これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

【9/13 追記有】『怪獣マリンコング』に関して

 

1959年夏頃(推測)、局からの買い付けを待たずして制作したばかりに6話まで完成したにも関わらず、残念ながら幻の特撮テレビ映画となってしまった『大海獣ゲボラ』。企画した当時ニッサンプロの社長・大橋正次氏が次に制作したのが『怪獣マリンコング』である。日本征服を野望を企む「Z団」とその防衛に励む電波工学の権威・矢田博士とその息子・和夫少年を中心とした善玉との対立を描いた作品で、全篇に亘って怪獣が主役の特撮テレビ映画はマリンコングが本邦初と云うのは、特筆すべき利点だ。"密林から現れるキングコング"から想起して、"海から現れるキングコング"の思惑を秘めている「マリンコング」はただの怪獣では無い。人造動物であって無慈悲なロボットなのだ。突飛な発想から誕生したその意外性と従来の怪獣に対する固定概念を破壊する独特の異質さが滲む存在感が、僕の心臓を強引に掴んで離そうとしない。

大橋社長が企画倒れした"特撮怪獣物"の『大海獣ゲボラ』に続いて同ジャンルに着手したのは、『月光仮面』亜流作品の一辺倒だったテレビ映画の状況下と、当時新興プロダクションのニッサンプロが局への売り込みを成功させるにはこれしかないと睨んだ背景がある。晴れてフジテレビの買い付けを受けたマリンコングは、今は無き古谷製菓が持っていた放送枠・日曜日朝9時30分~10時00分に放映決定。関東のみで1960年4月3日~の放映から忽ち高視聴率を獲得、地方にも拡大して2部構成の全26話(『怪獣マリンコング』1話~13話、『マリンコングの大逆襲』14話~26話)が製作・放映された。ゲボラはフィルム紛失で生涯目にする事は無いだろうが、マリンコングは映像が現存する。観ようと思えば、観れるのだ。機会と金さえあれば。と、云うのも1984年に特撮専門誌「宇宙船」誌上で1話、2話、13話のみ収録されたビデオソフトが限定通販されていて、発売手段の性質上出回りの数が少なく希少品故に当時価格19,800円から現在は程遠い相場で取引されているのが現状。各個体にシリアルナンバーが付与された仕様で、以前Mで出品されていた「No.186」、少し前にヤフオクで落札された個体が「No.200」(?)からして1スタートの付与ならば少なくとも200本は売り上げたのだろうが…。しかし、現存するビデオソフトは前述の1本に収録された3話分のみで、他の話は公表される事なく2018年現在、全話収録されたソフトは存在しない。御手上げな僕が他の手段でマリンコングの世界を求めた結果、当時少年向け月刊誌上でコミカライズとして連載されていたテレビ漫画に行き着いたのであった。

 

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2011年に発売した笹川ひろし先生の『怪獣マリンコング』。言わずもがな復刻本。電車をガジガジする裏表紙のマリンコングにデジャブ!見なかった事にしておきましょう。「まんが王」に1960年6月号~11月号に連載された漫画(コマに付与された番号に准ずるならば8話収録されている)に加えて沢田弘氏によるマリンコングの挿絵(同誌「まんが王」に掲載?)、『まぼろし潜隊マリンK』『化石人間V』『ホイホイ桃太郎』『巨人ガンさん』が同時収録された。マリンコングは原作同様、太平洋を航海中の客船が謎の遭難に出会す場面から幕開け。相違点を挙げるとするならば、悪玉組織「Z団」の呼称が何故か「LX団」と異なる。しかし、序盤のみで最終的に「Z団」で統一されており益々謎が深まる。(読んでいてZ団とは別組織なのかと疑ってしまったでは無いか)丁度、マリンコングが破壊されたのを機会に強化型マリンコングが造られた分岐点なので「LX団」が心新たに組織名を「Z団」に変更したとなれば筋道が通る。『マリンコングの大逆襲』で新登場する正義の女戦士「くれない天使」が、どう見ても女じゃない。それこそ月光仮面に近い風貌でヒーロー活劇を想起させるスタイルで、これもやはり最終的には原作設定に准じた女戦士として統一された。両性のくれない天使を目の当たりにした訳だが、新機軸を打ち出したマリンコングにはやはり女戦士が登場する型破りな展開が御似合いだ。現に、くれない天使(女)がZ団の罠に掛かって水攻めを食らいピンチに陥った際に手を差し伸べる和夫少年の勇ましさは『怪獣マリンコング』から『マリンコングの大逆襲』で成長する和夫少年の姿がそのまま投影されたかの様だった。印象深いのは、Z団基地に居た創造中のマリンコング。人造動物のロボットである事が秘かに主張された1コマであった。

余談だが、同時収録された『巨人ガンさん』が予想を上回る傑作で泣くわこんなん。「どこからきたのかどんななまえかそれはだれもしらない……」と切ない波の音に乗せて突如島に打ち上げられた大男とその大男に心を開くけん太少年との友情を描いた一作で、謎の巨体である事から「ばけもの」と島民から不条理な扱いを受ける中、大男を庇って心を開くけん太はいつしか大男と悲しみや喜びを分かち合う仲に。しかし、けん太少年と大男の間柄が面白く無い島民が再び大男を疎外、止めに入ったけん太が怪我を負ってしまった事に責任を感じた大男はけん太に別れを告げる事も無く島を離れようとするが、大嵐の中、大男を探しに海へ出たけん太が波に呑まれ込んでしまう寸前で大男がけん太を救助。そして大嵐で荒れる海によって危機が迫る島を大男が救おうと自分の身を犠牲にする御話。けん太は、海で亡くなった父と海からやってきたガンさんを重ねて慕っていたのだろうか。最期に大嵐から島を守るガンさんは島への憎しみ以上に島で過ごしたけん太との尊い時間を尊重したに違いない。けん太が屋根でガンさんと月を見ながら幸せを語り合うシーンは余りにも美しかった。

 

ゲボラに引き続いて連載された「少年画報」は、桜井はじめ先生によるコミカライズ。

 

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残念ながら全貌は御目に掛かれず、手元に存在する1960年7月号の付録から。笹川ひろし先生のカラー扉絵も同様に云えるが、マリン=海からの着想なのか扉絵のマリンコングの色はコバルトブルー。しかし、裏表紙の原作マリンコングは緑に着色。どちらにせよ目は爛々と真っ赤に燃えて攻撃的な性質が伺える。漫画の内容は、対マリンコング用に矢田博士が発明した「X電波」の設計図の在処を巡って、和夫少年の父母がZ団の基地に監禁されて危うく殺されそうになったり、矢田博士がX電波の在処を漏らしてしまったり、マリンコングの強力電波の周波数の表を拾ったり、終いには隅田川にマリンコングが突如として姿を現して船を襲ったりと新展開が盛り込まれていて今後の物語の重要点を押さえた内容で「これから面白くなるぞ!」と期待が高まる中幕閉じとなってしまう。

 

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リンコングは怖い。見た目が苦手。いや、正しくは好きなンですけどね。うーん、怖い。まーるい御目目や絶妙な体型に可愛いと勘違いしてしまっては駄目。マリンコングは怖い。先ず、目が非情的だ。破壊を目的として造られたなロボットであるが故の冷たさが無表情な目から感じ得て恐怖心に襲われてしまう。モノクロが産む闇も原因の一つだろう。可愛いとは微塵も思いませんね、怖い。左から、笹川ひろし先生、真ん中、劇団プークによる着ぐるみ、右、桜井はじめ先生。それぞれ独自の雰囲気で孰れも味があって趣深い。比較すると桜井はじめ先生はシャープな筆致で、笹川ひろし先生は滑らかなタッチでマリンコング独特な丸いフォルムを意図的に表現されている様だ。

 

ゲボラとマリンコングの共通点は、海。僕は水爆実験の放射能によって巨大化したヒトデ状のゲボラが結実しなかった意思を海で大暴れするマリンコングが承継した様に思えて他ならない。

 

 【 9/13:追記 】胴体は研究不足で不明ですが、マリンコングの顔は「初代」と「二代目」と2パターン存在する様で、上述の「劇団プークによる着ぐるみ」は第1部で使用された初代物で一般的に御馴染みのマリンコング。(ネット上に存在する動画の造形もコッチですね。)で、二代目の方は写真だけ特撮専門誌の『宇宙船』Vol.18(1984年6月号)で確認出来ました。角や目が鋭く改良されたと云う二代目マリンコングの御尊顔は初代の印象とは一変して、コミカライズ寄りのビジュアルで四白眼ちっくな御目目からは掛け離れた造型。第1部の最終回で矢田博士が発明したX電波によって初代マリンコングが破壊(爆発四散)され、第2部で新たにZ団が製作した二代目マリンコングが登場する訳ですから、話の展開的にも改良は不可欠だったのかも。となると、やはり胴体も初代とは異なるのだろうか。マリンコングの持ち味とも云える丸い目を失った二代目は、独自性に欠けるもののこれはこれで特殊な不安を抱かせる。ちょっと人面獣ぽいよネ。

 

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