これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画「母さんお化けを生まないで」白川まり奈

 

1988年にひばり書房より発行された白川まり奈氏の「母さんお化けを生まないで」を入手・読了しました。

 

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プレミア値で躊躇していた本書だが、曙出版「侵略円盤キノコンガ」が面白かったので、軽率に買ってしまったよ\(^o^)/

表紙に出ている目が飛び出た奇形人間をお母さんが生んじゃった!的な内容かと思ったら、まんまと裏切られた。

いや、この目が飛び出てる子も出てるのだが、基地外医者のコレクションの一部で大して物語に関与してないんだよ(爆)

 

物語の主人公で在る骨董店の娘・牧未来は、雛人形の即売会で先祖を調べて系図を作る仕事を請け負う系図屋・壇園絵との出会いが動因で自分の先祖に興味を持ち始める。

汗の代わりに血が噴き出る謎の奇病、変貌してしまった母親、隠し事をする祖父。

自身を取り巻く環境に疑心暗鬼する未来は、遂に"近付いてはならない"と警告されていた禁断の蔵で半人半獣の怪物、件(くだん)を目撃してしまい………

 

何が怖いって、母さんが夜な夜な一人で食ってたあれは何だったんだ

孵化前の鳥だろうか。あんなの主食にしているから件が生まれてしまうのか。

尋常じゃ無い摂取量と卵から無理矢理引っ張り出されたような悍ましい姿の鳥が見るに堪えない。

牧家の先祖が井伊直弼に仕えていた陰陽師である事と、災厄の前兆と言われる半人半牛の姿をした妖怪・件(くだん)のリンクが見事。

そして、妖怪資料と言っても過言では無い程に件(くだん)の歴史が丁寧且つ緻密に描かれている。

蔵内と香村先生コレクションのフリークは、不気味の中に愛嬌が伺えた。白川まり奈氏の妖怪への愛情でしょうか。

 

何と言っても、墓地で生まれた未来が件(くだん)の双子であり、首を挿げ替えて片方は人間に、片方は牛に整形する手術を行う一連の描写は本作の見物。

墓地で産み落とされた奇怪な双子が雨に打たれ哀傷に満ちた哀しい画、捥ぎ取られた牛と人間の生首、半人半獣の絶望的な目は傑作の一言に尽きる。

 

未来を取り巻く家系の謎と解明が語られた前半と異なり、後半は件(くだん)で金儲けしようと目論む大人達の醜悪と未来の逃走劇に緊張感が高まる。

化け物なんか殺しちまえ派と金になるから殺すな派、どちらも無神経な言い分であるが残念ながら奇形達への好奇な感情から生まれる人間の醜い一面なのかも知れない。

家族を無惨に皆殺しされた未来が、ローラースケートを巧みに熟す勇ましい描写も然る事ながら、件(くだん)の妹を最後まで守ろうとする姉妹愛が対比する様に美しく思えた。

 

ラスト、発狂したジュンちゃんのトラックにひかれてしまった未来は生きているんだと思う。本人が言ってるのでそう思いたい。というより生まれ変わったって表現の方が近い?

そしてこれから先に起こる災厄の予言を果たして死んでいくだろう。

(だから主人公は未来と書いて「みき」って読むのかな~)

結果として最後は、血が流れている限り人間は孤独じゃないというメッセージを感じた自分でありましたとさ。