某A氏の独白帳(仮)

独断と偏見で意見具申。空想特撮シリーズを始めとした特撮作品の鑑賞記録など。ネタバレ含。

映画「死ぬにはまだ早い」(1969年 東宝)

 

ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞。

西村潔監督、映画「死ぬにはまだ早い」の感想です。 

 

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身が引き締まる程に恐怖と緊迫感に満ちた密室サスペンス。

困窮状態に陥った人間が徐々に他人を疑心暗鬼し、醜い本性やエゴを露にする展開への焦燥感と来たら胸を抉られる様で、軽く精神に異常を来す程だぞ

 

本作の主演である黒沢年男氏と言えば、自分はバラエティ番組に出ている髭面のオジサン(言葉を選ばず済みません)というイメージが強く、ウルトラQ「海底原人ラゴン」ではゲスト出演しているもワンシーンのみで明白に拝見したのは今回が初めてとなる。

自身の恋人を殺害した直後だと自白し、次に彼女の愛人で有る男を殺害しにドライブインにやってきた中二病サイコパス思考で暴悪な男を好演。

(正直、この手の役柄は佐藤允様を推薦したいが内緒にして置こうっと)

目で人を殺すといった肩書が適当な程、眼光が刃の様に鋭く狂気に満ちていた風貌は不覚にもゾクゾクさせられた。

想像外だったのは、自ら砲弾した無罪の警官が瀕死で悶え苦しむ様子を目の当たりにし、恐怖に震え怯えていた姿である。死に対して怯えていたのか、恋人を殺害した事を思い出してしまったのか……絶妙な表情で見入ってしまったのは言うまでも無い。

男の異常で攻撃的な行為の数々は「嫌だと言った事を無理矢理親父にやらされた」と一瞬だけ語られた過去の悲劇を解消出来ないまま成長し、他者に八つ当たりしているようだった。(殺害したと言う恋人の詳細も不明なままだし、彼の過去は余り描かれなかったばかりに非常に興味深い。)

これは自分の聴力がいけないと思うが、度々何言ってるか聞き取れなかった。

 

上記の男以外にも、巻き込まれたドライブインの客等の人物設定や心理描写は至妙だ。 

特筆すべきは、元レーサーの松岡(高橋幸治氏)と人妻の弓子(緑魔子氏)二人の関係性。

人質に銃を向けられた弓子御構い無しに行動する松岡の"命を懸ける程の間柄では無く、ただの不倫関係"だと言わんばかりの態度は非常に感慨深い。

暴悪な男が銃を放たないと言う自信が有ったのか、それとも弓子が死んでも構わないというのか…

確かに二人は一生の愛を誓い合った夫婦でも無い、一時の情事を愉しむだけの間柄なのだ。

極限状態の中、二人の間にも疑心暗鬼が芽生え始めていたにも関わらず、淡々と繰り広げられた会話が印象に残っている。

中でも注目したいのは、暴悪な男に対しての会話で「恋人を殺したのだから、他人の私達を殺すなんてもっと容易い」と言う弓子に対して「(恋人を)愛していたからこそ、殺したのかも知れないよ」と言う松岡だ。

愛故の狂気という事だろう、明確に語られていない比喩的な表現は本作で多々見られた。

それにしても松岡はずっとチベットスナギツネみたいな顔してたな?

 

追い詰められた男の暴動は、新婚の夫(江原達怡氏)の前で妻(田村奈巳氏)と爺ちゃん医者(若宮大佑氏)をレイプさせたり、(下半身は未遂に終わったが)弓子を全裸にさせたりと、目のやり場に困ったところで、まさかの展開と皮肉エンドの余韻が重い。

騒動の後にやってきた射殺される筈だった「ついてる奴」とマスターの少しの茶番には事件解決の安堵も踏まえ、思わず笑いが漏れた。

そして、密室起きた出来事の数々を恰も何事も無かったかの様に倦怠感漂う松岡と弓子の心情は語られる事も無く……

 

今回鑑賞の動機は、江原達怡様と伊藤久哉様の御出演から。

江原様はレイプを見せ付けられヒステリックになり危うく殺人まで犯しかける危険な役柄で個人的に美味しかった。妻に一途で殺人鬼に反抗する姿勢とか軽率に惚れたよね。

そして、ゲス久哉ん(怒られろ)を拝めるかと思ったらまさかの刑事役でズコーw