某A氏の独白帳(仮)

独断と偏見で意見具申。主にゴジラ、空想特撮シリーズ等、特撮作品の鑑賞記録。他、色々と。

映画「惡の愉しさ」(1954年 東映)

 

前日、ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞。

千葉泰樹監督「惡の愉しさ」の感想です。

 

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本作は、石川達三氏の同名小説を猪俣勝人氏が脚色を務めたサスペンス映画である。

小説は未読で申し訳御座居ませんが、面白かったから原作も気に成るぞこれは…

 

主役である中根(伊藤久哉氏)は、妻である有貴子(杉葉子氏)と生まれたばかりの一児と暮らす並大抵なサラリーマン。ギャンブルと女癖が悪いようだがな

ただ実際は、社会に対して歪んだ感情を抱いており平凡なサラリーマンである事は偽りの演技に過ぎなかった。

表面には出さずとも、冷静な計算力と巧みな口実で密かに他者を自在に操る。

8千円窃取された同僚は金にルーズ過ぎる気もするが、以前一度結ばれた事務員の康代(久我美子氏)が結婚する事を知ると、過去の関係を明かそうとするが、康代が中根に手切金を渡し事なきを得る。

だが中根は諦めない。以後、趣味でも無い女と関係を築いておきながらも、兎に角康代と寝たいが恋しいのだ。

その間に妻とは名だけの有貴子とブローカーである脇坂(森雅之氏)の不倫を知り、逆上。両者が内密に旅行中、脇坂夫人の征服を謀るが失敗に終わっている。

その頃、康代の夫が会社の金に手を出し使い込んでギャンブルに没頭している話題が浮上し、康代は中根に金の工面を頼み応じる事となるが、中根に用意出来る金額では無かった。だが中根は諦めない。とにかく康代と寝たいのだ。

遂に金の為に、脇坂の殺害を決行する。アリバイ工作も行い徹底した犯行に思われたが、目撃者の出現によって暴かれてしまう。

一向に御得意の口実で対抗する中根だったが、会社、有貴子、康代全てを失った彼は全てを自白した後に、自ら飛び降り命を絶つ……。

 

うん、とにかく伊藤久哉様が最高だった。

非常に好演なさっておられた。何を考えているか読み取れない表情、不穏な笑みと目、そして一途(じゃねえな)に愛し求めた康代に対して向ける健気な姿勢に萌え〜。社会に対して絶望視しているサラリーマンって結構そこら中にいるというか、生々しい設定に思えた。てか、現代でも通用してるのが怖いんスわ。

記憶が曖昧で恐縮なのですが、印象深い中根のモノローグって康代さんと対面してる場面でありましたっけ。あまり印象に無くて、モノローグの無い中根の内部の感情ってどうなっていらしたのか。康代さんに対してだけは、純粋な気持ちで向き合っていたという事だろうか?

特に自白の場面は興味深い内容が濃密に詰まっており、見所である。

「犯罪の根本は、そうせざるを得ない現代社会に問題があるのではないか」痛烈に響いた内容の一つだ。

そして、面会で8千円窃取された同僚が解雇通知書を渡した際に、山根を気遣う態度を見せるがそういった良心に対しても一方的に軽蔑し侮辱としか捉えられない感性を持つ彼は、とうとう救いようがないようにも思えた。

 

康代さんもあそこまで気丈でクールだともはや清々しい。中根さんはM男なのかな?

最後まで中根の口実に微動だにしなかった強者康代さんだったが、金の事なら仕方ないと体を許す場面は非常に冷たくただただ虚しい場面として印象に残る。

聖書一冊送り付けるとかめっちゃカッコイイ…

 

ラストは衝撃の自殺オチでしたが、衝撃と爽快が交わり良い意味で余韻の悪い幕閉じ。

美しい山根の死に顔を背景に語られる生と死に対しての自問自答が胸に沁みて痛い。

歪んでいたのは中根だったのか、社会だったのか......