これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

映画『曖・昧・Me』(1990年 東宝)

 

佐藤闘介監督、映画『曖・昧・Me』の感想です。

 

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― 医者の娘であり、福岡の名門女子高校に通う17歳の阿久津薫子(裕木奈江氏)は、曖昧な日常の中で漠然と将来に対する不安を抱いていた。

線路で出会った同い年の理佳子(森川美沙緒氏)は、勤務先であるブティックの店長・久藤(榎木孝明氏)と不倫関係にある。

久藤を愛する余りに妻との離婚を渇望する理佳子と、一向に聞き入れない久藤を目の当たりにした薫子は、理佳子の気持ちを理解する事も出来ず、また自身が恋愛経験の無い処女である事に対して重苦する。

そんな薫子を教育実習生の園城寺夏美(森尾由美氏)は、自身の会員制売春クラブに誘い、"アルバイト"として見知らぬ男と初夜を果たした薫子は平然としていた。

或る日、予備校で偶然再会した小学校の同級生だった高橋浩(早川亮氏)と付き合う事になるのだが……

 

本作は、新人映画シナリオコンクールに入選した伊藤尚子氏のオリジナル脚本を佐藤闘介様が監督を務めた青春映画。

少女期の絶頂と結末と云う、一瞬しか与えられない奇跡の如く最高に儚く尊い一時が濃縮され、悩める一人の純情乙女が大人の女性として成長していく過程を描いた作品である。

 

本格映画デビュー作と云う裕木奈江氏演じる薫子の瑞々しい風貌、独特な柔らかい空気感、まるで純粋無垢を擬人化した様な清楚さが誘う、美しくも残酷な世界。

自殺未遂、少女売春、妊娠と云ったハードな内容に関わらず、薫子は運命を目の前に一切の動揺を見せない。

それどころか、目の前の運命の本質を見抜こうと常に探求心に満ちている様に見えた。

反面、自分の周りに起こる事柄でさえ無関心である様にも見える。

自殺未遂をした薫子に対して理佳子が「あんた、本気で死のうと思ったの?」と云うのに対して「明日物理のテストがあるからかな?」と笑みをこぼす発言は、将来に対して希望も絶望も抱いていない薫子の心境が伺える。

この時、薫子にとって生死は然程重要なものではなかったのだろう。と云っても、死んでしまえば元も子もないが、それ以上に薫子は繰り返される日常に退屈していたのだ。

そして、薫子から醸し出された無防備な色気に震えた。

薫子を包む危険な色気は、前半に比べて後半発揮されている様に思う。

親のへそくりを盗む序盤のシーン(ノーブラ?)と、初夜後に事務所で口紅を先生に塗ってもらったシーンは両方鏡を見つめる場面だが、自身に対する目線の変貌が明白。

即ち、処女喪失がボーダーラインとなっているのだろう。

少女らしからぬ…いや、少女ならではであろう絶妙に危うい色気に、私は自分が女である事も忘れてすっかり釘付けとなってしまった。

見知らぬ男に抱かれた時の薫子の表情は定期的に拝みたい

 

毎日退屈な日々を過ごしながらも切り離す事の出来ない将来の不安を、男が出来たら、処女でなくなれば打破出来ると淡い期待を抱いていた薫子は、恋やセックスにロマンを抱いていた。

「ちょっとガッカリしたけど、ちょっと安心した」と云うセックスに対する台詞は、憧憬への失望と、未経験による焦りの浄化を兼ね合わせた、実に至妙な言い回しだ。

薫子は、硝子の様な細やかな輝きを魅せては頑なに核心を見せない魅惑的な少女である。

 

特筆すべきは、まるで魂が絡み合う様な、優美で危険な薫子と高橋のピアノのシーン。

 

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このリア充は爆発しなくてもいいよ( ^ω^ )

 

何とも言えない口づけ。台詞は無い。ビゼー作曲「アルルの女」より「メヌエット」の音色よって、温かく優しい時間が流れている。

あと、スクラップ工場でのアダムの逸話をする薫子は、脳が刺激に耐えられず理性を失った。(真顔)

薫子が売春を行った過去を理佳子が高橋にチクってから関係が悪化、妊娠で関係を絶つ訳だが、恋情もそうだけど、友情も曖昧だったね

最終的に薫子は、"高橋の子供ではない"と絶対嘘曖昧な言葉を残して一人出産するが、冒頭で「男が欲しいな。自分の夢に限界を感じた時に、代わりに夢を託せるような…」と云う台詞に重ねると、男ではないが、薫子は自分の赤ちゃんに夢を託したのかも知れない。

でも、赤ん坊を抱きながらも本を片手に医薬品を発し勉学に励む姿を見ると、将来は看護師…?なんて、輝かしい未来が垣間見える。

 

子供の頃に夢見た大人の世界は、想像していたよりもずっと退屈でつまらない。
そればかりか、時間が経つにつれて将来への漠然とした不安が募り、いつの間にか視野が窮屈になっている。

本質なんて掴んだところでクソつまらない現実を突きつけられるだけかも知れない。

"曖昧"に生きるのも悪くないかもね。

 

余談:窓から身を乗り出して自殺を仄めかす場面や高橋の愛犬の死体など、作中に点在するメメントモリに鳥肌でした。

 

 

 

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