これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

映画「黒い画集 ある遭難」(1961年 東宝)

 

杉江敏男監督、映画「黒い画集 ある遭難」の感想です。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20171209013433p:plain

 

ゲスひさやんキタ――(゚∀゚)――!!

 

原作は、松本清張の短編小説集「黒い画集」より『遭難』。石井輝男氏が脚色を担当。

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」「黒い画集 第二話 寒流」と同じく、黒い画集シリーズの二作目だ。

小説は未読の身で恐縮だが、映画の黒い画集シリーズはいずれも不倫が招く不幸を描いている。(語弊)

 

鹿島槍登山へ向かった銀行支店長代理・江田(伊藤久哉様)、浦橋(和田孝氏)、岩瀬(児玉清氏)の三人が遭難、岩瀬は黒部渓谷で死亡した。

事故だと思われていた岩瀬の死に、岩瀬の姉・真佐子(香川京子氏)は素朴な疑問を抱く。"登山初心者の浦橋が無事で、登山経験者の岩瀬が…何故?"

浦橋が、遭難の詳細を追悼文として執筆した雑誌「岳人」によって不可解な点が浮上。

遂に真佐子は、江田を案内人に山のエキスパートである従兄の槙田(土屋嘉男氏)と岩瀬の遭難地点に花を捧げて欲しいと依頼をし、遭難の真相に迫るのだが……

 

正直、鑑賞前から絶対ひやさんが黒幕だろうと薄々勘付いていたのは言う迄も無い。

不穏な音調と共に胸を劈く場面で幕開けする本作は、雑誌「岳人」に沿う浦橋のモノローグによって遭難の終始が展開されていく見事な構成だ。

「IWASE」と名前が入ったリュックを主張する演出に胸が痛みながらも好印象。

浦橋視点の証言は、全て事実なのだが、あくまで岩瀬の死は"不可抗力による事故"として表面的な体験談に過ぎない。

登山経験者である上、体調万全で挑んだ筈の登山で岩瀬が何故、どう見ても登山中止して帰った方がいいレベルの体調不良を起こしている点についての追及が不十分である。

今まで自分が観ていた映像は、江田が読んでいる「岳人」だと察知する場面、銀行支店での江田と浦橋の岩瀬に対して無頓着な態度によって、"事故"から"事件"へと明確に物語が一変している様に思う。

 

何と言っても、突然現れる土屋嘉男氏の存在感たるや…!

突然の真佐子の呼び出しに動揺している束の間、30分だけと言いつつ従兄を呼んで食事会が始まるなんて!し、しかも遭難現場に行きたいだとー!?と内心ビクビクしちゃってる江田を秀逸に好演なさるひさやんが素晴らし過ぎる。

この場面のひさやん、どこを取っても憂いを帯びた顔付きで大変美しい。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20171209031733p:plain

 

後半の江田と槙田の鹿島槍登山は、槙田の痛快な推理によって、次第に余裕が無くなっていく江田がとうとう「貴方とはもう話したくありません」って言い放った数分後に、「面白そうなお話ですね、ゆっくり伺いましょう」って、さらっとツンデレ発動すんのやめてくれ

そして完璧な槙田の推理のシメに発言される「期待性の積み重ねは偶然ではなく、もう明瞭な作為ですよ」がなんかよく解んないけどカッコイイ!そのあとそっと耳を塞ぐ江田さんにも、萌え…

問題はその後だ。こいつらピッケルで殺り合うんじゃねーか!?ってちょっとでも期待させる演出がズルい。

ちなみに…、殺り合ってる風のスチール写真は存在する。

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20171209023344p:plain

 

土屋嘉男 対 伊藤久哉 (観たい)

 

ラストを飾る、北俣本谷の壁の場面は物理的にも精神的にも切羽詰まった状況で心拍数が狂う思いをしたが、槙田の足場をピッケルで破壊しながら、岩瀬殺害計画の動機を告白する江田のゲスっぷりに大興奮。しかも動機が、妻と岩瀬の姦通って………(好き)

つー事は、郷里に遊びに行ってる(って事になってる)妻も江田が監禁してるのか、もう既に殺害済みなのか。

前々の話だが、江田邸での井戸端会議で異常に仲良しな妻と岩瀬を何食わぬ顔で見て見ぬふりをする江田さんの気持ちを考えると……(´;ω;`)

妻と岩瀬に対しては裏切りや憎悪の気持ちでの殺害として動機が成り立つが、槙田の殺害は完全にとばっちりで腑に落ちない。ただ、ひさやんの暗黒微笑は最高でした。

「貴方の死体が雪の下から上がるのは、夏頃でしょうね~」とドヤ顔しときながら、雪崩で死んだのは笑った。真佐子のシメも笑った。

 

 

 

黒い画集 ある遭難

黒い画集 ある遭難

 
黒い画集 ある遭難 [DVD]

黒い画集 ある遭難 [DVD]