某A氏の独白帳(仮)

独断と偏見で意見具申。空想特撮シリーズを始めとした特撮作品の鑑賞記録など。ネタバレ含。

映画「不良少年」(1956年 東宝)

 

ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞。

谷口千吉監督、映画「不良少年」の感想です。

 

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西村滋氏「笑わない青春の記」原作を菊島隆三氏と西島大氏が共同脚色した異色作。

舞台は、戦災孤児達が希望の無い青春を送る少年院。

教師の西田(菅原謙二氏)は、自らも少年院出身の指導員として勤務している。

複雑な環境で社会に見放された子供達を一人前に社会へ送り出そうと更生に尽くす西田だったが、一向に反抗する生徒に苦悩する日々を送っていた。

そんな或る日、思師の石坂(笠智衆氏)の提案で自信を取戻すべく更生した教え子の元を次々に訪ねるのだが………

 

冒頭から鼓膜を揺らす不穏で重圧な曲が、絶望的な少年達の将来と共に、背景にある戦後のシビアな状況を想起させる。

予想外だったのは、少年院の不良少年達より、少年等と接する西田の葛藤が強調されていた点だ。

現在受け持っている少年達との関係、社会に更生した教え子達の状況、人情の薄い同僚や世間の態度といった冷酷な様態が西田の視点から描かれている。

教育中の少年達に関しては、俳優陣のせいで不良かわいいよ不良と心穏やかに鑑賞出来たのだが、笑えないのは社会へ出た教え子の方で、自信を取り戻す為に尋ねたにも関わらず、平気で約束をすっ呆け裏切るわ、女共は売春婦に仕上がってるわで失望する西田の精神破綻は痛切に感じた。

特に、新太(太刀川寛氏)と敏子(中田康子氏)の夫婦は強烈だったが、夜の営みに対して純愛と情事の差が皆無で有る新太の発言は、的を射ている様な気もする。

貞操観念が荒廃していても夫婦間で納得しているのであれば、問題無いという思考が異常と言えば異常だが、社会へ出て現実と向き合った夫婦なりの答えなのではと思う。

銀子(青山京子氏)も同様、売春婦に成らざるを得ない環境下に葬られた社会の被害者に映って仕方が無い。

しかし、だ。教え子に欲情しちゃマズイだろうがよ

そりゃ流石のふみ子(安西郷子氏)もドン引きで逃げてまうわよ

西田は感情的に手を出してしまったにも関わらず、銀子が西田に淡い恋心を抱いていたのは興味深い。札を渡す西田を拒む銀子の感情を踏みにじる様な鈍感西田の態度は皮肉過ぎるだろう。良い子のみんなは真似しちゃダメだよ。

そういや役名も俳優名も忘却したのだが(おい)優等生だと最初に送り出されていた少年は酷使からの過労自殺なのだろうか、隠喩的な表現がショッキング…

 

西田が施設を脱走した兎に角西田に淡を舐めさせたい光一(久保明氏)、善太(江原達怡様)、一郎(佐藤允様)等を体当たりで説得しようと泥まみれに奮闘するクライマックスの痛ましい迫力は、俳優陣の熱演も相俟って壮絶だ。西田が弱いのは黙っておこう

だが、光一の湧き上がる感情が不可解なまま展開した一同のデレっぷりには拍子抜けした。善太殴られ過ぎだよ

 

人道問題、労働問題、更生の困難といった、現代にも通用する論点を提起している為か関心が絶えない一作だった。

戦後の荒廃した人間を描きつつも、薄らと反戦思想を感じたのは自分だけだろうか。

何れにせよ、佐藤允様と江原達怡様の憎たらしくも愛らしい明らかに大人な不良少年役を拝めて満足。(鑑賞動機)

佐藤允様の爆発的な存在感は相も変わらず、御茶目な笑みを振り撒き過ぎててただの天使。

江原達怡様のヤンチィなスカジャン姿は珍しい。毒舌と噓泣きで萌え死んだのは内緒だゾ。

 

余談、後席のおじ様が佐藤になっちゃってるよ」ってスタッフロールの誤字を声出してツッコんでてワロタ。なべぶた要らん。