これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

『快獣ブースカ』と「西條康彦」様

 

快獣ブースカ』とは、1966年11月9日~1967年9月27日に日本テレビ系列で放映された円谷プロ制作による特撮テレビドラマである。当時、水曜の19時~19時半枠の放映だった様で、丁度TBSでは毎週日曜の同時刻に『ウルトラマン』と『キャプテンウルトラ』が放映されていた時期と重なる。メイン監督の満田かずほ監督は、本作を『ウルトラQ』の「カネゴンの繭」をヒントに、子供と怪獣が友達になる設定や、日常風景に怪獣が共存する世界を描いたと云う。監督や脚本家を始めとする殆どは、円谷プロ黎明期に活躍したスタッフで構成されている影響もあるのか、『ウルトラQ』の戸川一平役の西條康彦様がゲストとして本作に出演している。当時、27歳~28歳かな。御姿は、一平くんと然程御変わり無く。全47話中、3回ゲスト出演しており、タイトルは「野球珍騒動」(#6)、「ブー冠・王冠・とんちんかん」(#17)、「ナイナイ寺はドッキリ!」(#37)。ゲスト出演故に、孰れも別人格のキャラクターではあるが、子供向け番組としての趣向を十分に御考慮なさった様子で、ユーモアに重点を置いた愉快な御芝居が印象的。注目すべきは、#5と#17は旧芸名の「西条康彦」クレジットなのに対して、#27は「西條康彦」。以上の事実から改名の分岐点は、1967年春頃だと推測出来るが、後の1967年11月12日に放映された『ウルトラセブン』#7「宇宙囚人303」にゲスト出演した際のクレジットは「西条康彦」。漢字違いの為、誤植の可能性も。以下、各話に関して(贔屓全開で)愚見を失礼致します。

 

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↑ 左から、#6の牛乳配達員役。#17の架空国のスパイ役。#37の悪党の子分役。孰れもアクの強いコミカルなキャラ。

 

#6「野球珍騒動」(監督:満田かずほ 脚本:藤川桂介

1966年12月14日放映。ひかり牛乳の配達員役。作業員らしくラフな格好。丈長目のジャケットに御帽子(絶妙な角度の被り方)が印象的。中に御召しのシャツは『ウルトラQ』でも使用された御洋服の可能性も。大作率いるブースカチーム対メチャ太郎率いるデッカイズの町内少年野球対抗決定戦に向けて、大作がボールを吸い付ける秘薬を開発したが、ヘアトニックの瓶に注入した為に、大作の父が頭髪剤と間違えて使用。その秘薬が入った瓶を巡って街中が騒動を起こす一連の中に、西條康彦様が扮する牛乳屋さんが登場する。大作父が何を思ったのか頭髪剤と勘違いしている瓶を渡した相手であり、秘薬による効果の被害者となる。瓶が牛乳屋さんが所持している事を知った大作とブースカは、牛乳屋さんを追い掛けるもすれ違いに。ブースカチームのメンバーに牛乳を渡して、野球試合に対しての応援の声掛けをしている最中、子供達が手にしていたボールが胸元ポケットに入った瓶に吸い付き「変ですね」と呆れ顔で動揺を見せるも、子供達の空瓶を回収して自転車で配達再開。子供に囲まれる西條様は正しく「面倒見の良い御兄さん」。配達先に到着で口笛吹きながら玄関の戸を開けると、謎の泥団子(?)が胸の瓶目掛けて吸い付き、異変の原因が瓶である事を察したかの様にポイ捨て。(匂いを嗅ぐ仕草が細かい) 事情を知ってるメチャ一味が牛乳屋さんの元にやって来た際、「ゴン太がこっそり牛乳を盗もうとしてそれに気付いた牛乳屋さんがゴン太の手を引っ叩く」サイレントなワンシーンが大好きなのですが、この一連がシナリオに存在しているのかアドリブなのか未だ不明。ブースカチームに見せた優しい御兄さんの顔から一変して、今にも「こら!」と言い出しそうな表情とテンポが実に絶妙だ。巡り巡ったヘアトニック瓶が、『社長洋行記』『続・社長洋行記』で西條様と兄弟役を演じた小沢直平氏に行き渡ったのは不覚にもフフッ。

 

#17「ブー冠・王冠・とんちんかん」(監督:満田かずほ 脚本:藤川桂介

1967年3月1日放映。ハーゲ大臣の子分役。上述の優しい御兄さんと打って変わって、子供の敵と化す。部分的に登場した#6と異なり、敵対組織の重要人物として御出演。「ポリシア国」と云う名の架空国(語呂が相似している事からポリネシア国から想起?)の民族衣装の様な御召し物で、白黒でも解るハードな褐色肌。徹底したコミカル調に僅かな狂人味が印象的。ポリシア国王の純金100億円且つ手にする者は"無条件に王の座を獲得"出来ると云う王冠を狙うハーゲ大臣の子分であり、スパイとして同階級らしい小川安三氏とコンビで暗躍する。サムズアップで合図を取り合うのが特徴で、二人の狙いは、王冠そのものでは無くてハーゲ大臣からの報酬(賞金)。一応、行動はコンビで行うが、プロップの操作など殆ど主要は西條様。舞台は、今は亡き箱根の小涌園。ポリシア国王のボディガードに任命されたブースカが自らのブー冠を囮にして、本物の王冠だと勘違いしたスパイが、ノコギリザメをドリル化させたデザインの凶器を隣部屋の壁に穴を開ける際に使用し、ブー冠を誤って強奪。ブー冠を手にして汚れた達成感と金銭欲に満ちた不気味な高笑いは、西條様の定着した天使の様な柔らかい笑みからは想像に難しい狂気的な微笑。そして、王冠を独り占めしようとして子分に反逆するハーゲ大臣を始め、ブー冠を巡って争奪戦が展開される。特筆すべきは、西條様の聞いた事が無かった情欲的な御声。ブー冠を手にして脱走を図る子分二人がスポーツカーで逃げ出そうとした際に、ブー冠が一人でに煙を吹いて(ブースカの念力によるものなのか、ブー冠に蓄積されたエネルギーが一時的に発揮されたのかは不明)スポーツカーが暴走し出す場面で西條様が救助を求めながら絶叫するのだが、通常より高いトーンで衝撃と動揺が同時に走った。「子分」役としてならば様々演じておられますが、孰れも国籍は日本だし、希有な子分キャラかも。最後まで自身の立ち位置を考慮して「ストレートな悪党の子分」を貫いている。

 

#37「ナイナイ寺はドッキリ!」(監督:川崎徹広 脚本:藤川桂介

1967年7月19日放映。ガンバル博士の子分・ヨイト役。世界中の御宝を窃盗してきた大泉滉氏演じる謎のガンバル博士(怪盗兼発明家?)の子分、で同じく子分である鈴木和夫氏演じるコラショの相棒。やはり、西條様の方が主に活躍。#17同様に、作品全体に関与する悪党の子分で、声が裏返るのでは、と心配してしまう程にトーン高目。ガンバル博士の存在が既にコメディなので、親分に準ずる形で子分もユーモラス。西條様が東宝の研修所でバレエの時間に「タイツ履け」と講師に言われて「タイツなんて履くの嫌だ!」と、講師と大喧嘩した話は知る人ぞ知る。タイツへの絶対的拒絶により、演技課を呆れさせた程だった様ですが、なんと、この話では終始目の部分しか見えない、奇抜な全身タイツを御召しに。目のみ露出しているせいか、西條様の目元の美しさが一層に強調されている。一瞬、郵便配達員(11:36)に扮装する場面があるが、ほぼ後姿のみの御出演。背格好からして恐らく西條様御自身。物語は、国宝「一寸法師の打ち出の小槌」が所蔵されているナイナイ寺で修行に励むブースカと大作達の元に、小槌に目を付けたガンバル博士から挑戦状が届く。チャメゴンが小槌に化ける作戦が考案されたが、胡桃欠品中の為、ブースカが変身を目指して忍術を修行。挑戦状の予告通り小槌強奪の行動に出たヨイトとコラショ、そしてガンバル博士。ヨイトは、畳から登場し怪しい高笑いの後「小槌は頂き!」と威勢良く言い放った後、光線を発射。勝負が五分五分で展開される中、ミー子ちゃんの一案で小槌を塔へ避難させる。しかし、塔の正体はガンバル博士が改造したロケット型の自家発電基地だった為、小槌はガンバル博士の手に。発電自転車を漕ぎながら「♪ヨイト、コラショ、ヨイト、コラショ、ヨイトは俺だ、ヨイコラショ♪」から成すガンバル博士のテーマソングが最高。この一場面だけ観るとやってる事は悪いけど、どこか憎めない名悪役臭が。西條様は地が美声で活舌が良いのもあって、歌が御上手。現に、様々な作品で歌唱を御披露なさっています。特に印象深いのは『太平洋の嵐』かな。夏木陽介さんが「こら!」ってなるアレ。