これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

戸川一平に関して

 

空想特撮シリーズ『ウルトラQ』の登場人物の中に星川航空のパイロット助手を務める「戸川一平」が存在する。僕は彼が好きだ。好きで好きで堪らない。(知ってる) 彼を追求するに当たって必要不可欠なのが、戸川一平役を務めた俳優・西條康彦様である。彼は西條様によって魂が吹き込まれる架空上の人物である事を前提に置きたい。戸川一平の歴史は、1963年にTBSより企画された『UNBALANCE』まで遡る。出処の『UNBALANCE』から、近年の『ウルトラQ伝説 ー万城目淳の告白ー』まで映像作品を主軸に一平くんの歴史を(僕の浅知範囲)で辿りたいと思う。

 

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↑ 左、御馴染み1964年の一平くん『ウルトラQ』。(真冬の撮影なのに夏らしい爽やかな振る舞いが印象的だった「南海の怒り」より。) 右は、2005年の一平くん『ウルトラQ怪獣伝説』。洞仙寺のオショサマ!

 

  • 『UNBALANCE』(1964年)

円谷プロの文芸室(企画室)がTBSに提示した企画書(1964年8月頃に完成が推測されている。)の登場人物頁に『ウルトラQ』に登場する「戸川一平」の基盤と推測出来る「戸川少年」が記述されており、簡易なプロフィールとして、「万城目青年の助手、度胸の良さと腕力の強さから「タイガー」と異名をとる怪物少年。オッチョコチョイが玉に傷である。」と設定された。ここで登場する万城目青年は云わずもがな『ウルトラQ』の「万城目淳」に当たる人物像だ。年齢設定は17歳。(日本SF作家クラブ協力によるプロット13話の中で金城哲夫氏が原案の第X話「宇宙新婚旅行」で発覚する。) 25歳設定の万城目青年、19歳設定の倉片由利子(=『ウルトラQ』の江戸川由利子に当たる人物)の中では最年少となる。好物は酢蛸。(金城哲夫氏原案、第X話「大蛸の逆襲」参照)その後、同年9月14日以降に修正が推測される第二企画書で初めて「戸川一平」名義の人物が登場。興味深いのが、第一企画書の設定に傚った『UNBALANCE』初期台本「悪魔ッ子」に一の谷博士の息子として「タイガー」が登場している。此処で登場するタイガーとは、戸川少年(=戸川一平)に当たる人物だろう。一平くんって一の谷博士の息子だったのね。(語弊) 余談、「マンモス・フラワー」に登場する東京広告社の受付嬢である三木道子は一話のみの登場に終わるが、どうやら一平くんのガールフレンドらしい。僕は認めていない。

当時、10月10日から始まった東京オリンピック体操競技の美技を指す"ウルトラC"をヒントにTBSの編成部所属だった岩崎嘉一氏が会議で発案したと云われている『ウルトラQ』のタイトルは、『UNBALANCE』のクランクイン後に改定された。人物設定は『UNBALANCE』企画書改訂の際に形成された通り、「戸川少年」から「戸川一平」になり、配役が西條康彦様に決定。他に候補として挙がっていた丸山謙一郎氏を"幻の一平くん"と題して取り上げたが、もう一人候補として東宝のバイプレイヤーとして名高い加藤春哉氏が密かに市川ノートに挙げられている。(しかし実際に名だけのオーディションとして対面したのは西條様と丸山氏のみ。) 人物設定に関して、星川航空のパイロットである万城目の助手である事は、『UNBALANCE』企画書の改訂の際に設けられた。同じく、オッチョコチョイな点は「戸川少年」に準ずるが、特筆して度胸の良さと腕力の強度も不明な点からして、タイガーの異名も存在しない。『ウルトラQ』のクランクイン自体は1964年9月27日だが、一平くんが世に送り出されたのは映像よりも先に絵物語で、1965年3月1日発行の月刊少年誌「ぼくら3月号」に掲載された。以後、誌上で連載された絵物語には小枠で登場人物の紹介欄がある。孰れも非常に簡易的で、名前は「一平」や「一平くん」と表記され、紹介欄には「淳の助手」めっちゃ雑に紹介された。以後、『ウルトラQ』全篇の映像から受けた個人の偏見による推察となるが、普段は淳ちゃんの一歩後ろに居る能天気な一平くんは稀に人物像の固定観念を破る程、異なる顔を見せる時がある。明確な代表として「2020年の挑戦」。神田博士の著作「2020年の挑戦」に即して怪事件を積極的に推理する知性に満ちた一面は非常に鮮明な印象として残る。読書好きなのか、「東京氷河期」(16:39)では分厚いパイロット辞典の様な本を持ち出し(冒頭05:22では新聞も御読みに)、「バルンガ」(04:26)では雑誌を読んでいたりと書物を手にする場面は多々見受けられる。カッコイイ一平くんと云えば「2020年の挑戦」を想起するが、実は危険から由利ちゃんを命懸けで守る「バルンガ」(08:05)も重要視すべきだ。そして、何を隠そうチョコレート好きなのが可愛い。此れは「SOS富士山」(00:50)と「地底超特急西へ」(10:25)からの推測で、孰れも飯島監督作なのは興味深い。西條様はインタビューで、人物描写が希薄な一平くんを動作や台詞のトーンを独自でコミカルに味付けし、明るい雰囲気作りを意識したリズムを「一平リズム」と表現していたが、正しく一平リズムが人物像を構成するに当たって重要な骨格である事は言う迄も無い。個人的に、一平リズムに該当するか否や、口元に指を添える(もしくは噛む様な)仕草?癖?が御気に入り。因みに設定年齢は不明。当時25歳の西條様と同じぐらいか?戸川少年と同じ17歳設定でも全然違和感ないよきっと。

39年が経過して、ラジオドラマとして復活した『ウルトラQ』の世界。1964年の『ウルトラQ』の設定を引き継いだ世界観で、一平くんは星川航空を退職し、生まれ育った神楽坂にレストランバー「ベム」を奥さんと共に経営しており、シェフ修行中の身。どうやら星川航空のパイロットも内部で職種が分かれる様で、一平くんは農業系の仕事に就いたのか、「ヘリで農薬巻くのは性に合わない」と実情を露わに。退職しているにも関わらず、淳ちゃんの事は以前同様に「先輩」と呼び尊敬している様子。それよかぼかあ一平くんが結婚していると云う事実を突き付けられて若干鬱。設定年齢は西條様の実年齢(当時64歳)に比例している様に思えるが、明らかとされていない。麻布のカリスマシェフの右腕と呼ばれ名高い配偶者の存在は未登場で詳細不明。もしや、マンモスフラワーに唯一登場した道子さんと結ばれたのだろうか?どちらにせよ、来世は僕が一平くんと結婚するンだからね。(真顔) 他、携帯を持たない主義(好き)、マンション住まい、涙もろい等、希薄だった『ウルトラQ』に比べて人物描写が充実している様にも思う。第3話「ホンモノ」では、サディスティックな一面が剥き出しに…。

  • ウルトラQ怪獣伝説 ー万城目淳の告白ー』(2005年)

奥さんと別れたのか、レストランバー「ベム」を退職(?)して金峰山洞仙寺の住職を務める。洞仙寺と云えば、「ゴメスを倒せ!」で裏山の洞窟で発見された古文書が保管されていた。『ウルトラQ倶楽部』同様に、年齢は西條様の実年齢に比例していると捉えるのが無難だろう。

 

…とまァ、正直映像化しているオリジナルの『ウルトラQ』以外はアナザーストーリーに過ぎないでしょうが、全て公式なので、孰れも等身大の一平くんです。全部、僕の大好きな一平くん。初期設定のタイガーって異名が結構好きで、一平くん=タイガー=虎→虎のぬいぐるみを見かける度に萌えると云う訳わからない事態が僕の身に起こっています。分岐点は確実に後付け設定が盛り込まれる『ウルトラQ倶楽部』。初めて耳にした時、時間の経過に伴って、一平くんも年を重ねたのが何より衝撃でした。そりゃ人間年を取りますよ、けど一平くんは架空上の人物ですから、永遠に年を取らない事だって出来る。星川航空を辞めた事も、既婚者である事も正直受け入れられなかったが、淳ちゃんと由利ちゃんが約40年以上の時を得ても尚、唯一変わらない絆で結ばれている奇跡は、無性に励まされる思いだ。余談になるが、『ウルトラマンマックス』(2006年)の第29話「怪獣は何故現れるのか」は、『ウルトラQ』のレギュラーメンバーが勢揃いで登場する。人物像の立ち位置が非常に曖昧で、『ウルトラQ』で活躍した架空上の人物としての役では無く、俳優自身(しかしフィクション)の「西郷保彦」と云う役名で、俳優の身に起こった回想をドラマ化すると云う独特な構成。西條様が演じた西郷保彦はバーのマスターだった。「戸川一平」では無いので除外したが、『ウルトラQ倶楽部』で一平くんが働いていたカフェレストラン「ベム」が映像化されていたらこんな感じだったのかナ~、と妄想……。(にやにや)

 

 

 

ウルトラQ伝説―日本初の空想特撮シリーズの最終資料
 
「ウルトラQ」の誕生

「ウルトラQ」の誕生