これでもくらえ

なにもかもウルトラQのせいだ

漫画『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』中沢啓次

 

中沢啓次先生による、映画『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』のコミカライズを入手・拝読致しました。月刊漫画雑誌「少年」1968年1月号別冊付録です。

 

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映画封切りの同時期に初出、表紙絵の実写と絵の愉快な融合画に負けじと裏表紙に掲載された「マルザン」の広告に心弾むA4サイズの別冊誌で34ページの読み切り。ゴジラの息子は今でこそ「ミニラ」と云う愛称で名高いが、映画を御覧の通り作中では一度も名前は呼ばれない。と云うのも「ミニラ」と云う名は、映画公開前に一般公募より選出された名称であり当時は「ゴジラの息子」又は「子どもゴジラ」、「赤ちゃんゴジラ」などと呼称されていた。(マニアの間では御馴染みの語り草で、僕はパンフレットから知識を得ました。)現に本書は前述の通りにミニラの名称は存在せず、一般公募選出前に制作された事が伺える。内容は映画に沿った展開で、作中に登場する建物やプロップは比較的忠実に描写されており、特にゾルゲル島シャーベット計画エリアの象徴とも云えるガレージハウス型の実験隊本部は映画のイメージそのものだ。しかし、漫画の中で「冷凍ゾンデ」として紹介されたプロップはどちらかと云えば「放射能ゾンデ」を投影した様に思える。又、偉容を誇る登場怪獣も映画の造形に重点を置いたのか、映画のイメージに近しい重厚な筆致で表現された。どっしりとした図体で威厳を保つパパゴジの存在感は映画に負けじと圧巻。不覚にも衝撃だったのは、怪獣の鳴き声の表現で、パパゴジは「ガオー」ミニラは「ギャギャ」クモンガは「グオーン」カマキラスは「シュルルル」と、独創性に富む描写によって言葉を交わさぬ怪獣に生命力を加味させた。いやでも本当、怪獣の鳴き声を文体化しようとすると難しい。ゴジラのガオーは良しとして、クモンガとカマキラスはどうしろと云うのだ。そりゃグオーンに成ってしまうわ。その点作中のミニラは鳴き声のバリエーションが豊富。「ふあっふぁ~(パ~パ~)」って鳴くミニラが好き。(伝われ) 見所としては、気象コントロールの再実験と同時進行で展開されるクモンガ対ゴジラ親子の激闘で、若干出現条件等ニュアンスが異なるもののクモンガの糸で身動きが取れなくなったミニラを救出すべく、パパゴジがクモンガをジャイアントスイング

 

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キンゴジのオマージュとも捉えられる映画には存在しないシーンだが、大胆なコマ割りで描かれた怒涛の名場面として評価したいワンカットであった。ラストの解釈も又映画とは異なる表現で、クモンガはパパゴジが単独の放射火炎で退治、二人で勝鬨を挙げる微笑ましいシーンもあってか温和な雰囲気で幕閉じを迎えた。映画は妙な空虚感の余韻を残すのに対して、安堵感に浸れる最期でした。全体を通して、個人的に印象深いのは、映画で真城五郎とサエコがクモンガに襲われた時、真城五郎が持参のライターでクモンガが吐いた糸を燃やして自力で難を逃れる地味な場面が、漫画ではミニラが吐いた放射能の火で溶かして二人を救出するアレンジ。ミニラの友好的な一面が好印象なワンシーンだった。あとはもう、漫画の強みを生かしたミニラの表情の愛らしさに尽きる。目を線にして笑顔を振り撒いたり、指を咥えて上目遣い。主役は何てったってミニラですから。唯一残念な点を申し上げるとするならば、主要人物以外の俳優陣の描写。(え?) 西條様が演じられた「鈴木」役が一体どの子なのか明確ならば気持ちは晴れるが、正直、一体誰がどれなんだって感じで全く見当付かず…(爆)

 

余談:此度参考に拝読した本が二冊。上述の中沢啓次先生が描いた「ゴジラの息子」が復刻収録された『ゴジラVSメカゴジラ 決戦史』、此れは「ゴジラVSメカゴジラ」封切り年の1993年に発売された復刻本で、数々のゴジラ映画の絵物語とコミカライズ他、怪獣のデザイン画から見る設定考察、特撮美術監督の井上泰幸氏による特別寄稿や写真が掲載された濃厚な一冊。コミカライズの醍醐味は、映像と漫画の絶妙な相違から得る距離感なのかも知れないなァ。で、も一冊は、月刊漫画雑誌「冒険王」1968年1月号に掲載された井上智先生が描く「ゴジラの息子」(『ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX VOL.15』の付録で、復刻本)。これは中沢啓次先生の他にも、コミカライズ化している漫画家が居るのを知って辿り着いた本で、御覧の通り表紙が狂気的。真城五郎がめちゃくそショタ臭い。65ページと大容量、ミニラの名前が公表された後に執筆されたのか、サエコの「ミニラちゃん」呼びは多少の違和感とインパクトを感じる。やはり最期は中沢啓次先生同様唯一無二の表現で、ミニラがサエコとの別れを惜しんで涙を流すと云う独特な慈悲深い世界観を魅せた。ゴジラ親子のデザインもどこかコミカルで独特。後は、カマキラスが異常発生してる描写が異質だったのと、やっぱ真城五郎がめちゃくそショタ臭(以下略)

 

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