某A氏の独白帳(仮)

独断と偏見で意見具申。空想特撮シリーズを始めとした特撮作品の鑑賞記録など。ネタバレ含。

映画「みな殺しの霊歌」(1968年 松竹)

 

加藤泰監督、映画「みな殺しの霊歌」の感想です。

 

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全国指名手配中の川島(佐藤允様)が心を通わせる少年を陵辱して自殺に追い込んだ5人の女性を次々に強姦殺害していく復讐劇。

 

工事現場で働き荒んだ逃亡生活を送っていた川島は、出身地が同じ北海道と言うクリーニング店で働く16歳の少年、清の明るく誠実な純粋さに心を動かされ親しくなっていた。

或る日、仕事で孝子(應蘭芳氏)部屋に訪れた清は偶然、有閑マダム5人がピンク映画上映会の最中に遭遇してしまう。

欲情の対象にされた清はマダム達に性的虐待を受け…。

清は川島だけに前日に起こった内情を告白した後、ショックの余り飛び降り自殺。

清を汚し自決に追い込んだマダム達への怒りと復讐心に支配された川島は、マダム達全員の処刑を企む。

最初の標的で有る孝子から清をレイプした共犯者を強引に聞き出した後、強姦惨殺。

その後も次々とマダム達を誘惑する振りをして殺害していくのだが………

 

感想:

童貞の僕には早過ぎた映画

序盤の快楽的殺人からもう観るの辞めとこうかと思ったのだが無駄の無い精緻な手順と撮影手法が実にスタイリッシュでシャープな映像美を生み出している。

喘ぎ声と悲鳴の間の様な声で泣く煽情的な状況で有閑マダムが麻雀を愉しむ下品な姿が重なる演出も然る事ながら、川島が水で流した血、そしてタイトル、流れるメロディー…ただ只管に美しい。

 

壮絶な暴行殺人に佐藤允様の憤慨に満ちた鋭い眼光も加わって申し分の無い幕開けの本作は、有閑マダムへの復讐と同時に行きつけの食堂で働く春子(倍賞千恵子氏)へ想いを寄せる川島の恋愛ドラマが秀逸。

と言うのも、川島の復讐動機がイマイチ不承知でならない。

少年を汚した罪は死刑同等

という点は個人的に十分理解出来る事柄だが、出身地が同じと言う以外身内でも何でも無い少年(名前ぐらいは聞いとけよ)の為に自分の手を汚してまで殺人を犯す理由が覚束無いままだ。

終いには有閑マダムに対して「一番綺麗なものを目茶目茶に壊しやがって!…お前達にその権利が何処に有る!?」と激おこな川島だが、君がマダムを強姦殺害する権利も無かろう。

しかも、同じ目に合わせてやろうと行った(?)強姦を積極的に行ってから殺人するのは、自分には理解不能。ただ、巧みに誘惑する川島には萌えた。

 

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こりゃホイホイついてっちゃうよね~(軽率)

 

2人目の標的となった橋本圭子(中原早苗氏)とのフランクな描写は、衝撃と刺激が強くて目を塞いでしまったのは内緒だ。

そんな訳で、川島も"少年期に有閑マダムに強姦されて恨みを持っていた"とか過去の描写が有れば解釈も変わってたと思う。

 

川島と春子には哀しくも"殺人者"という共通点があった。

故に、復讐劇に隠れて見失いそうな殺人者の孤独や苦悩を提唱している作品にも思える。

春子の秘密を知った川島の心情は徐々に変化していき、最後に殺害を行った富永京子(河村有紀氏)に対しては「今更お前を殺したって…」と弱音を吐いて殺人を後悔する様な描写が印象深い。

後悔と言えば、最期に春子に伝えたかった事を伝えずに清と同じ場所で投身自殺を行う直前も過去を振り返る台詞が胸に刺さる。 

…人間の行き場の無い感情の慣れ果てが殺意に発展するのはなんだか解る気もするなァ。(解るな

何より、過激で一匹狼でチャーミングな一面も魅せるアダルトな佐藤允様の熱演が見事でありました。

 

余談、「春ちゃん」呼びする川島が最高。あの風貌で「ちゃん」呼びはズルい。

 

 

 

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