これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画「侵略円盤キノコンガ」白川まり奈

 

曙出版より発行された白川まり奈氏の「侵略円盤キノコンガ」(1976年)、「どんづる円盤」(1978年)両作の復刻本として1998年に太田出版から刊行した『侵略円盤キノコンガ』を入手・読了しました。

 

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白川まり奈とは、少女漫画家の様な雰囲気を醸し出す名前からは想像がつかない、妖怪研究家、オカルト研究家、画家など様々な肩書を持つ怪奇・ホラー漫画家である。

以前、何と無く立ち寄ったMだらけで母さんお化けを生まないでと言う強烈且つ何やら只事では無いタイトルにイケナイ好奇心を抱いた事があった。その作者こそ、白川まり奈氏だった。

プレミア値で母さんお化けを(以下略)は購入に至らなかったが、手始めに…と手にした本が「侵略円盤キノコンガ」。

 

終末SFとして描かれた「侵略円盤キノコンガ」は、主人公の青木少年と佐田先生がハイキング先の姥が岳で謎の円盤に遭遇する場面から始まる。

堕落した円盤の元へ駆けつけた調査隊がキノコによって全滅する怪事件が発生。

宇宙から来たキノコが人間に寄生し、肉体から精神までの何もかも支配したのだった。

宇宙キノコの寄生は人間に留まらず様々な動物へと寄生し徐々に広がりを見せ、遂に佐田先生、家族がキノコ人間と化した時、必死の抵抗も虚しく青木少年自身の体内にもキノコの胞子が浸食していき……

白川まり奈氏を語る上で欠かせないのが、妖怪を始め怪談・SF資料の研究家としての一面。

冒頭で迫る宇宙と未確認飛行物体の奇譚がSF世界へと誘ったかと思えば、不自然に入り混じったキノコ怪異談の数々が不気味なタッチのイラストを添えて登場している。

SFと怪談―…この絶妙で危険なマッチングが怪奇性を増幅させているのか否や、円盤や宇宙人に対する恐怖心が気付かぬ内にキノコへ転向しているではないか!

 

宇宙人や円盤の存在を頑なに秘する白国博士は、平和の願いを強く語っていたが、青木少年と佐田先生を監禁したり、結局は円盤や宇宙人を独り占めにしたかったんじゃないかと疑ってしまった。

そこで、円盤からの攻撃で瀕死になった白国博士に「ざまをみろ」と吐く佐田先生が、鬱憤を代弁をしてくれた様にも思えて清々しい。

そして、青木少年が宇宙キノコの胞子に寄生してしまう隕石襲撃のシーンが見事。

少年の見てはいけないけど、見たいジレンマに苦悩し、結局見て後悔すると言う一連が青春のワンカットの様で好きなのだ。

それを眼帯でカッコよく誤魔化す流れに対しても、未来に対して希望を持っている少年の強く勇ましい意思を感じ受けた。

 

クライマックスは、絶望的な解放感に襲われる。

宇宙キノコに浸食された家族を不憫に思い、苦渋の決断で家ごと燃やすも願い叶わずほぼキノコな家族は青木少年に襲い掛かる始末。

そして一部始終、ずっと一緒に戦ってきた佐田先生がキノコンガになる=煩わしい世の中とおさらば出来る事に細やかな喜びを感じながら土へ潜る場面は恐怖を感じつつも、羨望してしまう自分が怖い。

誰もいなくなってしまった雨の中で描かれたキノコンガの怪しい存在感、じっと様子を見つめる青木少年の強い意思が次第に揺れ始める繊細な描写が極妙だ。

そして最後に青木少年が静かに語るのは紛れもなく真実なのが皮肉。

「植物だけの世界になったら戦争もなくなるし公害もなくなるだろう」

悲しいハッピーエンドだな。地球で一番有害なのは、人間だったのだ。

 

それにしてもキノコンガのデザイン、なかなか好きです。

如何にもキノコが寄生してる感があって、完全に怪物で無くて人間の面影が残っている方が不気味で良い。人体を取り巻く根の様な部分は血管を連想。

言うまでも無く、眼帯したキノコがブランコに乗って月を眺めるシーンは平和の前触れとでも言うのでしょうか、芸術の域に達している。こうなりゃ人間って無力だなァ。

 

併録「どんづる円盤」に関しては、人間への皮肉といった点ではキノコンガと同様のテーマが伺えるが、侵略者の設定が複雑でぶっ飛んでいる。

将来人類は公害などで生じた食糧危機によってタイムマシンを悪用(?)し、共食いをした上で鬼になって(!?)、ゴキブリの時代がやって来る!人類への警告ストーリー。

主人公が恋心を抱いた女の子がゴキブリの餌食になって死ぬ残酷な描写が何と言っても傑作。御口の中までびっしりゴキブリでぎゅうぎゅうですから…。

ラストの「地球という飼育箱」のフレーズにもこりゃまた圧巻。

我々人類はこういったアイロニーを真摯に受け止め、銘肝せねばなりません。

 

 

 

侵略円盤キノコンガ (QJマンガ選書 (10))

侵略円盤キノコンガ (QJマンガ選書 (10))