これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

コダマプレス/『アマゾンの悪魔の山』

 

コダマプレスの『ミクロ人間』に続く「コダマぼうけんシリーズ」の後編、『アマゾンの悪魔の山』に関して。品番から推測して1966年発行でしょうか。シリーズ作の一環ですが、前者は空想科学のSF編、後者は秘境冒険編と、両作の間に関連性は無い。全く異なる世界観だが、主人公の少年が危険を顧みず父親のピンチを救出する展開は、共通して描かれている。(パパ思いのイイ子ばかりだなあ) 前提として原作があった『ミクロ人間』とは一変して、福本和也先生によるオリジナル脚本だそうで、挿絵は萩原孝二先生。劇画タッチで写実的な絵師です。結論から述べると、魔の山とは、アフリカの洞窟で発見された大量のウラニウムに対するメタファー。作中に怪獣や宇宙人は登場しないが、ある種それ以上に惨悽な原爆と云う怪物が人間を翻弄する。舞台は、南米アマゾンのジャングル地帯。動物学者である父の訃報を聞いたまもる少年は、真実を確かめる為、父を求めて日本からアマゾンの地へ向かった。町で出会った土人のジョン少年と共に、ジャングルの奥地を目指した。草を分け、川を渡って、広い草原に辿り着いた二人は、岩陰に父らしき人間の姿を目撃。思わず父を呼ぶまもるの声の元に、突如弾丸が撃たれた。攻撃に不審がりながらも、まもるとジョンは父の手掛かりの為に岩陰にいた人間の後を追跡。危険な崖山の上に登ろうとした瞬間、突然ジョン目掛けて岩が落下してきた。まもるは、岩に足を挟まれて身動き出来なくなったジョンを救助して抱えながら山を越えた。暫く進むと、滝があった。岩に挟まれた衝撃で足が痛んできたジョンを気遣いながら、休憩をしようとした瞬間、再び銃声が轟く。銃声と共に体がよろめいたまもるは、水飛沫を上げる滝の底へと落ちてしまった。その様子を小高い岩陰から見詰る一人の男がいた。まもるの父の助手、菊池であった。滝底に落ちて死んだと思われたまもるは、幸い、滝の途中で木に引っ掛かり、土人の娘に助けられた。一方、滝へ落下したまもるを探していたジョンは、偶然菊池を見つけて追跡。しかし、逆手に取った菊池の待ち伏せによって逆に捕まって洞窟に放り込まれてしまう。監禁されたジョンは、洞窟内でまもるの父と出会った。その頃、まもるは「もしかしたら父がいるかも知れない」と、土人の娘の案内で「悪魔の山」に向かっていた。悪魔の山は、深い洞窟にあるウラニウムの山に近付くと全身が黒く焼けて死んでしまう事から、悪魔の呪いだと恐れられている場所だ。元々、このウラニウムの山を発見したまもるの父は、金儲けに利用しようとする菊池の計画を危惧して、菊池に場所を秘密にした。不満を抱いた菊池は、まもるの父を洞窟に監禁して、嘘の訃報をまもるに告げていたのである。洞窟に辿り着いたまもると土人の娘は、菊池の手によって獰猛なジャガーが迫る木に縛り付けられ、身動きが取れなくなってしまった。尚ジャガーが迫る絶体絶命の二人の元へ、太鼓の音を響かせながら土人達が救出に現れた。すると、ジャガーは急に方向を変えて、逃亡する菊池の後を追った。迫るジャガーによって断崖に追い詰められた菊池は、命乞い虚しく、深い谷底へと消えて行った。まもるの父はウラニウムの山が眠る洞窟を爆破した。ウラニウムが原爆に使用されたくない強い意志があったからだ。こうして、無事に父と出会えたまもるは、土人の娘とジョンが手招く村の歓迎会の方へ足を向けた。

 

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f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200407172103j:plainインパクト大「インコが水におちたんだ!」。インコがピラニアに囲まれるの図。まもる君、誤植で「まもり」君w

 

両面で約11分。帰らぬ父を探し求めてエキゾチックな秘境の地を探検する少年の冒険編。アマゾンを舞台に、珍しい色彩のインコやピラニア、ジャガー等の珍しい生物達との遭遇、そして臨場感溢れるジャングルのSEによって徹底した異国情緒を演出しています。上述の通り、怪獣は未登場だが、珍しい動物は怪獣と同等に魅惑的な存在です。そして、土人。主観だが、普段接する機会が殆ど無い異国人を別世界の住人として捉えがちなので、本作に登場する土人は、僕にとって非現実的な存在。平等に流れる時間の中、国が異なれば、環境も異なり、言葉や習慣と云った文化も異なる。特に、アマゾンの奥地に住む原住民の生活となれば益々未知だ。本作の裏表紙の土人の描写は、明らかに異国人としての意識が強調された筆致である。未知は怖い。しかし、惹かれる。(そもそも「土人」と云う言葉自体、今や侮蔑語らしいのですが、本作では重要人物として度々登場するので容赦なく連発してます。差別的な意味や悪意はありませんので御了承下さい。) さて、本作は大量のウラニウムを「悪魔の山」とネガティブに比喩している様に、放射線を出す有害物質への危険性を訴えています。極端に表現するならば、反原爆。土人達は科学的知識の欠乏により、ウラニウムによる被曝を「悪魔の呪い」と呼び、恐怖の対象として恐れています。まもるの父は動物学者なので、アマゾンの奥地で珍獣の研究中に偶然、ウラン鉱山を発見したのだろう。そして、学士助手の裏切り行為に付随する悲劇が、人間の醜い本性を描出している。憶測だが、ウラニウムを金に変換しようと密某を巡らせた助手の菊池は、単なる金儲けの為の裏切りでは無くて、まもるの父に対して鬱積した不満や、才能への嫉妬が悪業を助長したのだと思う。特に、絶対的な殺意でまもるに銃を乱射したり、被爆の恐れがある洞窟内にまもるの父を監禁すると云った残酷性は、個人的な情念から生まれた遺恨や嫉心が要因な気がしてならない。自身の才能以上に優れた他者への嫉妬の念は、他者との距離が近い程に威力が著しく増幅する。そして菊池は、劣等感と絶望の瀬戸際で卑怯な暴力でまもるの父に勝利しようと試みたのではないだろうか。(※僕は、側近の裏切り行為にキュンとします。下剋上大好きなので此の手に対するキャラへの愛情と妄想が止まりません。)  本作は、『ミクロ人間』に劣らない洗練された効果音の構成によって臨場感の大半をSEが担っていると言い切っても過言では無い。挿絵では省略されたが、滝に落ちて気絶したまもるが夢の中で父と会話するシーンが御気に入り。秘境の冒険に心休まる間も無いまもるの深層心理が露出した瞬間で、親子の関係性、まもるの父に対する尊敬と憧憬が描出された。あとは、冒頭で魔の川と呼ばれるピラニアが生息した川に落下したインコが落下した時にジョンが発した「インコが水におちたんだ!」。インコに群がるピラニアのショッキングな挿絵に反して、まるで興味の無い空虚な声を出すジョンの温度差に独特な趣深さを感じてしまったのである。そもそも主張を要する場面なのかこれは。(爆) みんな大好き「イルカがせめてきたぞっ」のフレーズには負けるけど、僕的にはかなり好きだな、インコが水におちたんだ!。(笑)

 

f:id:zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz:20200408023754j:plain↑ アマゾン奥地の土人達。不気味な形相だが、実はまもる君達の大ピンチに現れた救世主的なヒーローなんだぞっ!