これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画『プレゼント』楳図かずお

 

街に出ればクリスマス一色ですね。本来ならクリスマスはキリスト教の行事で、イエスキリストの降誕祭ですが、ハロウィン同様、世の中は商業戦略に踊らされてます。いや本当、キリスト教の洗脳かよってぐらいクリスマスソングを毎日耳にしてるよ。で、クリスマス=恋人と過ごす日なンてのも日本独特で、変態仮装集団(渋谷ハロウィン)と原理は殆ど同じ。そんな訳で、クリスマスに纏わる楳図かずお先生の『プレゼント』に関して諸々。「サンタクロースの服って、返り血に染まったから赤いンだって!」…僕が小学生の頃、大して仲良くも無かった同級生によるこのソース元不明な一言に翻弄されてサンタさんが狂気性を潜ませていると云う大ニュースに酷くショックを受け、同時にそれを妄信していた時期があった。真実はと云うと、聖人の為の祝日には「赤い司祭服」を着用する規則が由来している様で、更に後々の1931年にコカ・コーラ社の宣伝にサンタが起用された事により、「サンタの服の色=赤」が現在迄定着しているらしい。しかし、「サンタの服の色=返り血」と云う不条理で不明瞭な都市伝説の衝撃が脳内から消える事は無く、プレゼントをあげると油断させて置いて寝てる隙に子供を殺しにやってくるんだあんなに太っているのは殺した子供の肉を食べているからに違いない!、と妄想が止まらない。(中二病発動) 『プレゼント』に登場する「サンタ」は、正しく僕が妄信していた「返り血に染まったサンタ」像であり、「聖なる夜」を「性なる夜」と履き違えた若者に対する制裁者として君臨。プレゼントを与え続けてきた純心な可愛い少女(良い子)が、穢れた女(悪い子)に成長してしまった事に対して、サンタクロースの苦悩と狂気が描かれている。「良い子にしてたら、サンタさんからプレゼントがもらえるけど、悪い子だったら…?」の追及とでもいいましょうか。"クリスマスイブの夜、1年間いい子にしていた子供へがプレゼントを届けに来る"サンタクロースは、楳図先生の御言葉を借りるならば「虚像であり、人間の中にある子供心」だと云う。確かに人間は、成長に伴う経験の積み重ねや習得した知識で「物事の裏側」を究明したがる。子供は、良くも悪くも素直で、目に映る世界をダイレクトに吸収する能力を秘めているので、サンタクロースに正体など無い。サンタクロースは、サンタクロースなのだ。本作は、聖なる夜を冒瀆した若者にサンタが怒り狂う惨劇を重点的に描きつつも、やはり核は、変わり果てた優子に幻滅するサンタクロースの復讐劇。

 

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舞台はクリスマスの夜。悪戯半分に優子が良介へ書いたクリスマスカードを引き金に、コンパに集まっていた男女6人がホテルに向かい、フロントで優子だけが碧い目のサンタクロースを目にする。「本物」のサンタクロースだと確信し、動揺する優子の前に、「子供の頃サンタクロースからもらったプレゼント」がホテルの至る所に散布されていた。不審に思った優子が引き返そうとするが、友人に止められ、軟禁の果てにコンパは乱交に発展。優子が良介に襲われた瞬間、不気味なジングルベルの音楽に乗ってやってきたサンタクロースが、星型の鎖鎌を振り翳し、男の腕を切断。「お前らに今までプレゼントした分を取り返す。」と、次々に鎖鎌で男女の体の部位を刈り乍ら惨殺。ホテルから飛び出して逃げ惑う優子の頭上にソリに乗ったサンタクロースが猛追し、今にも…と云う場面で、目を覚ます優子。悍ましいサンタの復讐劇が夢であった事を悟る優子の前に、冷蔵庫の中から血に染まった人間の手や足がボトボト崩れ落ちる。混乱の中、コンパに参加した友人から電話で「優子がこない間に、全員で御酒飲んで夢を見た内容が全員同じ」だと告げられる。その夢の内容は、優子が見た悪夢の様に、「皆でホテルへ行き」、そこで「優子だけサンタクロースに襲われて頭を抉られた」と云う。そして優子の頭は腐り始め……。その年のクリスマスは世界中でたくさんの人々が似た様な夢を見たのだとか。

以上、物語の概略だが、作中は暗喩的な描写が非常に多い。なので、以下は僕の身勝手な解釈に過ぎません。先ず、本作の主人公・"優子"。「夢の中」の優子は、清潔感のある美麗な容姿で如何にも純真な態度で良介に接触するが、目を覚ました「現実」の優子は、下品に暴言を吐き捨て、男を手玉に取り、友人を自分の利益の為に使用する様な卑劣な女だった。要は、男の前では品性下劣な本性を隠して計画的犯行を図るタイプの悪女な訳で。でも本当、だいたい女ってこんな感じ。「夢」は、優子自身が「こうであれ」と故意に成形した優子像。周りの友人なんかも、皆意地悪に描かれていますが、現実は立場逆転。本当は、優子が一番意地悪。少女期は登場しないものの、夢の中のホテルで散布されたサンタクロースからもらったプレゼントを見るからに嘗ては純粋無垢だった名残が伺える。ホテルの中は優子の脳内と云うか、記憶と云うか、優子の中で、大人になってもサンタクロースとの思い出が完全に消滅していない証拠。"サンタクロース"は、上述の通り「子供心が生んだ虚像」だとして、プレゼントは「心」だと思う。玩具とか、洋服とか形は様々だけど、サンタはクリスマスに子供達へ「心」をプレゼントする。サンタにとってプレゼントは「心」で、体の一部な訳ですよ。だから、「プレゼント(=心≒体の一部)を取り返す」と云う表現に行き着き、物理的に悪い子達の体を刈り取ったのでは。優子の脳が腐る衝撃且つ絶望的なラストは、単純に友人が見た夢の通り、サンタが"優子のプレゼント"を取り返しに来たのだと思う。嗚呼、僕も悪い子になってしまったら、サンタさんに体の一部を刈り取られてしまうのだろうか…!!

 

 

 

ねがい (ビッグコミックススペシャル)