これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

少年ブック付録/『怪獣妖怪大行進』

 

御盆過ぎてから東京は肌寒い程に涼しい日が続いて、平成最後の夏に終止符が打たれかかったと云うのに、また猛暑かよ。最近は何だかんだ9月いっぱいまで暑い。夏期の風物詩と云えば、幽霊や怪談、そして妖怪。孰れも恐怖心から来る納涼の意味合いも含むだろうが、やはり御盆の期間に霊界が開くと伝承されている点から一年の中で一番幽霊を身近に感じる期間なのだ。因みに僕は実際に幽霊を見た事が無いので半信半疑だが、絶対にいないとも限らないし、いるかも知れないと不明瞭に捉えていた方がロマンチックで素敵だと思う。きっと僕は幽霊が見えたら嬉しい、それが御先祖様や知っている人なら尚更。でも、死後に対する興味が悪化しちゃうかナ。加えて怪獣も又、僕の中では夏のイメージがあって、今の僕の根源であるウルトラQに出会ったのが2年前の暑い夏の日だったからなのか、好きな怪獣映画の封切りが夏期に集中しているせいか。夏が終われば直ぐにハロウィン。街中に商業戦略のカモが溢れる愉快なイベントの起源も又、霊界の扉が開いて死者の魂が現世に戻って来るだとか、日本の御盆に似ている。幽霊、妖怪、怪獣…例外もあるが、孰れも生きた人間に潜在する心の闇が生み出した産物だ。

 

くだらん前説を失敬、月刊誌「少年ブック」1967年8月号付録『怪獣妖怪大行進』を入手・拝聴致しました。(51年前の今頃、世に出た一作ですネ)

 

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キャスト、スタッフを一切チェックする事無く、パケ買いに陥った逸品。

怪獣やSF・怪奇モノに留まらず多彩なジャンルで活躍した挿絵画家・石原豪人氏が描いた圧倒的な迫力で不気味な闇に潜む艶美な世界に引き摺り込まれた。画面の殆どを占めるフランケンシュタインの顔、それを裂いて今にも声を荒立てそうな狼男の構図が退廃的で、背後の幻獣同士の熱闘も加勢した異形の悪夢に取り憑かれたのであった。引き裂かれたフランケンの左目が此方を伺う怪しげな眼差しが不吉を予感させる。そして裏表紙には、空想上の怪獣(ガッパ、ギララ)と現在上の恐竜(ケラトザウルス、ステゴザウスル)が躍動的な表情で仲良く同居しているではないか。これが飽く迄少年向け月刊誌の付録と云うのだから恐ろしい。

中を開くと目次付き(!)の豪華な構成で「怪獣切手コレクション」、「恐怖の林間学校」(※フォノシートドラマ「怪獣妖怪レコード」に準ずる内容)、「怪獣解剖図鑑」、「怪獣プロレス大会」、「怪獣大戦争」、「日本の妖怪」、「最新肝試し秘密情報~幽霊教室」、「世界の妖怪」全26ページ余さず所狭しと濃縮、娯楽性に富む充実した内容の冊子だ。表紙絵は石原豪人氏だが、冊子の挿絵は怪獣絵師で御馴染みの南村喬之氏と梶田達二氏他、数々の画家の名が伺える。

 

『怪獣妖怪大行進』は、冊子とフォノシート、それにドラマの解説、スタッフとキャストなど簡単に記載された黄色紙の解説用紙1枚が3点セットで完成形だけど、残念ながら用紙は欠品。(シートに関する情報を得るには重要な用紙なので、しつこくま〇だらけで探していたらシート+用紙を発見!しかし、強気な値段を見て断念(爆)) ドラマタイトル『恐怖の林間学校』と題された「怪獣妖怪レコード」の脚本は、山本次郎氏。挿絵を務めた伊藤展安氏が朧気な悪夢を具現化した。例の黄色紙の用紙に「(このレコードは、夜にきかないでください)」と念押しされている様に、畏怖と興奮で寝られなくなるゾと云う暗示がユーモラスに恐怖心を煽る。

 

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ドラマの舞台は、隔絶した山中の林間教室。聴き手を恐怖世界に誘い、案内人としての役割を果たす不気味な声の主は、作中には語られないが死神の設定。「君の心臓」だと啓示された心臓の鼓動音が静かに響き渡り、死神から恐怖の扉の開放と共に死を宣告される。四十度を超す暑さ(!)から来る寝苦しさと異様な気配で目を覚ました生徒が、教師を起こした直後、窓ガラスを割って狼男が来襲。電気が付かない為に暗闇で逃げ回る生徒の前に、数千年前に土深く埋められた地獄に住む妖怪達が異常な暑さで蘇った。挿絵こそ多彩な妖怪が描かれているが、音ではミイラ男と吸血鬼のみを表現、「吸血鬼が今、鋭い爪と二本の長い牙で君の心臓をぐさりと…」(?)と云う死神の台詞からしても死の意識と心臓への異常な執着が主張されている。狼男、ミイラ男、吸血鬼、(他略された妖怪の皆さん)が生徒等を窮地に追いやる一連の迫力は挿絵が凌駕した。現場の緊迫感は声優陣の熱演と演出によって伝わるが、音だけでは情報量が少ない異形者達の表現は、やはり挿絵がストレートに感受出来る。妖怪の襲撃に御手上げ状態の一同の目の前で突如、火山が大爆発。空が真っ赤に燃え広がり、暗闇でしか生きられない妖怪が消失したと同時に、地割れから怪獣(ただの恐竜)が現れた!しかし間もなく火山口から流れ出た溶岩の海に呑まれてしまい…(呆気無い) そして謎のタイミングでいきなり苦しみ出す死神

心臓の鼓動を背景に「その君の心臓の音を止めてくれ!助けてくれ、助けれくれー!」と云う断末魔も支離滅裂。火山噴火の眩しい光はへっちゃらだけど、溶岩の海には敵わなかったて解釈でおk?死神は子供の心臓の音を止めるミッション中だったのだろうか。(え?)"心臓の音を止めて=死ね"って暗喩のセンスが眩しい。

因みに出演者は全員声優で、クレジットに準するならば死神役・小林清志氏、男教師役・篠原大作氏、女教師役・麻生みつ子氏、生徒役・野村道子氏だが、カネゴンの声優の麻生みつ子氏は教師と云うか、生徒側の声に聞こえるンだけど(汗) 女教師のチクチク鼓膜に刺さるヒステリックな悲鳴と泣声が印象的。何と云っても、声だけで風貌が頭に浮かんで来る死神の独特な低声と崇高な態度と雰囲気が卓抜。このドラマの主役は、紛れも無く子供の心臓を求め彷徨った死神様。

 

おまけ、怪獣プロレス大会。レフェリーはウルトラマン。(マジかよ)

主に怪獣やSFの画で活躍した岡崎甫雄氏の挿絵。対戦者はレッドキングとブルコングで「ウルトラマン」と「キャプテンウルトラ」、出演作が異なり共通点と云えば、放送枠が同じTBSの武田アワー、身長が同じコンビですね。プロレスは僕にとって未知なる世界だが、力技ならレッドキングの方が得意そうなのに、ブルコングが優勢キメてる。ブルコングの余裕を感じさせる表情と、レッドキングの焦燥感に翻弄された表情、本業より活気に満ちたウルトラマンが趣深い。

 

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