する。又、テレビ版の鬼田は石の能力を知った上で故意に盗みを図るが、本作では偶然鬼田の手元に亘り、後に能力を知る事となる。ギャンゴが出現するニュアンスも異なり、鬼田のただの悪戯心から「怪物になれ」と命じて石が変化したテレビ版に対して、刑務所へと葬った科特隊への明確な復讐心を込めてギャンゴを想像する。爆誕したギャンゴを前に「夢が叶った」と発言する鬼田を推重するならば、キメラ創造の実験に成功する事が無かった悔恨の念が浄化された様にも思える。テレビ版のギャンゴウルトラマンの戦闘舞台は熱海であるが、絶対的な復讐心に燃える本作の鬼田は、やはり科特隊基地の破壊を試みる。決め手は、まさかの頭突きギャンゴに頭突きした事により、脳波元の鬼田がダメージを受けて、痛みにより(?)想像力を失いギャンゴ消滅、鬼田もダウン。テレビ版で鬼田が石を盗む際に、一度液体化させるインパクトの強い描写は、シーンは異なるが表現されているので「液体化」は脚本からの抜粋か。戦闘描写として印象に残るは、ギャンゴの噛み付き。(ウルトラマンから血が出てる!) 冒頭でホシノ少年が想像して石が変化したオリジナルの宇宙人が嫌な余韻を残す不気味な風貌だ。

④「あぶら怪獣ペスターの巻」「ぼくら」1966年11月号掲載…#13「オイルSOS」基盤

ハヤタ隊員がホシノ少年をぶん殴った衝撃回。 コンビナートの大炎上が見せ場となるテレビ版は、ウルトラマンペスターの戦闘が殆ど無いに等しい希薄な描写。加えて、イデ隊員の過失が要因となる人間ドラマが重点的な印象を受ける。しかし、本作では迫力の接戦を贅沢に魅せてテレビ版では見れなかったウルトラマンペスターの戦いを増補させた。更には、コンビナート炎上を生かし、ホシノ少年が炎に囲まれるピンチが描かれスリラー調に仕上がっている。初戦では、水中で変身したウルトラマンが(まだ正体の解らぬ)ペスターの吐いた油に包囲されて浮き上がり、ペスターの正体を見逃し、コンビナートの大炎上に発展する一連は、イデ隊員の過失と何所か重なる。二回戦では、ペスターの吐く炎によってウルトラマンが火達磨→海の水で消化と云った映像で困難なシーンを見事に描出し、ペスターの絞め技によって苦戦する上にカラータイマーが点滅し窮地に陥るが、自らオイルタンクに飛び込み、油を利用して脱出。決め手は、スペシューム光線。テレビ版では、ペスタースペシューム光線で退治した後、ウルトラ水流でコンビナートを消化するが、本作は炎燃え盛るまま。炎に囲まれ気を失っているホシノ少年の救出最中にウルトラマンはエネルギー切れとなり、ホシノ少年死亡が問われたが、ハヤタ隊員が炎の中からホシノ少年を救出し、ウルトラマン≒ハヤタ隊員の示唆的な演出が有終の美を飾った。

⑤「バルタン星人の巻」「ぼくら」1966年12月号掲載…#16「科特隊宇宙へ」基盤+α( #2「侵略者を撃て」)

複数体のバルタンとの戦闘が描写されたテレビ版とは異なり、本作に登場する生き残りバルタンは一千万人の仲間をカプセルに抱えた孤独な戦士だ。ベースの脚本は#16の再現に徹しているが、冒頭に#2を想起させるバルタン星人と円盤を撃退したダイジェストが設けられた。物語の肝となるフェニックス号とおおとり号の確執は皆無で、本作にフェニックス号は登場しない。おおとり号を占拠して毛利博士に乗り移るバルタン星人のテレビ版とは異なる、触手の生えた衛星や、変形する毛利博士の頭部と云った大胆な描写は、一峰先生なりの突飛した科学力の表現だろうか。テレビ版では、岩本博士のフェニックス号のロケットエンジンを搭載して開発されたハイドロジェネレートサブロケットを装備したビートル、即ち宇宙ビートル初登場回であるが、本作では引き金となるフェニックス号が未登場の為、代理でビートルの約7倍サイズのロケットを装備した「ハヤタ救助艇」がおおとり号救出に宇宙へ飛び立つ。テレビ版ではおおとりの救助に出向する科特隊の留守を狙って、一隊が地球を占領し、毛利博士に乗り移った首領が、おおとり救助に来た科特隊を攻撃すると云う、二手に分かれて一人しかいないウルトラマンを翻弄させる作戦だったが、本作ではハヤタに救助された(バルタンが乗り移った)毛利博士が地球に潜入し、正体を知るハヤタ隊員へ宣戦布告。その際に、ハヤタが屋上で変身しようとして、ベータカプセルを落とし、バルタンが迫る一連は、#2で捨て身の変身を見せたシーンを彷彿とさせる。スペシューム光線の弱点を補う為に、搭載されたスペルゲン反射鏡に加えて、ハサミから発射される分解光線に苦戦するが、スペルゲン反射鏡を装備していない背中にスペシューム光線を放ち勝利する衝撃の戦術、そして「こんどわたしとたたかうときはせなかにも反射鏡をつけておくんだな」と云う、渾身の(?)捨て台詞に痺れる。個人的には、バルタンが自分の片手で自分のハサミを切る知的な宇宙人にあるまじき皮肉な展開に笑った。馬鹿と天才は紙一重ですしね。(え?)

⑥「怪獣アボラスの巻」「ぼくら」1967年新年月号掲載...#19「悪魔はふたたび」

でた!青いバニラと赤いアボラス(怒られろ) 正しくは、赤い液体から出現したバニラ、そして青い液体から出現したアボラス、なので真逆ですが、「ぼくら」1967年新年号別冊付録の表紙絵で確認出来る様に、一峰先生のバニラは青く、アボラスは赤い。デザイン性を意識して故意に反転させたのだと思っていたら、単純に一峰先生の誤解が生んだ産物らしいです。(爆) 丸山浩さんが最終決定版(上)の表紙絵で、アボラスとバニラを描かれたが、当時誤解して色付けした一峰先生を尊重して敢えて、色を反転させてますね。(最高) 東京のビル工事現場から金属のカプセルが発見される冒頭に加えて、東京の地下に神殿が出現する神秘性に富む描写が添加された。テレビ版ではバニラがアボラスとの闘いに破れた為に描かれなかった、ウルトラマン対二大怪獣の対決が実現している。又、防衛隊と科特隊によるバニラの航空攻撃に代わって、ウルトラマン対バニラの戦いが展開されるが、バニラの吐く火で皮膚が溶けたり、スペシューム光線が無効だったりとバニラの強敵ぶりに苦戦する。そして引かれ合う二大怪獣がオリンピック競技場で戦闘を繰り広げる間に、ウルトラマンが割り込む形で戦闘に加わる。バニラとの初戦により(?)体が弱っている為、スペシューム光線が出せず、八つ裂き光輪がまさかのこのタイミングで登場。光輪を両手で左右同時に放出する荒技を魅せた。ウルトラマンがチョップでアボラスの角を折ったのはたまげたなァ。

⑦「怪獣ゴモラの巻」「ぼくら」1967年2年月号掲載…#26、#27「怪獣殿下」前・後編

テレビ版を忠実に依拠されているが、ゴモラの強力な生命の具現とも云える尻尾の脅威を主張した描写が印象的。特に、ジョンスン島から空輸中に麻酔が予定より早く切れて高所から団地近くの空き地(テレビ版では六甲山ですが)に落下する際に、尾をクッションにして衝撃から身を防ぐ場面はテレビ版では確認出来ない希有な一面だ。加えて、スペシューム光線で切断に成功したゴモラの尾が意思を持ち、ウルトラマンに巻き付くと云う驚異的な特性で、予断を許さないゴモラの強豪ぶりを見せる。初戦でゴモラは地中に潜り、ウルトラマンは時間切れで退却となる五分五分の戦いを展開させた後の、大阪を舞台とした第二戦は、切断した尾を駆使したゴモラが優勢に思えたが、スペシューム光線で撃退。何が怖いって、ゴモラに顔を踏まれて口から血を流すウルトラマンだよね。テレビ版では登場しないイデ隊員発明の一発きりの対怪獣砲が失敗に終わるのは残念だったが、危機の度合いが増加する事により苦境が深化して、ハヤタ隊員のピンチに現れるオサム少年の活躍が効果的だった様に思う。テレビ版では、オサム少年の功績を称え、科特隊バッジがハヤタから授与されるが、本作では冒頭で既に所持しており代わりに、ゴモラの剥製が展示された万博の古代館の招待を科特隊から受ける心温まる場面で幕を閉じた。突飛な「科特隊はなにをしてんねん」嫌いじゃない。

⑧「ウルトラマン誕生の巻」1999年12月発行「コミック★フィギュア王」掲載…#1「ウルトラ作戦第一号」基盤

上述の通り、一峰先生の『ウルトラマン』第1話は#3をベースにした為に、独自のウルトラマンが登場する世界生み出したが、後年に#1「ウルトラ作戦第一号」に準じて、ハヤタ隊員とウルトラマンの遭遇を新たに描かれたのが本作「ウルトラマン誕生の巻」。「ぼくら」連載当時では映像は見ずに、写真や台本を基に描かれた作品群とは異なり、恐らく映像を確認の上で執筆なされたのか、テレビ版に忠実な印象を受ける。しかし、5人の筈である科特隊がまた6人。きっと他の支部からヘルプにやってきた人(?)か、僕と君にしか見えない人だからおめー誰だよ!とか思ってはいけない。漫画の特性を生かしたベムラーインパクト強い出現と、従来に増して筋肉バキバキなウルトラマンが見物。

⑨「三大怪獣の巻」「ぼくら」1967年3年月号掲載…#8「怪獣無法地帯」基盤

火山噴火の為に無人島になっていた多々良島に定点観測に出向した先発隊から連絡が途絶えた事により、科特隊が多々良島へ出撃するテレビ版とは一変、海藻が集結したのを要因に出来たジャングルが海流に乗って東京湾に接近する事が序開となる。よって、物語の多くは多々良島上で展開されるテレビ版とは異なり、ジャングルを飛び出したレッドキング、マグラー、チャンドラーの三大怪獣が東京に上陸し、大都会に巻き起こるパニックが見せ場。又、レッドキングのみと戦ったウルトラマンは、此処で三大怪獣相手に奮闘する。弱肉強食の閉鎖された多々良島で圧倒的に強かったレッドキングが、本作ではマグラー、チャンドラーと並んで同等の立場なのか、大都会で食肉習性を曝け出し(若しくは食料不足により)牛や人間を捕食する大胆な惨酷描写に驚愕。決め手は、巨大八つ裂き光輪(!)で三大怪獣の図体と同時に貫通させる屈強な大技を魅せる。スフランと凶悪顔のピグモンは、偉大な三大怪獣様とは隔離されてジャングル上で登場。友好的では無いが、スフランに巻き付かれて苦戦するホシノ少年を救出すべく(?)捨て身でスフランに噛み付いて活躍する。しかし、ハヤタ隊員は最後までピグモンを「怪物」呼ばわりで軽視している点はどうも腑に落ちない。反面、東京を舞台とする三大怪獣のパニックが重点的な本作にピグモンの友好的な性質は不必要であり「人類の敵ではない」と云う暗示に留めて置いて正解だったのかも知れない。

⑩「怪獣ケムラーの巻」「ぼくら」1967年4年月号掲載…#21「噴煙突破せよ」基盤

地震と有毒ガスを帯びて突如火口から出現したケムラーは、死火山と思われていた大武山が活火山になった為に浮上した怪獣。有毒ガスを纏う特性を除けば、イデ隊員の新兵器・マッドバズーカと明瞭な急所によって比較的卑弱で地味な怪獣だよなァ。テレビ版では、何方かと云えばホシノ少年の成長と活躍が目立つ印象だが、本作は大武市に上陸したケムラーによる市民被害と、有毒ガスの猛威に苦戦するウルトラマンとの攻防戦が丁寧に描出され、ケムラーの特徴を存分に生かしている。何が凄いって、煙突ごと口に含んで排気ガスを吸収するダイナミックなケムラーの描写。又、開閉する背中部の甲羅下に潜んだ核心部が急所なテレビ版と異なり、本作ではガスを出す喉部が急所。加えて、急所の喉目掛けてマッドバズーカを発砲させるも不発に終わり、一層窮迫した状況を構築させた。決め手は、喉部に刺さって不発だったマッドバズーカに向かってスペシューム光線を発射させ誘爆発。結果、撃退したから良いのだけど、イデ隊員の新兵器が凄いのか、ウルトラマンスペシューム光線が凄いのか際どいラインである。一峰先生は八つ裂き光輪を利用したアレンジ戦術の発案が御得意な様で、今回もやはり二つの八つ裂き光輪を駆使して衝撃波を生み出し、大武市に充満した有毒ガスの消滅に成功している。

⑪「怪獣スカイドンの巻」「ぼくら」1967年5年月号掲載…#34「空の贈りもの」基盤

足を置いた地面が沈んだり、絶えず地盤に揺れが生じていたりとスカイドンの大きな特徴と云える超重量を主張した描写が多数伺える。作中では、テレビ版の「ワイヤーロック作戦」と「オートジャイロ作戦」(本作では「ロケット作戦」表記)が漫画化されているが、特筆すべきは、小松崎茂氏による磁石の輪をいくつか立ててその中を走る近未来的な弾丸列車のイラストに感化された一峰先生が考案した八つ裂き光輪の応用は、数々のアレンジの中でもユニークで斬新な着想である。余程、弾丸列車の影響が大きかった様で、冒頭では此の弾丸列車の試運転が描かれ、スカイドンの遭遇の繋ぎ目となった。スペシューム光線も八つ裂き光輪も効かない無敵なスカイドンに苦戦するウルトラマンだったが、最終的には、大量の八つ裂き光輪(!)をスカイドンの口へ投与。体内から皮膚を貫通して四散五裂、そのまま爆死すると云う壮大なラスト。テレビ版ではコミカルな描写で希薄化してるが、かなりの強豪怪獣である事を再認識させられた一遍でした。

⑫「サイボーグ恐竜の巻」「ぼくら」1967年6年月号掲載…オリジナルストーリー

ウルトラマン』放映終了後の作品で、上原正三氏による未制作シナリオのオリジナルストーリーと、成田亨氏がデザインと務めたオリジナル怪獣・サイボーグ恐竜「タンギラー」が登場する。タンギラーは、地球侵略を目論む科学発展した宇宙人が造ったサイボーグで、地球にまだ恐竜が存在していた頃に捕獲した雷竜の肉体を利用して改造。タンギラーを兵器として地球を占領する予定だったが、第四氷河期に突入した為に宇宙人は地球を離れ、取り残されたタンギラーは、氷の中で眠っていた。しかし、タンギラーが眠る場所は、原子力発電所から排出される放射性廃棄物の処理場であり、その放射能を浴びて再び活動を始めたのであった。恐竜を改造して兵器化させるストーリーは、後年登場した『ウルトラセブン』「700キロを突っ走れ!」の下敷きとも云える。宇宙人の地球侵略に対する純粋な恐怖と、原子炉の危険性から生じる自然の脅威の狭間で展開されるウルトラマン対タンギラーの接戦は、スペシューム光線も八つ裂き光輪も効果無いタンギラーが優勢。苦戦したハヤタ隊員は、クレバス作戦に奮励するも、タンギラーの特性である目のレーダーで探知され、やむを得ない捨て身によって作戦は成功し、クレバスに落ちたタンギラーだったが、手足裏から噴射されたジェットエンジンで上陸。後を追う様にクレバスからウルトラマンが飛び出し、タンギラーとの再戦を挑む。決め手は、八つ裂き光輪を駆使して氷で造ったレンズを通してスペシューム光線を集中的に発射して肉体である胴を攻撃→巨大八つ裂き光輪で撃退と云う、手間の掛かった独特な戦術で強敵を倒した。恐ろしいのは、タンギラーを創造した宇宙人が謎に留まっている点で、第四氷河期以前に地球を狙う宇宙人が居た事実も怖いけど、地球侵略を諦めた証拠は無いし、次はサイボーグ人間の改造を目論んでいるのでは?と、不安が残る。映像化されていたらさぞ大スケールな作品に仕上がっていただろう。

⑬「怪獣ヤマトンの巻」「ぼくら」1967年7年月号掲載...金城哲夫氏による原作(詳細不明)が基盤

続いて、テレビには登場しないストーリーと怪獣。戦艦大和が基となる登場怪獣の「ヤマトン」は、『WoO』企画書のプロット「海底基地を砕け」に登場する軍艦ロボットがルーツだそうだが、大戦中に徳之島で付近で沈没した戦艦大和が怪獣に変化して日本本土を襲撃すると云う突飛で奇抜なシナリオは、金城哲夫氏が手懸けたらしい。鹿児島の佐多岬から南支那海に跨って散らばる島々の間で頻繁に発生する船の沈没事件を受けた科特隊は、(潜航艇S号では無い)独自のデザインによる潜水艇で出向。沈没事件に現れた黒い物体が戦艦大和であると云う証言から、大和が沈没した徳之島付近の海底を調査すると、海底には東京湾に向かって動く戦艦大和の姿を発見する。方向を受けた科特隊本部より出撃した防衛軍の前に、沈没した筈の戦艦大和が浮上したと思いきや、大和の姿をした怪獣・ヤマトンが東京に上陸しようと全貌を露わに登場。ムラマツキャップ曰く、ヤマトンは大和の船底に付着した海中生物、又は未知なる生物が何かの原因で巨大化した姿では無いかと考察を述べた。強力な磁力で金属を引き寄せる能力と、膨大で硬固な質量に苦戦する防衛軍と科特隊の前にウルトラマンが出現し、肉弾に加えてスペシューム光線を仕掛けるも鉄板のボディを持つヤマトンには無効。為す術を失ったウルトラマンは、隙を突かれてヤマトンに丸呑みされるが、体内でスペシューム光線を発射しヤマトンの体は分解された。ヤマトンは嗜好に刺さると云うか、普通に好き。停止した生命が、何かの拍子に再活動する超展開にも興奮するし、(この場合、何等かの「生物が大和に寄生若しくは捕食した」に近いけど)船の先端をそのまま顔部に生かすセンス、マジで最高だと思う。

⑭「怪獣ゴルダーの巻」「ぼくら」1967年8年月号掲載...上原正三氏の検討用脚本「怪獣用心棒(仮題)」が基盤

世界征服を目論む地球人によって結成されたヒラーを首領とするサン=ダスト団が守護神として崇める用心棒怪獣・ゴルダーは、如何にも美術的に優れた成田亨氏による秀逸なデザイン。類を見ない独自のフォルムだが、翼部は、『突撃ヒューマン』のブランカーとかインパルスにも該当する意外性に富むフォルムを想起させる。通常ならば、科特隊及びウルトラマンが敵視する対象物は怪獣か宇宙人であるが、本作は「世界征服を目論む地球人」によって結集した悪の秘密結社が敵対すると云う、異色な設定。故に、謎の組織サン=ダスト団を意識的に注視してしまうが、ゴルダーも緻密な設定を凝らされた怪獣で、第一に皆既日食によって兇暴な本性を発揮する特性を持つ。次に、翼を駆使して発生させる強力な真空波を鋭先形に変換して放つ必殺技「ゴルダー=ドリル」の破壊力は、高層ビルをも貫通させる威力を魅せた。そして、サン=ダスト団が所有するレーザー光線銃の1000倍の勢威を持つ熱線を口から放射する。しかし、ゴルダーの出生に関しては依然として不明。世界征服を目論む人間の心に関しては、僕も(多分)人間だから少なからず解る様な気もするけど、ゴルダーは何故、サン=ダスト団に従え、兵器として活動し、同時に崇拝の対象となったのだろうか?怪獣と見せかけて、やっぱりロボットかサイボーグなの?それとも、妄想具現化か?でも、皆既日食で兇暴な本性が目覚めるのは動物的な理由が関係してそうだな。強力な戦術を駆使するゴルダーに劣勢気味だったウルトラマンは、両足を熱線で負傷し窮地に陥るも、ブーメランの原理を応用して(?)ゴルダーの胴体に傷口を作り、巨大な八つ裂き光輪を傷口目掛けて放出、そこへスペシューム光線を発射される複雑な戦法でゴルダー退治に成功。そして、ゴルダーの消滅を察したヒラーが、秘密基地が潜む島諸共爆発させ、サン=ダスト団の野望もゴルダー共に散ったのであった。

⑮「怪獣ウェットンの巻」「ぼくら」1967年9年月号掲載...原作:梓博氏(=末安昌美プロデューサー)

ウェットンは水限定だけど、ニュアンスが+風貌もバルンガぽいなと思ったら、水を吸収して無限に成長する「吸収怪獣」と云う設定は『レッドマン』時期の検討用脚本「リプロスが狙っている」に登場する宇宙生物リプロスが基らしい。デザインは、成田亨氏によるものですが、僕はこのウェットンの姿が生理的に無理。ニョゴニョゴが不気味と云うか、ブツブツが不快と云うか、全体的にアンバランスと云うか、ペニスと金玉の融合体に見えるんだけど何で?僕だけそう見えるの?…呪いか?ウェットンの出現によって水不足に陥り災害三昧な東京の大騒動が描かれるが、何もかもを打ち消したのは、衝撃過ぎたラスト。外部からの攻撃が無効なウェットンに対して、水中爆弾を積んだ潜水艇をウェットンの体内に送り込んで爆破させる計画の操縦士に立候補した勇敢なハヤタ隊員が、自らウェットンの内部に侵入。時刻を過ぎ、爆発と共にウルトラマンがウェットンの体内から飛び出し、無事にウェットンは撃滅するが、ウルトラマンウルトラマンのままであり、ハヤタに戻る事は無く、宇宙へ飛び立ち、ハヤタは安否不明なまま終了。それよか、ハヤタ死亡ムードが流れ、終いには「ハヤタはもう二どとふたたびすがたをあらわすことはないだろう」と釘を刺され、不穏な最終回となった。

⑯「烈風怪獣ゴルダーの逆襲の巻」「最終決定版 下」初公開の新作…「怪獣ゴルダーの巻」の続編

初公開の新作。作画協力に、加藤礼次郎先生。突如出現した規則的な巨大穴。その正体はあのゴルダーの足跡だった!爆発四散で死滅したと思われたゴルダーが仲間の恨みを晴らすべく、科特隊の元へ復讐に現れるアフターストーリー。僕の解釈は、前作のサン=ダスト団に仕えていたゴルダーと、本作で登場したゴルダーは別個体であって、上述にある「仲間」とはサン=ダスト団じゃなくて、別個体のゴルダーだと思うけど、はてさて。そうすると、本作に登場するゴルダーの戦術がゴルダー=ドリルでは無くて、翼で突風を巻き起こす戦法を駆使している辻褄が合う様な気がする。ゴルダーが巻き起こした突風により、ハヤタ機の翼が破壊され墜落する事態に発展するが、どさくさのタイミングで計画通りウルトラマンに変身。翼を広げた瞬間には強風が起きないと見たウルトラマンは、瞬時に八つ裂き光輪をゴルダーの牙部に狙いを定め、固定した所へスペシューム光線を発射して牙の切断に成功。どうやら牙が急所だったゴルダーはダウン。ウルトラマンの独り言がめっちゃ気になる。

⑰「さらばウルトラマンの巻」「最終決定版 下」初公開の新作…#39「さらばウルトラマン」基盤

上述のゴルダーの後篇と同様に、今回初公開の新作。作画協力に佐佐木あつし先生。一峰先生の『ウルトラマン』は、1967年9月号の「ぼくら」誌上に掲載された「怪獣ウェットンの巻」が最終回ですが、テレビ版の最終回をベースにした【もうひとつの最終回】として描かれたのが本作。ゼットン星人の出現など省いて要点を厳選、ゼットンウルトラマンの戦いに比重を置いて描出されている。テレビでは見れない八つ裂き光輪のアレンジを多用した一峰先生ならではの八つ裂き光輪のダブル攻撃をも弾き返すゼットンの強豪ぶりを堪能するも、カラータイマーが破壊される描写にショックを受ける。ゾフィーがハヤタとウルトラマンの命を分離してM78星雲に飛び立った後、科特隊に見送られるゾフィーウルトラマンの対話は一峰先生の御高察でしょうか。振り返らなかったウルトラマンの心境は、とても言葉で表せるものでは無いのだろうな。

 

余談:昨年11月4日に神保町の書泉グランデで「最終決定版」の上下巻発売記念として開催された一峰先生のサイン会に御邪魔しました。上下巻同時購入が条件で、どちらか1冊にイラストとサイン、もう1冊にサインを目の前で書いて頂く贅沢な内容で。イラストはウルトラマン。一峰先生がペン入れをなさった後、隣でアシスタントの佐佐木あつし先生が色塗り。兎に角、憧れの一峰先生を前に、緊張で心臓が口から飛び出そうな事態を制御するのに必死だったよね。一方、順番を待機している間にサインして頂く本を読み返していたせいで本が体温を宿してしまい、それを手にした一峰先生が本が温かいのに驚かれて「ずっと本を持っていてくれたんですね、嬉しいです」と、気さくに笑顔で話し掛けて下さって僕は死んだ。優しい作品を生み出す御方は、御人柄も優しく温かいのだと身を以て知りました。心做しか、一峰先生の笑顔はアロー兄さんの正義に満ちた純真な笑顔と似ている様な気がします。一峰先生が目の前でウルトラマンを生み出す瞬間の感動に震えながら、此れと云って何も御伝え出来ず(緊張し過ぎた)あっと云う間の一時。画業は現役で御活躍なさっておられるので、今後更なる御飛躍を御祈り申し上げます。

 

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